サボテンと少女。

あるとき、仕事が終わる直前になって、そのときの上司はなぜか、強烈に人の昔話をせがんできた。

「サバンナという店がありました、サボテンばかり売っているヘンてこな店で。」

その子が、どうしたの?

「なくなっちゃって、葬式、いけなかったんですよね。」

いまも立ち寄ったりする?

「実家によっても、多分、あそこにはいきません。
気まぐれによっても、息が苦しくなります。」

出られなかった葬式。
あのときの、僕の行為と弁明の言葉。
友人には許してもらった。
でも自分は許せない。
自分の心を埋めたりしなかった。
だから穴はぽっかりとあいたままだ。
なぜ自分だけ、葬儀に参列できなかったのか。

彼女は、熱中症で亡くなったらしい。
その話は、今でも信じられない
活発なあの子、いつも水筒をもっていた。
僕を待っていたという話を聞いた。
親御さんも僕を責めなかった。

突然の死から、
僕はサバンナに通い詰めた。
その角を逆側、左側に曲がってずっといったところに公園があった。
横断歩道はみっつほど。
そこで倒れているのを発見された。
元々病弱だったらしい彼女、
僕はそんなことを全然しらなかった。

あの日、その後からも、ずっと、責める人は一人もいなかった。
噂さえきかない。
誰も僕を責めなかった。
大事な日の、前日、
あの日、一晩中、苦しみぬいたけど、出席できず、
あの優しい少女に花を手向ける事ができなかった。

成長するにつれ、そうときめて、何度かの試験のあと、
警察官になった自分は、
子供の姿を見るのはつらく感じる事もある
反面、かならず守るべきものだという、
人一倍の正義感を持っている自信はある。
痛みが分かる人間だからだ。

なぜか一番仲が良くて
一番気があい、
なぜかいつも一緒に遊んでいた
異性の友人。

どこか、人間離れした美しさをもった少女。

あの子が現れるといつでも、その場の空気が突然華やかになった。
話もはずんだ。

いまでも大切にしている彼女が笑っている写真。
テーブルをかこい、幼馴染、友人、皆いる、たしか、僕の誕生日のとき。
かざりつけも、かなり豪華だ。
友人たちがクラッカーも持参していた。

いつまでも、時が止まったように、写真のなかで動かない君。
おとなっぽく、かしこく、まるで大人になる事にためらいがなかった、
なぜ、そんな君のほうがなぜ……。

事故みたいなものだから、
というご両親の言葉。
運命じゃない?と笑うあの日の君。
一度に思い出し矛盾を感じる。
なぜ、運命的に仲の良い友人に出会い、失ったのか。

その回答は得られないまま。

僕は公園や、皆で遊んだ廃墟
そういうものや
サバンナに立ち寄るのが怖い、

だけど、
先輩にはああいったけど、
僕は全く逆の態度をとってる。
毎年一度は、供養がてら、心をいためつつ、
自分の記憶をおいてきた場所を、全て巡る事にしている。

幸運か不運か、誰にもわからないので
たまに、少年のときの事を思い出す、
その心の中の寂しさが今の僕の支えなのだ。

サボテンと少女。

サボテンと少女。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-25

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