多重債務者の夜

柏木優成 作

いつの間にかここにいた
みんなのスタート地点の遥か後方
マイナスのかなた
前も後ろも真っ暗だ

ここまでひとりで歩いてきた
歩いても歩いても
まだまだプラスにはならないな
もうやめちゃおうかな

クレジットカード 電子マネー
キャッシュレスは進む
痛みも悲しみもレスにしてくれないか
心の傷ばっか増えちまって 破産寸前だぜ

いつからこうなった
どこでつまづいた
誰に借りをつくったんだ 何で取り立てられてんだ
人に迷惑かけないように
人と関わらないように
ずっとひとりで生きてきたはずだろう

そうか
生まれた場所や持ってるもの
はじめから足りなかったから
借りなきゃいけなかったんだ
知らず知らずのうちに
魂を差し出してまで

膨れ上がった自意識の残高
愛も喜びもマイナスだぜ
誰かに返すものなんて持ってない

夜が明ける
俺の人生は明けないな
いつか明けるかな

こんな日の出みたいに
俺の人生にも日が昇るかな
ならまだ生きてみるかな

借りたもの返して
奪われたもの取り戻して
欲しいもの手に入れて
余るくらい手に入れて
誰かにタダであげるんだ
俺みたいな誰かに

そうすりゃ笑顔になれるかな
それなら悪くないな
うん 悪くない

マイナスからのスタート
プラスになる日を目指して
遥か日が昇るときを目指して

多重債務者は進む
足りないことだらけでも 持っていないものばかりでも
他人がどうしようもなく羨ましくなっても

痛みを優しさに
悲しみを喜びに
憎しみを愛しさにして

マイナスをプラスに変えていくんだ

多重債務者の夜

どうしようもなく寂しくて、消えたくなるような夜に書きました。
人生が良くなっていくといいな、という想いをこめて。

多重債務者の夜

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2017-10-21

Copyrighted
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