昨日、君にサヨナラを。《1》
はじめまして。
森咲 茗と申します。
突然ですが
皆様は、どんな時に本を読みますか?
本を読む時のワクワク感や、
頁を彩る文字たちの煌めき。
頭に浮かぶ情景や、
思いもしない展開にそわそわと胸を打つ。
皆様にとって、この作品が
そんな物語になってくれますように。
つたない、未熟な文章ですが
よろしくお願いします。
‐唯花‐
「――あっ―――」
足が滑って、踏み場が消えた。
茜色の夕暮れが真上に見える。
怖いくらい綺麗な夕焼けが映って
反射的に手を伸ばした。
だめだ、多分。あたし死ぬんだ――
"私立N女学院高校3年 女子生徒(18)
階段から足を滑らせ死亡"
そんな見出しが明日の新聞に載るかもしれない。
なんて、色のない最期なのかしら。
でも、良かった。
あたしが死んでもお父さん、一人じゃないもんね。
もう紗矢加さんいるし、大丈夫。
っていうか、あたし死ぬ間際までなに考えてるんだろう。
笑っちゃうなあ、ほんと。
体が地面に叩きつけられて、
悲鳴が遠くで聞こえる。
色んなところが、痛い。
でももう。そんなことすら分からなくなる。
その時あたしの頭に過ったのは、
遠い昔に忘れたはずの家族の笑顔だった。
あの、毎日が
幸福に満ちていて、虹色に輝いていた日々が、
身体中で煌めいていた。
昨日、君にサヨナラを。《1》