偽装される春


あなたを知ると木枯らしを覚える

その昔、あなたは春の季語でした

いつからか、冷たく枯れて、絶望を知らせて、思わせぶりな死を漂わせ、

罪と罰と地獄に受難…

そんな言葉の枕言葉になっていた

かつて、あなたは私の日和で安寧で、故郷で愛で恋でした。

どうして今は絶望なのだろう

閑話に何があったというのであろうか

私は、知らない

本筋以外知るはずない

「閑話休題」とあなたが呟いてからの記憶しかなかった。

そのとき既に辺りは荒地で吹雪で大雨でした

あなたを問い詰める間も無く
私の身体は朽ちていった

点滴の音で目を覚ましてからは
春の季語からあなたは消えていた

私の瞼の裏にある
あなたの笑顔は春の季語

今のあなたに苛まれる時、
何より1番鮮やかに
あなたの笑顔が浮かんで来る

あなたの笑顔が浮かぶから、私は今のあなたに打ち砕かれることを望んでしまう

戻らない春の記憶だけ
絶望の中で寄せ集めて

私は春を偽装する
真冬の世界で偽装する

偽装される春

偽装される春

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-10-05

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