鏡の詩

藤里 圭

統計学の詩


敗北で始まる朝
僕らの新しい夢

生まれながらに数でしかない僕らは
せめて互いを認識するために、
恋に落ちて愛を歌って、
負けたままの人生に水を与える

歩数はつじつま合わせであり、
真実は母親と手を繋いで歩く
幼いあの子の影の中

夢を見ていても
それが紫色であるうちは
僕らの汽車賃には満たない
僕らは決して満たされない

砂が落下したゆりかごに
僕らの居場所は無かったのだ

どうして僕はここにいる?

かけがえのないものを持ちながら
手持ち無沙汰は解消しない

そうして君はそこにいる?

はじめからそこにいた君は
僕と違って
どの朝にとっても正しかった
いつでも正しい存在であった

鏡の詩


青い卵を拾いました
甘い夢を見ていました

金の鶏を見つけました
熱い抱擁を描いていました

私の時計は止まっている
そのまま果実は腐り出す

水色の夜汽車は私を見ない

君の視線は銀色の砂で
私の空洞を広げていく
寒気団の下に私を晒して
上昇気流の中を生きていく

青い鳥が飛んでいた、
それは私の灰色フィルムに
収まることはない

愛情は先刻の夢
熱情は幻想の灰
同情だけがはにかんでいる

光の屈折角は私を絶対に許さない
これだけ人を思っていても
正しく伝わる世界は無かった

知らない駅で立ち尽くす
夕闇から逃げ出したまま
私は知らない街を走り去る
懐かしい看板は
私を見なかったことにする

私の全神経に光が通ったとして、
それは
認知されることのない事象だった

定時上がりの風景


言葉と和解した、夕暮れ

お前の嘘が嘘のままであればいいのに

9月に見つけたオーロラは
私のそばを駆け足で通り過ぎた

息継ぎを忘れた私は
口付けを知らないまま
死んでしまった

鏡の世界は、私を痛めつけ、
死んだ私を生かすのだ

全ての夢の裏切りは
私の退勤時間を待ち合わせ場所にする

遅刻してまで、今朝、産んだ詩は、
定刻時間の重さに耐えきれず、
先刻、生き絶えた

死んでしまう言葉たち
夜の匂いは葬いだった

言葉の死骸は、
夜の真ん中で、
白々しく光っている

鏡の詩

鏡の詩

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-24

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  1. 統計学の詩
  2. 鏡の詩
  3. 定時上がりの風景