声帯のうた
声帯のうた
声の居場所はいつもとられる
私の声は残らなかった
私の思いも私の意見も周波数も
不特定多数の存在に感蹴散らされる
私の存在は何にも貢献できない
私の声は幽霊になっている
それを知らずに私は声を発していた
不特定な声は私をすくい上げない
溺れていく私の声を誰も必要としない
声帯の魂が無念のままに死んでいく
私は何度も死んでいく
空からピアノが落ちて来る
受け止めきれずに
私は、潰される
私の、弱い声は潰される
誰にも気付かれることなく
私の声帯の死と
私の声の幽霊は
存在の重みで負けている
落ちてきたピアノに負けている
批評の夜
そうじゃない
、という私の絶叫に
世界は白い目と無関心を返した
解読されること分解されること
解説されること解釈されること
皮膚を晒してコンクリート
、に叩きつけられるような
全てを理解した気になっている
この世で1番大きな声
、をうっかり聞いてしまった日には、
精神を、神経を、内臓を、魂を、
凌辱されるような気持ちになり、
地面が割れて最下層まで落下する
因数分解に消された私の願い
解説書に潰された私の無垢
答え合わせは公開処刑だ
作者の気持ちを答案用紙に書くことと八百長は何が違うというのだろうか
読者の気持ちは黙殺される
筆者と読者は分断される
ディスコミュニケーションが
地殻の下を流れている
糾弾Ⅱ
錠剤に溶ける
取るに足らない私の感情
溶かしたく無いのは優しさ
正しさという暴力に
微笑することしかできない私は
弱いでしょうか?
弱くても、「私は」いいのですが。
消えたいのは私の方です。
私を消したいというお前の感情は
(間違っている)
…
消えたいとは、
私も常々思ってますが、
そういうわけにもいかんのです。
ねぇ、お前、わかるでしょう?
大人なのだから、わかるでしょう?
息苦しい。
なぁ。
はぁ。
どうして、うまく、生きてけない?
私。
微笑して、
明るく振舞って、
社会人ごっこばかりうまくなり、
内側の私は血まみれだ。
内側の私は毎日何度も死に絶える
内側の私の死の回数は
数えることすら厭になる。
本音で生きてる人間が
私を何度も殺しに来る。
(無意識に)
(無意識に殺すのだ)
…
私はその度に
逃げることは
出来なかった
私が、
詩を書くのは、
最後の本音主義への自己防衛、
最後の厭世主義としての自己主張
最後の感傷主義者としての自己愛
取るに足らない感情に
自分で垂らす
蜘蛛の糸
地獄の思いで生きるしか
センチメンタリストには道がない
メンタルヘルスの夜空
否定された感情が泣き喚くのを尻目に
私は夕飯の支度をする
きちんと食べなければいけないと、
私の表層が騒いでいるので敵わない
私の、ストレスは、
まな板の上で、眠っている
私は、1日に、たくさんの、感情を、
否定されるので、
その度に、浮かべる、自分の、微笑、で、自分の、魂の急所を、切りつけて、いるような、気持ちになる、
精神なんて上澄みみたいなもの
人の核は魂だけだ
換気扇の紐に賢人がぶら下がる
包丁で指を切った
ストレスは跳ね起き、
油の上で、笑い転げる
裸子植物のような形をしている、
私の核は、
思い出したように、
含羞を、シンクへ、流す、
ストレスと魂は出会ってしまう
毎日のこと
それは、
化学反応でもいいし、
受精でもいい、
「そういうことが詩を生むようです。」
「否定された感情は詩なんです。」
絆創膏を探しながら、滲む涙を、笑う存在は、もういなかった
声帯のうた