偽装される春
あなたを知ると木枯らしを覚える
その昔、あなたは春の季語でした
いつからか、冷たく枯れて、絶望を知らせて、思わせぶりな死を漂わせ、
罪と罰と地獄に受難…
そんな言葉の枕言葉になっていた
かつて、あなたは私の日和で安寧で、故郷で愛で恋でした。
どうして今は絶望なのだろう
閑話に何があったというのであろうか
私は、知らない
本筋以外知るはずない
「閑話休題」とあなたが呟いてからの記憶しかなかった。
そのとき既に辺りは荒地で吹雪で大雨でした
あなたを問い詰める間も無く
私の身体は朽ちていった
点滴の音で目を覚ましてからは
春の季語からあなたは消えていた
私の瞼の裏にある
あなたの笑顔は春の季語
今のあなたに苛まれる時、
何より1番鮮やかに
あなたの笑顔が浮かんで来る
あなたの笑顔が浮かぶから、私は今のあなたに打ち砕かれることを望んでしまう
戻らない春の記憶だけ
絶望の中で寄せ集めて
私は春を偽装する
真冬の世界で偽装する
偽装される春