無題
新しさを見いだせない日々にも
変わらず苦しみはやって来る
変わらず悲しさはやって来る
出口を失った感情たちが体を駆け巡っては暴れるようで
出してあげなきゃいけないのにあてがってくれる理由がない
※
滲むように悲しみがどうも
吹きこぼれてしまうから
溶け崩れないように
心の中に言葉を探すの
※
音を聞く
光と影の様子を見る
どこにもない
あてがってくれる言葉がない
悲しみがただ行き場を失い
とめどなく滲んで流れて
僕をひたすら溶かしてゆく
※
呆けたように笑うみたいにただ悲しみが突っ立っている
少し首を傾げてる ただ悲しみがこちらを見ている
夕焼けを背にしてこちらを見ている
夕焼け、きれいだねって教えてあげたら
悲しみは
ちっとも夕焼けなんか見ないで
変わらずずっとこちらを見ながら
そうだねって呟いた
※
きっとこの悲しみは
何かを失い続けていたから
何を失っているのか自分でも分からぬうちに
でも失ってしまったのでもう悲しくないのです
だからこそとても悲しいのです
※
猫じゃならしが揺れている
道端に揺れている
花瓶に射してあげるね
何もなくなってしまって ただ
道端に猫じゃらし
くきりと一本折り取って
くるくる指先で回しながら
忘れてしまってふらふらとただの
歩きタバコの日々に
猫じゃらしはくるくるしてたら
ひょいときれいに風がさらっていってしまった
※
摑めない その風景を
思い出せば青空
花で埋め尽くされればいいのに
遠くに見える船と雲
もう僕には何もない
焼土など
花で埋め尽くされればいいのに
※
心がきれいに包まれたから
丁度よさが霧に隠れて
大事な何かを忘れた気がする
まどろんで夜空を見れば
湿度で濁った星たちは
何事もなかったようにまたたいている
明日の人の苦しさも安心も
後ろ側に隠されて
早く寝なさいってほほ笑んだ
無題
なんやかんやでどうでもよくなってちくちくした外気に触れないように心にラップぐるぐる巻きできるようになった、それは感性を失う事にも近いけれども、なのに心は勝手に悲しんだりして大変だナァ、って感じの詩