あいむ は うぃっち!

あいむ は うぃっち!

自分用です。
セリフ重視で描写が少ないので分かりにくいです。

魔女になれない女の子

きらきらきら…

紫の煙に星がいっぱい詰まってる。
その煙が私の上を風に乗って通り過ぎていく。

もしかして…

「ママ!にーに!」

「一護!」

「すごいね!魔法!キラキラだね!」

そう言って抱きつくと、にーには煙の出ている杖をひゅんっと振って魔法を止めて、私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「ありがとう一護!」

優しいにーにの腕の中。
下から見上げるにーにの白い髪も、お日様でキラキラ輝いてた。

「にーに凄いなぁ…、ね!ママ!」

「なあに?」

にーにに魔法を教えていたママも、ひゅんっと魔法を止めてこっちに微笑む。

「いちごも練習したら魔法でキラキラできる?」

そう聞くと、ママの口角がグッと力んだ。

「あのね、一護…」

「???」

「一護は…」

ママが真剣な顔で私の頬を撫でた。

「一護は、魔女になれないのよ」





8年後……。

晴れ渡る空。
緑に覆われた校舎。
古い時計台。

魔法を練習する学生達。
職員室で土下座する女子生徒…。

「お願いします!!!!」

「久野…、何度頼まれても、忍科のお前が魔法科に編入することは出来ないんだよ。お前には魔女の素質がないんだから」

「私だって魔女になれます!!!なります!!!」

「根性論じゃないから…」

「いっそ兄に黒魔術で悪鬼を呼び出してもらって…」

「そんなの危険なだけでなんの意味もない!
…いいか?お前も耳タコだろうが魔法族の資質っていうのは遺伝によって決まる。
魔法使いや魔女っていうのは両親、又は片親が魔法族で、髪が白・緑・青のいずれかの色を発色した者だけがなれるんだ。
君のお兄さんの柚太郎はお母さん譲りの白髪。
それに対して君は黒髪。紛れもなくお父さんの方の遺伝だ。立派な忍者のね」

魔法科の志狼 漢太(しろうかんた)先生は懇切丁寧に一護を諭すが、そんな声は一護の都合のいい耳には聞こえない。

「わからないじゃないですか!
忍者なんてただの脳筋…、そんなものより私は魔女になって魔法が使いたいんです!
私の中にも魔女の血が流れてる!
まだ力が目覚めてないだけかも…っ」

「それはありえない」

「…っ!」

「可哀想だけど属性に関しての例外は一切確認されてないんだよ。」

「………っ」

「いいじゃないか、忍者!カッコイイぞ。
忍術だってただ体を鍛えるだけじゃ扱えない。忍者になるにも遺伝子は必要なんだ。
…それに忍術だって魔法みたいなもんじッ」

そういう志狼の頬を刃物が掠った。

「ヒッ…。クナイ…?」

「あぁ、すいません先生…、ゴキブリが壁を這っていたので…。
あ、ところで今忍術と魔法、いっしょくたにしました…??」

「して…ません」

「ですよね、その昔天皇陛下が神様から授かったと言われる魔術とその魔術を人間風情が猿真似して編み出した忍術を、名誉ある神護(かみさね)学院魔法科魔法獣師学部講師である志狼漢太大先生が一緒くたにするわけないですよねぇ」

一護のあまりの気迫に志狼は激しく首を縦に降るしかなかった。

キーンコーンカーンコーン

「チッ、授業が始まる…。先生また明日」

そう言って一護は職員室の窓から飛び出し、屋根づたいに忍科の方に消えた。

「もう…、いいじゃん忍者で…」

「志狼先生」

「ああ、屍音先生、おはようございます」

窓の前に立つ志狼に華国風の式服を着た女性が声をかけた。
彼女は屍音 操(かばね そう)。志狼と同じ魔法科の教師だ。

「今日も来たんですか?久野さん。入学してから一年以上、毎日欠かさず頭を下げに来るなんて…、どうしてそんなに魔女になりたいのかしら」

「さあ…、多分理屈じゃないんですよ、憧れっていうのは」



がささっ ざっ
キィーンと金属同士の当たる音がして草陰からふたりの人間が飛び出した。
もみ合いながら戦闘訓練を行うのは一護とその同級生黒帯 菖(くろおびあやめ)だ。

「ねえ、一護はさ、なんで魔女になりたいの?」

菖は交戦したまま息も切らさずに質問を投げかけた。
一護も普段と変わらない様子で答える。

「なんでって…、改めて聞かれると…こう、明言しにくいけど…。
やっぱ子供の頃からママと兄ちゃんが家で魔法を使ってるのを見てて、自分も当然魔女になれると思ってたから…、あと魔女なら空飛べるし」

「空?ああ…。でも忍者でも大跳躍とかならできるじゃん、あと風遁の術をうまく使えば数分くらいなら浮いてられるし。
それに魔女だって一人前になって資格取るまでは箒にまたがってじゃないと飛べないんでしょ?」

「なんか忍術って紛い物っぽいじゃん?
ずっとは飛んでられないし、方向転換も難しいし。
その点魔女なら資格さえとっちゃえば自由自在に空が飛べるんだよ?そんなの、憧れずにはいられないよ」

「ふーん」

菖は興味なさげに返事をした。

「あんたねえ、聞いといてそれはないでしょ」

「土遁!土塊!」

「出た」

と、突然地面がモコモコっと浮き上がり、その土が崩れたかと思うと、中から少年がくない片手に襲いかかってきた。同級生の奈落 鬼助(ならくきすけ)だ。
ふたりはそれを上手く受け流す。

「異議あり!」

「なんだよオニスケ」
「自分の班に戻りなオニスケ」

「キースーケっ!
魔法ってさ、周りの自然エネルギーを"交渉"して"借りる"って感じなんだろ?
だったら忍術の方がこっちからの一方的干渉な分確実じゃん!」

「はぁ…!?そこがいいんでしょ!!
八百万の神との対話により生まれる力、忍術みたいに戦闘の力じゃなく、守護のための力……。
素敵すぎる!!
それに………、なにより魔法科は制服が可愛い!!
忍科なんかセーラーもどきの下に鎖帷子だよ!?鉄臭い!重い!可愛くない!!
やっぱり魔法科に入らなきゃ…!」

「だからって毎日お兄さんの教室いって杖の強奪するのやめなよ…」

「やだ!あれ持つと魔女の気分になれる!」

「虚しくないの…?」

「やめろぉ!そういうこと言うの!」

「俺はいーと思うぞ、鎖帷子」

鬼助のスケベな目線は見逃してもらえなかった。

「…忍法、土遁・土塊」

「わっわっわっ!?」

一護がそう唱えると鬼助の立っていた土がどどどっと音を立てて崩れ、後には半身の埋まった鬼助だけが残った。

「畜生…才能(たから)の持ち腐れだ…」

「ジーザス…」



放課後…


「柚太郎!今日の魔法科学でちょっとわかんねーとこがあるんだけど、教えて!」

「うん?いーよ」

一護の兄の柚太郎は幼い頃のまま穏やかに優しく育っていた。

「どれどれ…」

スっ………ンッ

「おっ」

柚太郎が杖を片手にいっぽ進んださ瞬間、さっきまで手の中にあった杖が頭上にさらわれて行った。

「あ、いちご…、お疲れ様、中等部はもうホームルーム終わったの?」

「出た、柚太郎の妹」

「悪い顔だ…」

「我が兄よ…、もっと慌ててくれ…」

一護は天井に逆さまにたった状態からストンと床に降りると、不服そうな目付きで柚太郎を見た。

「一護、ごめんね、今から杖使うから返してくれる?」

「兄ちゃん…、悪いけど、この子はあと1時間は私に可愛がられる運命(さだめ)よっ!」

そう言って変態のようにハアハアと舌なめずりしながらいちごは走り出した。

「あ、待って一護」

「いやだいっ!これで魔女ごっこするんだい!」

「アホの子だ!」

「残念だ!」

「一護。そうじゃなくて、前…」

「前?」

前を見るとそこには魔法科初等部の団体がっっ!

「でえっ!やば!に、忍法!」

一護は急いで忍術の構えをとった。
初等部は突っ込んでくる一護に半泣きだ!

「風遁・盾竜旋!!」

「かぜっ!?とんだっ」

「やた!って、がっ!!!」

一護は真下に渦巻く風の盾を起こし、初等部を回避!しかしバランスを崩し小等部の後ろの壁に顔面から突っ込んだ!

「いたた…」

「だいじょうぶ?」

初等部の少年のひとりが声をかけてくれた。

「うん、ありがとう、ごめんね。あ、箒」

「え…」

「もしかして今日飛行訓練だったの?」

「うん…」

「すごいなぁっ!いーなあ!」

「凄くないよ…」

「え?」

「僕、飛べないから…」

小さな拳がぎゅっと箒の柄を握る。

「みんな飛べるようになってもう1ヶ月も経つのに、僕だけ浮くことも出来ないの。
だからさっき風で飛んだお姉ちゃんの方がすごいよ」

「…きみ、名前は?」

「…………羽山 明日翔(はやまあすか)」

「あすかくん、ね。私一護!ねえあすかくん!私と一緒に空飛ぶ特訓しよう!」



遠くで手を振りながら走っていく明日翔を見送る一護の隣で柚太郎がため息をついた。

「…一護」

「うっ…言いたいことは分かってるよお。でも同じような悩みを持つものとしては放っておけないと言うか…。
それに魔法使いの子と特訓したら私もなにか掴めるかもしれないし」

「一護って案外打算的だよね」

柚太郎が微笑んだ。

「うるさいなあ」

「でも…どうやって特訓するつもり?
一護、空の飛び方わかないでしょ?」

「うっ」



次の日の放課後。

「いちごちゃん!」

「おー!明日翔くん!おまたせ!いこっか!」

「うん!」

(兄ちゃんから何となくのコツは聞いたし、あとはやれるだけやってみよう)



学校前から移動したふたりは三十分ほどして雑木林の中の少し開けた川岸にたどり着いた。

「この辺でいーかな。まずは明日翔くんの今までのやり方をやってみてくれる?」

「わかった!」

そういうと明日翔は箒にまたがってん〜っと気張り始めた。

「飛べ!飛べ!飛べ!」

しかし明日翔の体は少しも浮かばない。

「やっぱダメだ…」

「明日翔くん、…もしかしたら、飛べ、じゃダメなんじゃないかな」

「へ?」

「兄ちゃんが昔言ってたんだけどね?魔法って元々は神様がくれた力なの。神様が人間と自然が仲良しになる為にくれた力なんだって。
だから飛べって命令するんじゃなくて、空気さんや、風さんや、箒に使われてる木さんに、"お願い"してみるの」

そういうと、明日翔はぐっと顔に力を入れた。

「わかった!やってみる!」

すうっと息を吸って小さく吐く。
目を閉じる。集中する…。
ふっと空気の流れが変わった気がした。

(忍法、源流視!)

源流視とは空間や体内のエネルギーの流れを可視できるようになる忍術。
体内の気を目に集中させることで作用するが、調節が難しくバランスを間違えると発動しなかったり逆に目が破裂したりするので難易度が高い。

(エネルギーの流れがさっきと全然違う。
漂っていただけだった空気が明日翔くんに集まっていく。それに、明日翔くんの中の気が箒に流れ込んでる!
そうか、体全体に魔法の気を行き渡らせるより箒に流し込む方が簡単だしリスクが少ないのか)

(綺麗な青い気…。明日翔くんの髪と同じ色…。それに比べて私は…)

一護は川に自分の顔を映し見た。
そこには黒々とした気を全身からから目の周りにまとわりつかせる自分が映っていた。

(これが忍の気…)

「あ!うっ浮いた!」

ハッと顔を上げるとそこには僅か10センチほどだが確かに空に浮かんだ明日翔君がいた。

「やった!いちごちゃん!やっっ…あっ!」

ずどんっ!

「いたた…。まだ集中してなきゃすぐ落ちちゃうや」

「でも飛べた」

「え?」

「でも、明日翔くんは確かに飛んだよ。明日翔くんは間違いなく魔法使いだ」

「いちごちゃん?」

明日翔の目には一瞬、一護の顔がとても冷たく見えたが、瞬きをした後そこに居たのは、優しく微笑む一護だった。

「…ありがとうっ、いちごちゃん!今まで全然飛べなかったのに、いちごちゃんのアドバイスで少しだけどもう飛べるようになった…。
僕上手に飛べるようになったらいちごちゃんを後ろに乗せてあげるね!」

「うん!じゃあはやくもっとしっかり飛べるようになってもらわないと!さ、特訓再開だ!」

「うん…っ」

と、その時。

ピーンポーンパーンポーン
"魔法科初等部2年、羽山明日翔、在校している場合至急魔法科職員室に来るように。繰り返す。魔法科初等部…"

「なんだろ…。ごめんいちごちゃん!行ってくるね、特訓はまた明日!」

「わかった…、気をつけてね!」

「うん!」

明日翔は急いで魔法科校舎の方にかけて行った。

「放課後に呼び出しの放送なんてよっぽど急ぎだよね…。何があったんだろ」



次の日の放課後。

(明日翔くん遅いなあ)

「あれ?一護?」

「こんなとこで何やってんだ?」

「菖とオニスケ…」

「キスケだっつの」

「もしかして昨日言ってた特訓?」

「そうなんだけど…、肝心の本人が来なくて」

「しごきすぎたんじゃねーの」

スっと一護が構えると、鬼助は流れるように土下座をした。

「そろそろ来ないと帰りが遅くなっちゃうな…」

そう言って時計台を見上げた時だった。

「大変だーー!!」

「高等部以上の魔法科の生徒!手を貸してくれ!」

「魔法陣と結界!急げ!」

「なんだ!?」

魔法科の校舎から何人かの人がかけてきた。
あまりの慌てように、周りの空気は一気に張り詰めた。


菖が飛び出してきたうちの一人を捕まえた。

「落ち着いて…。何があったの?」

「初等部のガキが時計台に!
そいつそこから飛ぶつもりらしいんだ!
でも情報によるとそいつまだ自分で飛べたことないらしくて…。
助けたいが魔力が暴走してて近づけない!」

「そんなっ!このままじゃその子確実に落ちるじゃん!」

「ああ…!だから落下してきたところを魔法で受け止めるしかないが…、それも上手くいくか…」

「飛べない子供…、ってもしかして、ねぇ、一護!」

「あれ、一護は!?」

菖が後ろを向くと、そこには誰もいなかった。

一護はとっくの昔に駆け出していた。

(まさか、まさか、ちがうよね、でも…っ)

嫌な予感がする。一護は大跳躍を使って時計台の窓から途中の階段に飛び込んだ。

バッ!

既に壊れていた最上階のドアから飛び出すと、時計台の極に明日翔が立っていた。
その目には光がなく、張り詰めた顔をしている。
体の周りに青い魔法をバチバチと雷のように纏っている。

(源流視しなくても魔力が可視出来るなんて…!)

「明日翔くん!」

「いちごちゃん…?」

「明日翔くん落ち着いて!なにがあったの!?」

そう問うと、明日翔はさらに眉間をぐっと寄せた。

「お父さんが…、事故にあったんだ」

「え…」

「昨日病院に行った時は、起きてはいなかったけどまだ生きてたんだ。
けど、さっき、死んじゃったって電話が来た」

バチバチっ
バチバチっ

「車がぶつかったって。でもその犯人は逃げたって。まだ見つかってないって。お母さん、泣いてた。だから…、僕が、殺しにいくんだ!」

バチバチバチバチバチっ!
魔力に風圧が加わり、明日翔の周りに竜巻のように絡みつく。

(明日翔の感情にエネルギー達が引きずられてるんだ…、まずい、なんとか明日翔の気を鎮めないと)

「明日翔くん!お父さんは絶対そんなことしてほしくないよ!」

「そんなのわからないだろ!お父さんはきっと苦しかった!痛かった!僕達を置いてくのが悲しかった!それにお父さんがいやでも、僕がしたいんだ!」

「明日翔くん…っ」

興奮状態の明日翔には何を言っても届かない。
それは毎朝魔法科の職員室で半泣きの志狼に土下座している一護ならよく知っている。
自分の都合の悪いことは聞きたくない。
意志を貫きたい。
現状にどうしても納得出来ない。

分かるからこそ、明日翔を否定する言葉がかけられない。

その時打つ手なしのいちごの後ろから鬼助が現れ叫んだ。

「一護!目をつむれ!」

その声に一護は咄嗟に目を瞑った。

『光よ!汝彼の者の為に輝かん!
光彩陸離(こうさいりくり)!」

下で複数の魔法使いの詠唱が響き、その杖の先から光線が時計台に向かって飛び出した。

バシュゥッ!

「花火!?」

ぱあああんっ

すると次の瞬間、明日翔の後ろで光線が収束し、閃光弾のように光が弾けた。

「ぅわっ!」

明日翔がくらっと蹌踉めく。

「明日翔くん!」

明日翔はあまりの光に意識を失った。
足がぐらりと傾き、バランスを崩してゆっくりと滑り落ちていく。

薄目を開けた一護の視界に落ちていく明日翔が見えた。
一護は無我夢中でかけだした。

届け、届け、届け!

その小さな手、あとわずかの所で、指を、


すり抜ける。

「まだだっ!」

そう思った頃には一護の体は宙に飛び出していた。

「一護!!!」

空中で抱き寄せた小さな体。
まだ小さくチリチリと魔法を放って、一護の頬を焼く。

(明日翔くんっ)

(絶対助ける!!)

「うおおおおおおおおおおお!!!!!」

(飛べ、飛べ、お願い、飛んでっ!)

(私の中にいるなら、どうかお願い!この子を!)

(助けたい!!!!)

バチっ

「いけえええええええええっ!」


「そっち、もっと円を広げて!!…っ!?」

「なに!?」

「白い…光!?」

「一護…!!?」


ぎゅっと瞑っていた目を開いたいちごの眼前には、広大な森と、その向こうに微かに見える海が広がっていた。
その光景は白い光の中に、微かに、見えた。

(この光は…)

(私…?)

バサバサとはためく髪が視界に入る。
その色は見慣れた漆黒ではなく、輝く純白の髪だった。

「んっ…いちご、ちゃん…?」

「明日翔くん…」

「僕…」

「明日翔くん…」

一護は、目を覚ました明日翔になんと言っていいかわからず唇をかんだ。
明日翔の重みとは比べ物にはならないけど、その根源に宿る感情と同じものを一護も抱えている。
この感情を否定することは、広い目で見れば自分の言動を否定することにもなるのだ。

それでも…。

「明日翔くん、とっても辛かったね。悲しかったね。明日翔くんのお父さんも、お母さんも…。でもね、明日翔くんが誰かを殺したりしたら、きっとみんなもっともっと辛くなる…。お父さんをこれ以上悲しませないであげて?
ゆっくり…、眠らせてあげようね…」

「うん…っ」

「うんっ、うん……っ、うっ、うぇっ、
お父さんっ…お父さんっ、おとお、さんっ…」

泣きじゃくる明日翔を抱きながら、ゆっくり降下していたイチゴは、ふと自分の毛先が目に付いた。

「あれ、黒に戻ってく!?」

それと同時に自分の落下速度がどんどん加速していることに気づいた。

「え、え、え、嘘でしょ。やばいやばいやばいやばい!

その様子に遠くから駆け寄ってきていた菖や柚太郎立ちも気がついた。

「あらら、落ち始めてる…」

「えっ、そんな落ち着いた感じで…!?」

「慌てたってとまらないんだから、とにかく走りなさい」



「どうしようっ、風遁系の技はこの落下速度じゃ逆に危ないし…、水場もないから水遁も使えないっ」

考えろ考えろ考えろっ、、、

その時腕の中で明日翔が大きく右手を振り上げた。
その手にはまだ小さな杖が握られていた。
そして鼻声で呪文を唱え始めた。

「ひっくっ、木々よ、花々よっ」

「明日翔くん!?」

「汝、深く生い茂り…!っ我らを受け入れたまわん!

郁郁、青青(いくいくせいせい)!!」

その途端、落下先に生えていた木の枝がグネグネと伸び始め、籠を作り、蔓でクッションを作り、そして………

どさあああっ!

「わああっ!」

落下の直前にぶわああっと花が咲き乱れ一護と明日翔を優しく受け止めてくれた。

「明日翔くんすごいよ!すごい!」

「えへへ、ぐすっ、僕まだ空は上手に飛べないけど、ぐすっ、草木を操作する魔法は得意なんだ…」

明日翔はそう言って涙目ではにかんだ。



「「一護!」」

ガサガサっと音がした方を見ると、見知った顔が並んでいた。

「兄ちゃんたち…」

「さっきのは…、一護、だったんだよね?」

「そうみたい…」

「髪が白かった気がするんだけど…」

「うん…。あの時、必死に頭の中で飛びたいって思ってて…目を開けたらああなってた。
すぐ戻っちゃったけど…。
ねえ、私、魔女になれたってことかな!?」

「でも今は黒く戻ってしまってるし…、なんとも言えないな」

「一護!なんか魔法!なんでもいいから!
そうだ!さっきみたいに空飛んでみろよ!」

「そんなこと言われても、え、と、私!空を、飛びたいっっ!!」


しーーーん

「ちちんぷいぷい〜、私よ、とべ!」




「なんだ、まぐれか」

ガンっ

「一万年に一度の奇跡とかだったのかもね」

ガンっ

「でもでもっ!魔法が使えたのは間違いない!志狼先生!私を魔法科に入れてください!」

「いやぁ…、ちょっと判断しかねる…」

「え、なっなん((「大体お前が余計なことをしなくても下にいた魔法使いたちの緩衝魔法で気絶して落ちてきた落ちてきた羽山を受け止める算段だったんだ。つまり、お前の行動は危険なだけでなんの意味もなかったってことだ」

「まあまあ、志狼せんせ」

「そんなぁあ〜」

「というのは教師としての建前で。
一個人としては、お前の行動は正直かっけーって思ったよ。怖かったろ。よくがんばったな」

「しぇ、しぇんしぇえっ!ぐすっ」

志狼の肉球が頭に優しく触れて、おいてけぼりになっていたいろんな感情が涙と鼻水になって溢れだした。

「うわ、汚ねー泣き顔っ!」

「うるさいオニスケ!!」

みんな笑って、腕の中で明日翔も笑った。

「ふふ、いちごちゃん、ありがとう!」

それを聞いて、一護の心は何だかあったかくなって、その笑顔のためなら、魔法だとかなんだとかそんなことどうでもいいように思えた。

あの時のあれが何だったのか分からない…。
でも、私の力が誰かを助けられたなら、それは凄く素敵なことだなって。
それが魔法でもそうじゃなくても。

そんな訳で、私が魔女になれるのはまだまだ遠い未来のようです。

でも、やっぱり…。


「ああ〜〜〜!魔女に、なりたーーーい!!」

あいむ は うぃっち!

ありがとうございました。

あいむ は うぃっち!

マンガのプロット

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-06

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted