フライパンの上の残暑

夏期休暇の残り物を炒める

刺激以上毒未満

西瓜のように
膨らんだ

私の夏の残り物

膨らみは空白を生む
残り物には何も足せない

過ぎたことへの隠し味は後の祭

首に浮かんだ哀愁と
君に告げた一言は

空白を白々しく広げていく
フライパンの上で追い立てるように

苦しいと思った

空白は私の酸素を奪っていく

残り物は今の私から何かを奪う

「お前なんか取り出すんじゃなかった」

苛々しながら塩を振る
床にまで散らばる

情けなくなって叫んでみる
空白は迫ってくる

食べるつもりが食べられる
それもありだと思う
それが楽だと思う

残ったもの全部フライパンに入れる
花火が上がる
涙が散っていく

誰かの何かになりたくて
誰のためにもなれなくて

こうしてフライパンで
炒めるしかできない

情けないだけの夏でした
口惜しいだけの夏でした

焦げたものだけ出来上がりました

フライパンの上の残暑

フライパンの上の残暑

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-25

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