水槽の詩
水槽の詩
無闇矢鱈に沈む理由?
違いますよ?
沈んでいくのです
水槽の底にいるんです
必要の無い言葉に
誘われるんですよ
遠足に行くぐらいの軽さで
私を沈めて沈めて吐かせるんです
憂さ晴らしのようなものです
私は千切れたり
私は飛ばされたり
私は知らないところにいたり
落ちたり、飛んだり、溺れたり
時には命を捧げたり、
散々ですよ、
厭ではないのですが、
言葉も言葉で口惜しいと思うんです
行き場が無ければ虚しいでしょ?
自分だけの問題ではありませんからね
冷たい糸
白い糸が私の身体を通る
痛みに似た悲しみで出来た糸だった
糸を手繰り寄せて目を瞑る
糸の先に私がいて、
それは姿形が多様であった
私は何人にもなり1人でもあった
糸を手繰り寄せて泣いてみる
世界が続くことを泣いてみる
糸は冷たくなっていく
海王星の詩
嘘みたいな君と
嘘ばかりの僕は
海王星の真ん中で
雲の流れを追って浮かんでいた
何処にもいく必要がない時間を
ぼんやりと過ごしていた
僕は怪我が多かった
どうしてかはわからないけれど
いつもどこか怪我をしていた
表面を滑る風はたまに嘘みたいな早さで君を連れ去る時もある
僕は風にひっくり返されて
背中から何かを奪われることがある
望遠鏡で僕らを見ている人もいる
僕らのことは見えないようだけれど
大きな大きなこの星のことは
やっと認識できたようだ
僕らはただ、
何処にもいく必要がない時間を、
ここでただただ過ごしていた
水色の空間科学
身体中の疲労が
放出される
微熱として
ビオトープに還る前に
カレンダーに印をつける
全ての人工物の皮肉を被り
それは受難として誰かが記す
足首まで浸かった水は
冷たくて懐かしかった
水色の空を眺めて
ラウンドスケープの最期に羊を放つ
点滴が落ちるスピードで
私の体は沈んでいった
水槽の詩