心理証明

藤里 圭

心理証明

音楽が、旋律から叫び声に変わった日に、私は、あの人を真に愛したことを、知ったのだ

QEDが轟いて
私の道は途絶えてしまった

心が尽きるなら、
愛したと言えるのに、
私の心は飲みかけのスープほどに、
未だ、余っている、

最近の耳鳴りは悲痛で、
嘆きの音が響いている
四六時中、悩ましい、音、

このまま傾いたグラスに
身を委ねてしまえ

薄情な先駆者が置いていった
心の無い手紙を
金魚鉢に沈めてしまえ

誰も私を生かさないのなら
平熱を湯煎で溶かして
絡まったアクセサリーを
落としてしまえ

そうして出来上がった結晶に
ありふれた名前をつけて
ずっとずっと泣いて暮らそう

あの人が存在する世界の重みに
叫び声を上げながら

点と点の詩


崩落する世界に這いつくばる私の姿
這い上がりよじ登る醜い私の姿勢は
この世で生きる上で正しい形を保っていた

点描画のように乾いた土が
私の指の間から覗いている

土の感触は私を拒絶した
無能な私に有能な土は
どこまでも冷たかった

お昼休みに食べたお蕎麦の味は、
崩壊した世界の端をきちんと醜く這い上がる私を許したようであった

終わりに近付くのか、真実に近付くのか、結局到達できない地点を延々に測ろうとする私に世界はとてもあたたかい

私の胸にある教義は誤謬であり、
世間はそのことを糾弾していた

広く乾いた土地に寝転がり
カエルやバッタやコオロギが
跳ねているのを眺めていた

世界はとてもあたたかく、
土はとても冷ややかであった

ドローンの詩


口の中をシトラスミントで満たした


今朝


老いた私は、今の私が見ている幻想と、本当の記憶の境が、曖昧になって、とても、幸福なのでは、ないかと、予感した

君に背を向けていれば
私は永遠に夢を見ていられる

君の目を見れないままに
乗り込んだ車の中で


君の体温を描く

君の表情を描く


青空でキラキラ輝くプロペラ、
無機質で重く響く機械音、
反射する機体の白さ、

懺悔する私の心を救ってくれる

この世界で、
私を唯一理解してくれるのは、
無人航空機だけであった

低空飛行のまま死んでしまった私の言葉を抱きしめて、無言で地球を周回する。

何度か君を見かけて、
その度に募る思いは、
傷になってスピードを上げる

同じところをぐるぐる回り
いつか見た救いの跡をなぞって
青い文字で言葉を綴れば

君が笑ってくれる気がした

君が私の隣に居てくれるような気がした

一緒にあの無人航空機を眺めてくれるような気がした

心理証明

心理証明

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-23

Copyrighted
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  1. 心理証明
  2. 点と点の詩
  3. ドローンの詩