ENDLESS MYTH第4話ー2
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濡れた赤毛が男の手に絡みついた。
吐息は興奮を抑えられず、赤い茂みの蜜が流れ落ちる壺へと舌を愛撫させる。
少し衰えはしているが実に美しく、男の肉体に吸い付く肉感的な身体は、男の舌先が自らの中に入る度に悲鳴に近い喘ぎを漏らす。
それに更に興奮する男の舌先は、赤い密林をゆっくりと遡り、下腹部、ヘソ、脇腹と這い上がり、女の身体をビクッ、ビクッとさせながら、乳房へとむかい、少し色が濃くなった、娘達を育てた乳輪と乳首にたどり着いた。
まるで赤子のようにすすりつく男を、愛おしい顔で見つけ見下ろし、赤毛の短髪を撫で回した。
若い男は棍棒のように濡れ光る男性自身を女の小高い丘のような乳房へこすりつける。
それを女は躊躇なく食らう。
すると今度は男が唸るようにのけぞる。
女の分厚い唇は上下に上げしく動き、粘液の糸が垂れていた。
男はもはや我慢の限界であった。
女の口から自らを抜き取ると、きゃしゃな肩を押し倒し、女の柔らかい世界へ強引に自身を押し込んだ。
背中をのけぞらせ歓喜の笑みで叫ぶ女は、理性など持ち合わせてなく、逆に下腹部に衝撃を受けながら、男を倒し返すと、自らの腰を上下させる。
汗が赤毛の先からほとばしり、顔の宝石が汗で輝いていた。
男は女の胸と同じくらい柔らかい尻を両手で抱え込み、更に奥へと進みゆく。
2人の肉体が絶頂を迎えるのに、そう長くはかからなかった。
身体を洗い流しナーガのような衣服に着替えた女は、身だしなみのメイクを怠らず、貴金属を身体中に身にまとうと、身支度を整えた若い男を寝室から促すように出すと、真っ赤な石の床が広がる部屋へ出ると、軽く唇にキスをした。
「次も楽しみにしてるわ」
そういうと部屋を追い出すように、男を巨大なクリスタルの扉の外へ誘導した。
物悲しげな若い男はしかし、すぐさま代わりに部屋へ入る女性を見るや、身体を強ばらせて逃げるように退出していった。
顔立ちが整った女性は入るなり室内が雄の匂いに満ちていることに気づき、明白な怪訝を宝石に彩られた顔に塗りつけた。
「あら、珍しいわね、屋敷に顔を出すなんて」
洗ったばかりの髪の毛を撫で、王妃ン・ベートは娘に皮肉っぽく言った。
ン・メハは雄の残り香が未だにある部屋へ入るのを一瞬ためらったものの、母親の背中に怒りを覚え、その力で脚を前へ出し、クリスタルの扉がピシャリと自動で閉じた。
「あの若者は誰です」
そう質問するのは何度目だっただろうか、とメハはし自分で心に問いかけた。
「彼、素敵でしょ? 軍隊の式典で見かけてね。まだ入隊して間もないのにもう前線へ送られるんですって。だから今日は激しくて。何度も喜んじゃった」
と、メハよりも胸が大きく開いた衣服の間に手を這わせた。
彼女は自らの母親でありながら、恩納を見せるその態度が気に食わなかった。
しかも軍省の式典が行われたのはほんの数日前のことだ。そこで男を物色するなど、娘としても執政官としても、憤慨である。
「お母様は巷でなんと噂されているよかお分かりなのですか?」
怒りの表情の娘である。
「そこまで世間知らずじゃないわ。男狂いの王妃でしょ? 貴女の父親だって知ってることじゃない」
完全に王妃は開き直っていた。
これも父が母を放ったらかしにしているのが原因なのは娘にも分かっていた。だから娘には、どうすることもできないのはわかっていた。
それでも言わずにはいられない。
「王妃の自覚を持ってください。貴女は30兆人の国民を背負う国王の妃なのですよ。そのような行動を続けては、国民が王家へ不信をいだきます」
すると紫色のアルコールが、光輪の中に置いた細いクリスタルのグラスに湧くと、それを片手に高笑いを浮かべた。
何を馬鹿なと言いたげてある。
いつもこうである。母親は彼女の言葉を一切聞き入れない。国王は彼女に母を託しているが、彼女もまた、頭を抱えるだけだった。
紫色の美酒をまるで媚薬のように飲むと、グラスをメハの方へ傾けた。
「貴女も男を知るべきね。心の隙間は男とお酒よ、執政官さん」
馬鹿にされたような気分にされ、憤慨が頂点に達したメハは、室内から出た。
そして世話ロボットがうろつくクリスタルの屋敷を通り、外で待つクリスタルの球体へ乗り込み、それは自動でクリスタルの道を高速で走行していった。
車内でしかし執政官は反省したらしく、頭に手を当てて、悔いた表情をした。
母親が男に狂った原因を彼女も十分に理解していたからだ。
幼少期、彼女は父親に遊んでもらった記憶はなく、それどころか食事を一緒に食べた記憶すらなかった。国王は常に国民の象徴でなければならない、という信念の父親は、家庭などを顧みる時間なく仕事に励んでいた。
彼女も反発した時期もあったがしかし父親がいかに多くの国民の生命をその肩に背負っているかしっているからこそ、理解も示せた。
しかしだ。彼女はそうした父が仕事一筋というわけでないことをある時に目撃してしまった。
父は秘書の1人と肉体関係にある。あのクリスタルの象徴のタワーの中で、男として自らの妻ではない女をその腕に抱き、腰を動かし、身体を重ねている。
それを王妃たる母も知っている。だから男に溺れている。
クリスタルの街並みを見ながら、自動で移動する球体移動車の中で、呪われた一族の一員である自分を奥歯で嫌悪をかみしめる思いで、認めたくないと感じていた。
球体が高速で行き交う巨大環状線を抜け、彼女は再び、父の居る星間国家の象徴たるクリスタルタワーへと戻っていった。
その眼には国王が妻以外の女を抱いている事など知らない、多くの国民の姿が映っていた。
ENDLESS MYTH第4話ー3へ続く
ENDLESS MYTH第4話ー2