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 頭の上半分をパカっと開く。するとうじゃうじゃと黒い虫が羽ばたいていく。よく見ますとそれは文字なので御座います。意味の無い卑猥な単語から、よく分からぬ横文字の羅列、在り来たりな定型文と、そして摩訶不思議なセンテンス。様々な虫が、頭の中でぎゅうぎゅう詰めにされており、この虫たちは、早く外へ出たいと目論んでいたわけです。たまに玉虫色の虫がいるでしょう。それは記憶の中の風景や、妄想した映像から生まれたものです。
 頭を割られた少女は、小さな手で虫を掻き集めます。
 「私が、私が飛んでいく...!! 恥ずかしいわ!今すぐ頭を蓋して下さい。」
 私は、切り取った彼女の頭を自分のアタッシュケースに押し込み、代わりに近くにあったお皿を乗せました。そしてカツラを綺麗に整えてあげれば問題無い。常にこのヘアバンドをすると良い、君に幸運を授ける御守りだよと言って、私は少女の肩を叩いた。何だかいつもと違わないかしら。ええ、お嬢さん一度頭を外された方々は皆そう言います。あら、そう。また私のところへ遊びにいらっしゃい。私はツボ押しが得意なんだ。お嬢さんは清々しいお顔で店を後にされました。
 普段は勝手に人の頭を盗むような真似は致しません。では、お嬢さんの頭の上半分、どうすると思います?これについては、私だけの秘密で御座います。

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過去作。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-27

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