あさ

仁見 雫

電車通学生だったせいで、朝は早起きが当たり前になった。学校に行くのを1分でも遅くしようと回り道をした中学校の時を今思うと、なかなかに毎日楽しかった。時間に差別はなくて、1秒遅れようものなら電車は行ってしまう。寝坊してろくに朝食も食べずに走って駅へ向かう学生よりも、何十、何百という人達を優先するのが、社会のルール。それに間違いはないと思うし、むしろ有り難く思った。
学校へ遅刻すると連絡し終えて、ふと周りを見れば自分以外誰もいない。みんな電車に乗って行ってしまったから。人が一人しかいない駅に響くのは、早朝の何どりか知れない鳴き声。あと、次に来る電車が1時間後と知って、さらに落ち込む自分だけ。
・・・静かだった。遠巻きに車が絶えず行き交う音が聞こえるけど、ここはとても静かで。不満なんてぼやくほうが失礼に思えた。あと1時間。久しぶりにできた遠回りに、すこし可笑しくなって笑ったら、後はぼんやり景色でも眺めよう。
電車がいつも通り通行して僕を置いて行ってくれたから、僕はその日、すこしだけ元気になった。

あさ

毎日大変だから、たまにはいいですよね。ゆっくりしても。

あさ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-24

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