人猫記

N村Kタロウ

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古い作品ですが、眠らせておいても仕方がないので、こちらでどなたかの目にちらりとでも留まれば幸甚です。

1

 高校時代に友達だった仲島敦子と、喫茶店で偶然会った。
 僕らの高校は、成績順でS.A.B.C.D.E.Fの七クラスに分かれているような私立の進学校だった。ぎりぎりの点数で入学した僕と敦子は一年の一学期で落ちこぼれてしまい、おかげで三年間ずっと同じF組、しかもふたりとも眼が悪いからいつも最前列の中央に並んで座らされた。三年間のほとんどを隣同士に座って過ごし、いろいろ話すうちに友達になった。
 授業中に敦子と話をするのはとても楽しかった。テレビ番組のことや、漫画や本や音楽のことなど、ずいぶんいろいろな話をした。趣味が合ったのだ。二人とも夢中になってしゃべる上に、敦子がやたらに大きな声で笑うから、当然担任には目をつけられて「お前ら、二人の世界に入っとるんやないぞ」とよく嫌味を言われていたけど。
 一部の同級生には付き合っていると思われていたみたいだけど、そうじゃなかった。クラスで一番の友達だとは思っていたが、ただ教室でおしゃべりするだけの関係で、学校の外で会ったことはほとんどない。方向が違うので一緒に帰ることもなかった。それどころか敦子はいつも僕の良く知らないS組の男子生徒と一緒に帰っていたのだ。
 正直に言うと、僕の方は敦子を女の子としてかなり意識していた。確かにあまり垢抜けない子だった。黒々として量の多い、重く見えるロングヘアに、真っ赤なフレームの安っぽい眼鏡。それにびっくりするほど大きな笑い声。でも平べったい顔も、見ようによっては可愛いと言えなくもなかったし、なにより彼女の脚が長いことと胸が豊かなことは、クラスの男子たちの間で衆目の一致するところだった。もっとも「仲島は、首から上はどうでもええねん」というのが級友たちの一般的な評価だったが。
 首から上だって僕にとっては大事だったのだが、もちろん僕も十代だったから、わざと消しゴムを落として敦子の脚を間近に眺めたりもした。なんといっても実り多いのは夏で、座っている敦子の机の前に立って「暑いなあ、仲島」と話しかけると、敦子は必ず「ほんま暑いよねえ」と答えて、だらしなくボタンの開いた制服の胸元をつまんでぱたぱたさせる。うまくすればかなり奥まで見える。下着がちらっとでも見えたら一日気分が良かった。秋になって敦子が「そう? 今日は涼しいやん」としか言わなくなるまでそれを続けた。おかげで敦子は僕のことをひどい暑がりだと思っていたようだ。
 でも、どうやら向こうにはそんな気はぜんぜん無いようだった。一度だけ、二人で大阪に映画を見に行こうと僕から誘ったことがあった。授業中の私語でその映画が話題になったとき、面白そうだと言って一緒に盛り上がったので、思い切って誘ってみたのだ。だけど意外なほどあっけなく断わられてしまった。かなりがっかりした。敦子は僕を教室での話し相手に留めておきたいのだろう。そう思ってそれ以来、敦子を外に遊びに誘ったことは一度もない。
 卒業後それぞれ進学してからは会うこともほとんどなかったのだが、ある日曜日の夕方、神戸駅近くの喫茶店で七年ぶりに出会った。買ったばかりの本を開いてコーヒーを飲んでいたとき、後ろから肩を叩かれたのだ。振り向くと、同い年ぐらいの奇麗な女性がいた。一瞬、それが仲島敦子だとは気づかなかったが、声で分かった。
「林田くんやろ? なあ」
 敦子はもう眼鏡をかけていなかった。ショートヘアで、ちゃんと化粧をして、輝くような笑顔で、コットンのワンピースで、とにかく仲島敦子みたいじゃなかった。首から下だけでなく全てが魅力的に見えた。
「めっちゃ久しぶり! 変わってへんなあ。すぐ分かったよ」と言って、敦子はウェイトレスが振り返るほど大きな声で笑った。
 敦子は自分の飲み物を持って僕のテーブルに移ってきた。敦子もひとりで元町で買い物をしたあとでこの喫茶店に寄ったのだという。平日は病院で事務の仕事をしているのだと敦子は話した。敦子が病院事務なんて、なんだか妙な感じだった。僕が教育出版の会社で働いているというと、敦子の方も意外そうな顔をしていた。
 それから二人で長いあいだ話をした。昔の思い出話というよりは、高校時代の会話の続きと言ったほうがいいだろう。驚いたことに、七年間ほとんど連絡を取っていなかったのに、僕も敦子もそれぞれ似たような道をたどって、今でも同じような音楽を聴き、同じような本を読んでいた。互いに、相手の好きそうな新しいアーティストや、以前から読んでいた作家の新作などの情報を交換しあった。
「うれしいな。高校出てからずっと、こんな話できる友達おらんかってん」と敦子は言った。「なんか久しぶりにすっきりしたわ」
 ふたりとも、交換した情報を手帳に書きとめ、それから携帯電話の番号と電子メールのアドレスも交換した。
「絶対メールしてな。またこうやってしゃべろうよ」と敦子は言った。
「仲島は、高校の同級生とは今も連絡とってるんか?」
「うん。女の子はね、何人か。でも男の子は無いなあ」
「そうなんか」
「だって、男子の友達って、元々ほとんどいてへんかったもん」
「そういえば、S組のあいつは?」と以前ずっと気になっていたことを僕はきいてみた。「ほら、お前、いつも一緒に帰ってたやろ。あいつ、何て名前やったっけ。キズキじゃなくて、ヤザキでもないし」
「ああ」敦子の顔に少し影が差した。「来生くん」
「そうそう。キスギ。来生やな。男前で、頭も良かったし、しっかりしてそうやったな。あいつは元気にしてるんか」
 敦子の眼から、みるみるうちに光が消えていくのに気づいた。
「お前、来生と何かあったんか?」
「別に何もないねんけど……。一昨年ぐらいに一回会っただけ」
「ふうん。会ったんか」
「うん。でも、ろくに顔も見いひんかった。あのな、そのときのことやねんけど、実は、信じてくれへんと思うねんけど……」
「信じるも信じへんも。別に、お前らの間で何かあったとしても、僕は何も気にせえへんし」
「ちがうちがう」敦子は激しく首を振った。「ちがうねん。そんなんやなくて、ほんまに信じられへんようなことやねん」
「言いたくないんやったら、別にええねんし」
「ちがうねんて。ほんまに変な話やから。でも聞いて欲しい、林田くんさえよかったら。まだちょっと時間あるんやったら、しゃべってもいい?」
「時間やったらなんぼでもあるけど」
「聞いてくれる?」
「ああ。いいよ。どうしたんや」
「ありがとう」深く息を吸ってから、敦子は話し始めた。「さっきも言ったけど、わたし今、西宮北口の病院で働いてて、阪急で通ってるねん」

2


 さっきも言ったけど、わたし今、西宮北口の病院で働いてて、阪急で通ってるねん。仕事終わって帰ってきて、阪急の駅からマンションまで、歩いてだいたい十五分ぐらいかな。山手幹線の方を歩いてった方が明るいし、コンビニとかもあって便利やねんけど、遠回りになるねん。だから、古い商店街の方を通って行くことがあるの。そのほうがだいぶ近道やし。ただ商店街って言うても、あんまりお店もやってへんし、暗くなったらちょっと寂しくて怖いねんな。だから遅くなったら通らへんようにしてるねんけどね。
 一昨年の五月やったと思う。その日は仕事も割と早めに終わって、駅に着いたときで六時ぐらいやったかな。まだちょっと明るかったし、早く帰ってしたいことがあったから、商店街の方へ行くことにした。
 商店街の入り口のところにフライ屋さんがあるの。そこに通りかかったら、店を閉めようとしてはったおばちゃんが、声掛けてくれはった。そのおばちゃん、小さいころからわたしのこと知ってるねん。小学校の時とか、ようハムカツとか買うてたし。
「あら、あっちゃんやないの。久しぶり。こんばんは」
「おばちゃんこんばんは」
「あっちゃんあんた、もう遅いし、ここ通って行かんほうがええよ」
「大丈夫よ。いつも通ってるもん」
「そやかてあんた、痴漢もおるかもしれんし、それに、最近この奥のほうで野良猫が出よるらしいんよ。えらい大きな・性悪な・イケズな猫らしいわ」
 わたしびっくりしたわ。だって、猫がいるから通らないほうがいい、なんて、聞いたことないもん。それにわたし猫ってわりかし好きやねん。マンションに引っ越す前にうちで飼ってたこともあるし。そやからおばちゃんにはそう言って、わたしは商店街に入って行った。
 そこはね、古い商店街やねん。昭和のままの感じ。
 昼間でも、五、六軒に一軒ぐらいしか店は開いてへんの。前はもっとにぎやかやったんよ。でもだんだん寂しくなって、特に震災のあとはね。取り壊されたままの空き地もあるし。
 開いてる店でも、たとえばお母さんの履くようなサンダルばっかり並んでたりとか、商品も少ないねん。そやからその夕方は、もうほとんどシャッターも降りてて、通る人もあんまり居てへんかったわ。
 そこを歩いて行ったんやけど、わたしはむしろ、猫が出てくるのが楽しみやってん。大きな・性悪な・イケズな猫てどんな猫やろ。かつお節かなんか買うて来たほうがよかったかなー、とか思いながら。まあ、猫っていうのは気まぐれやし、臆病やし、多分出て来てくれへんとは思ってたんやけど。
 でもちゃんと出てきたんよ。
 阪急の線路から山側の方に向かってゆるい上り坂になっとう長い商店街の、ちょうど真ん中くらいまで来たの。そこら辺が、人も少なくて一番さみしい所やねん。なんか、思ってたよりも早く暗くなってきて、ちょっと心細くなった。猫なんか平気やけど、マジで痴漢とか出てきそうな雰囲気やし。わたし、実際に何回か怖い目に遭ってるんよね。怖いし、すごく悔しくてムカツク。林田くんは男やからそんな気持ちわからへんやろ?
 まあ、林田くんに怒っても仕方ないねんけどさ。
 で、その、さみしい辺に、小さい神社があるの。店と店の間に。神社っていうよりホコラっていうんかな。とにかく、そこは小さい草地になってるねん。
 ちょうどそこに通りかかったとき、聞こえたの。ギャーッ、って。雄猫の叫び声って、すぐ分かったわ。うちで前に猫を飼ってたときに、雄猫がよく庭先まで来てたもん。
 猫はすぐに出てきたよ。ホコラの裏の方から。茶虎の・めっちゃ大きな・犬みたいな猫やねん。わたしが立ってても、全然怖がらへんの。道の真ん中まで出てきて、わたしのこと真っ正面からじーっとにらんで、飛びかかる体勢やねん。あんな猫、初めてやったからびっくりしたわ。
 もちろん、猫は猫やし、怖いことはないねんけど、そのときわたしスーツ着てたから、泥足で飛びついて引っ掻かれたら嫌やなって思っててん。そしたらその猫、突然何かにびっくりしたみたいに目を丸くして、身体を翻して草むらに隠れてしもた。
 それから、草むらの中から人間の言葉が聞こえて来たんよ。
「危ないところだった」
 知ってる声。わたしほんまにびっくりした。林田くん、誰の声やったか分かる?
 そうやねん。来生くんの声。
 わたし、叫んだわよ。
「えっ、来生くん? その声は、夙川の来生くんやろ?」
 しばらくして、草むらの中から重いため息が聞こえてきた。それからこう言うたの。
「そうだ。僕は夙川の来生だよ。久しぶりだね、仲島さん。元気そうでよかった」
「どうしたん? なんで?」

3

 夙川の来生孝之は博学俊英、高校の三年間を通じて精鋭S組に名を連ね、京都大学法学部で法学士の学位を得るや、二十世紀の末年、若くして司法試験に合格。法曹界の新たなる俊才として大阪に於いて弁護士の職に就くも、いくばくもなく弁護士事務所を退職、その後は実家の自室に起臥し、何をするでもなくぶらぶらしている様子であったという。そしてある夜半、急に顔色を変えて部屋を飛び出すと、何か妙なことを叫びつつそのまま下に駆け下り、夜の山手幹線へ駆け出して、二度と戻ってこなかった。神戸、阪神間諸都市から大阪、京都、遠く西方は姫路まで捜索の手を伸ばしても、なんの手がかりもなく、その行方は杳として知れなかった。

「京大……弁護士……行方不明?」
「そう。突然、失踪したんやって」

 来生くんとはね、中学校から同級生やってん。来生くんの家はもともと夙川やってんけど、うちの近所に引っ越して来はったんよ。
 中学のころから来生くんは成績もよかったし、格好良かったし、スポーツも割と出来たし、女の子には人気あったよ。
 来生くんもね、わたしや林田くんと同じで目が悪いねん。高校の時はもうコンタクトにしてたけど。だからやっぱり前の方で、中3の時は隣の席になることが多かった。ほんで、勉強教えてもらったの。わたしは数学が特にあかんかったから、うちの高校に入れたんは来生くんのおかげやったんよ。めっちゃうれしかった。クラスで一番の成績やった来生くんと同じ高校やねんもん。でも、まぐれでギリギリ合格やったんよね。入ってみたらわたしはF組で、S組の来生くんの隣には座れんかったもん。

「で、僕の隣に座って、三年間かけて成績はずるずると落ちていった」
「まあ、そういうことよね」

 でも、家は近くやから、来生くんとは一緒に帰ることができた。一緒に阪急に乗って、一緒の駅で降りて、わたしの家の前でバイバイするねん。その間、いろんな話をしたよ。林田くんとしゃべってたのとはまた全然別な話。わたし、来生くんと一緒にいると、ついついきちんとしてしまうねん。林田くんと話しとう時みたいにあほなこと言われへんの。
 わたしの高校生活、結構悪くなかったなあ。教室では林田くんとずっとしゃべれて楽しかったし、帰りの電車では来生くんに相談に乗ってもらえたし。
 そうやねん。来生くんは、いろいろ相談に乗ってくれたんよ。
 林田くんには言うてなかったけど、わたしが中学とか高校のころ、うちの両親がすごく揉めてて、離婚直前まで行きそうやってん。お父さんが浮気したとかせえへんとか。震災のときも、他の女の人のところにおってんて。わたし、どうしたらいいかも、誰を信じたらいいんかも分からへんかった。
 そんなこと、林田くんには言われへんかったもん。
 なんでって、そんなややこしい話に巻き込んで、林田くんを嫌な気持ちにさせたくなかったし。暗い子みたいに思われて林田くんに嫌われるのもいややったし。
 ごめんね。今ごろこんなこと。
 とにかくわたし、そういう話は来生くんにしか出来へんかったの。
 来生くんはわたしの話を、だらだらした愚痴みたいな話を全部聞いてくれて、いろいろ真剣に考えて助言してくれた。もちろん大人の問題やから、いくら頭のいい来生くんでも、分からへんことの方が多かったんやろうと思うけど。来生くんは無理にわたしの支えになろうとしてくれてたんやと思うけど。今やからそれが分かるけど。
 でもね、筋道を立てて・苦しそうに・真剣に考えて、嫌な顔ひとつしないで誠実に答えを出そうとしてくれる来生くんが、わたしにとっては、ほんまに救いやったの。出てくる答えは、今思えばただの一般論やったかもしれへんけど、来生くんが真剣に聞いてくれることが、わたしにはすごく助けになってたと思うの。

「そんなこと、想像も出来んかった」と僕はため息をついた。「お前、明るかったやん」
「林田くんも、来生くんと同じくらい、わたしの力になってくれてたんよ。それは、もうちょっと後になって気づいたんやけど」
「仲島は、来生が好きやったんやろ?」
「うん。好きやったよ」敦子は寂しそうに微笑んだ。「あのときは林田くんに、そのこと言われへんかった。だから、ほら、林田くんが映画に誘ってくれて、わたしが断ったことあったでしょ。覚えとう?」
「覚えてるよ。正直、へこんだ」
「ごめんな。あの映画、わたし来生くん誘って行こうと思ってたから。でもそれを林田くんには言えんくて。誘ってくれたのはうれしかったけど、うまく断られへんかった。気まずかってん。結局、来生くん予備校が忙しくてあかんかったけど」
「そうか」
「でもね、今やから言うけど、林田くんのことも二番目に好きやってんよ」
「そらどうも。ありがとさん」
「林田くんとしゃべっとう時が一番たのしかったの。これは、ほんまに」

 林田くんと話をしたり、林田くんに教えてもらった音楽を聞いてるときは、いやな事も全部忘れられた。だから、わたし、授業中に林田くんとしゃべってるときが一番楽しかってん。林田くんも楽しそうにしてくれてて、それもうれしかった。でもそのときはわたし、林田くんて気が合うし面白いなあ、としか思ってへんかった。林田くんにすごく支えてもらってたって気づいたのは、卒業してから。
 卒業して、わたしは短大に通いはじめたし、来生くんは京都に行っちゃった。林田くんとも、離れてしもた。林田くん、なんで連絡して来てくれへんのかなーって、ときどき思ったけど、それはお互いさま? そうやんね。
 短大生って結構忙しいねん。すぐに就職活動やし。
 わたしが病院に就職してから何年か経って、来生くんの実家の方から報せがあった。来生くんが弁護士を辞めて、失踪したって。来生くんのお母さん、「ひょっとして、孝之は出て行く前に敦子ちゃんに会いに行ったんじゃないかと思ったの」って。

4

「一番会いたくない相手に会ってしまったようだな」と来生くんの声は言った。「懐かしくなってつい家の近くに来たんだが、まさか仲島さんに会うとは思わなかったよ」
「来生くん、出てきいよ」
「だめだ。こんな格好を仲島さんには見せられない」
 おかしいのは分かってる。野良猫が来生くんの声でしゃべるなんて。信じられへん。でも、そのときは、何か知らんけど、分かってん。来生くんの声でしゃべってるのは、まちがいなくさっきの猫やった。不思議なことやけど、そんなこともあるのかもしれへんと思った。あれは絶対に普通の猫やなかったもん。
「その後、ご両親の様子はどうだい」野良猫は――来生くんは言った。
「なんとかやってはるわ。前よりは少しうまく行ってるみたい。でも、なあ、わたしのことはええねん。そんなことより来生くん、どないしたんよ、一体」
「順を追って話そう。僕にもよくは分からないんだが」
 話によると、来生くんは、大学を卒業して、司法試験に受かったあと、弁護士事務所で働き始めた。でも大きな事務所の現実を見れば見るほど、弁護士の仕事が嫌になっていったんやって。来生くんは、人の役に立ちたい、法律の力で弱い人々の利益を守りたいと思ってたのに、事務所の仕事は企業とかお金持ちの利益のための仕事ばっかりやった。
 もちろん、大きな事務所の仕事なんてそんなもんやって、来生くんにも初めから分かってた。それを乗り越えて、何年か後には開業しようと思ってたんやけど、でも来生くんには耐えられへんかったみたい。消費者をないがしろにした企業を弁護したり、環境を破壊する施設を作るために土地の所有を争ったり。そんな仕事をしてたら、本当に本当の事を見失ってしまう、大事なものを忘れてしまう、そう思ったんやって。
 ある日、来生くんは、どうしても裁判所に行きたくなくなって、どうしても行くことができなくて、ベッドに潜り込んで、大事な仕事をすっぽかしてそのまま事務所を辞めてしまった。
「僕は、利益のためだけに動く人間というものに、社会というものに、すっかり倦み疲れた。僕は弁護士になって、誰かの力になりたかった。弱い人たちの役に立ちたかった。でもね、仲島さん、弱い人、気の毒な人なんてどこにもいなかったんだ。この社会ではみんなが強者だ。強者同士が戦い、争って、勝った者が利益を得る。そして負けた者が傷つき不遇をかこつ。弱者と呼ばれているものは、敗北した強者に過ぎないのだ。それだけのことだった。僕はもうそんなところに居たくなかったんだ」
「それもそうかもしれへんけど、来生くんの言うことは極端やと思う。うちの職場にも、嫌な人とか、怖い人とかいるけど、そういう人にもなんか良いとこあったりするよ。優しい人も、親切な人もいてるよ」
「そうかい。仲島さんが恵まれた環境にいるようで良かった。仲島さんが幸せに、健康的に生きていってくれれば、僕はとてもうれしいよ。もし、僕がほんの少しでもそのために役にたつことができれば…」
「ねえ、わたしはええねん。わたしは平気やねん。それより、来生くんは? 来生くんはどうなるん?」 
 わたしはほとんど泣きそうやったよ。っていうか、泣いてたと思う。ちょっとね。
「どうもならないさ。僕はこうして一匹の野良猫として生きていくだろう。今日仲島さんに出会ってしまったのは、計算外だったんだ。これは例外的なエピソードに過ぎないよ。僕はただの猫、にゃーにゃー鳴く普通の野良猫だ」
「いつ、どうやって猫になったん?」
「それが、さっきも言ったようによく分からない。不思議な話だ。弁護士事務所を辞めた僕は、しばらくの間家にいていろいろなことを考えていた。どうして世の中の人間はみんなああなってしまったんだろう。なぜ、みんなは本当に本当のことを見失ってしまったんだろう、って。そして僕はね、仲島さん、ひょっとしたら僕の言葉で、みんなに本当に本当のことを伝えることが出来るかも知れないと思うようになったんだ。もちろん小さな力にすぎないけど、少しずつ、少しずつでも、僕の力でみんなを変えることが出来るかも知れない、って。それが、僕が詩を書き始めた理由だった」
「詩?」
「そう。僕は詩を書いた。たくさん書いたよ」
 来生くんが詩を書くなんて、わたし思っても見いひんかった。
 どっちかって言うたら、林田君の方がまだ詩とか書きそう。そんなことない?
 でもとにかくね、来生くんは実家の自分の部屋で、パソコンに向かって詩を書いたんやって。何ヶ月も、毎日毎日。
「書き始めるのは決まって深夜だった。書いているとき、僕は夢中だった。仲島さん、詩を書いているとき僕は、本当に本当のもの、本当に本当の世界の中にいたんだ。それは、現実の世界、人間の世間とは全く違う場所だった。僕はそれを言葉にしてみんなに伝えることで、現実の世界の在り方を変えることが出来るかも知れないと信じた。僕はそれらを何らかの形で公表するつもりだった。しかし、夜が明けた後、醒めた目でそれを読み返してみると、そこにあったはずのものは必ず跡形もなく消えていた。僕は何かをみつけて、それを形にしようとする。だが僕がその何かに形を与えると、形だけが残って、何かは消えてしまうんだ。あたかも、熱く融けていた鉄が、時間と共に冷たい固まりになるのと同じように。でも僕は詩を書き続けた。書くことはやめられなかった。そして、ある夜のことだ、僕は新しい詩の想を得て、パソコンの電源を入れた」
 猫の詩。
 ある夜、来生くんは猫についての詩を書き始めてん。来生くんはもともと猫が好きやったから。
 それは、ある一匹の猫の生活を描いた詩で、最初は十行ぐらいで終わらすつもりやったのに、書いても書いても終わらへんねんて。十行、二十行、百行を越えても、終わらすことが出来ひんねんて。来生くんは、その猫の世界にいることが楽しくて仕方なかった。キーボードを打つ指が疲れてきても、目が痛くなっても、やめられへん。
 それで詩はどんどん長くなっていった。何時間もキーを叩き続けて、もう誰も読んでくれへんような長さになって、それでも、来生くんはそこから出られへんかった。
「僕はもうそのままそこにいたかった。やがて朝が近づき、窓の外はかすかに明るくなりだした。指が痛くなり、キーを打つ速度が落ち始めた。僕はもどかしかった。イメージはいくらでも出てくるのに、手が追いつかない。いや、それ以前に、言葉がイメージに追いつかない。僕はもう何かを詩に書きたいんじゃなかった。何かを表現したいのですらなかった。その何かの中に居たかった。その何かそのもので在りたかった。僕はキーボードを投げ出した。そこまでは覚えている」
 気がついたとき、来生くんは夜明けの山手幹線を全速力で走ってた。身体がすごく軽くなったような、元気が満ちてるような気がしたって。
「軽やかに、いくらでも走れるんだ。ジャンプ一つでブロック塀の上に飛び乗ることもできる。屋根の上にまで。もちろんだいたい何が起きたかは分かっていたよ。明るくなって見ると、僕は猫になっていた。にゃお」
 わたし、来生くんの話を信じた。信じられへん話やけど、来生くんの声を聞いてると、ほんまの出来事としか思われへんかった。
「猫になって僕は幸せだよ。食べるものだっていくらでもあるんだ。野良猫になってみて、日本の都市社会がいかに食べ物を無駄にしているか改めて認識したよ。商店街にいれば、いくらでもおいしいものが食べられる。少し注意深く行動しさえすればね。だから僕には何の憂いも無い。両親のことも心配していない。僕がいないからといって駄目になるような人たちではないからね。でも仲島さんのことは時々思い出すよ。僕にとって高校時代は最もいい時期だったと思うんだ。あのころは、世界に入る扉が僕に向かって開くだろうと思っていたから。しかし結局扉は僕には開かなかった」
 わたしには何も言われへんかった。わたしは来生くんのこと全然分かってなかったんやと思った。考えてみたら、高校のころ、わたし来生くんに自分のことを言うばっかりで、来生くんのことなんか何にも聞いてへんかったもん。
 いつの間にか、商店街はますます暗くなってて、涼しい風が吹いてた。ちょっと肌寒いぐらいやった。
「仲島さん、一つお願いがあるんだ」
「なに、来生くん?」
「僕は猫になるまでの数ヶ月間に、たくさんの詩を書いた。何十編、いや何百編にもなると思う。それらは今も僕のパソコンのハードディスクに入っているはずだが、今後誰かがそのファイルを開く事もないだろう。だから、今記憶している何編かの詩を、仲島さんが書き留めてはくれないだろうか。猫になることが人間にとって本当に本当のことだとは思わないが、僕の詩の中に、僕が本当に本当のことだと思った何かが、まだ微かに熱を持っているかも知れないという思いは捨てきれないのだ。そうでなくとも、猫に変身した、恐らく世界でも希有な男が書いたものを残すことが、何か後世の役に立たないとも限るまい」
 わたしはいつもシステム手帳とペンを持ってるから、来生くんに言われるとおりにそれをメモしたよ。今もここに持ってる。こんな内容。


   友よ、智代よ

 友よ
 わがよき友、智代よ
 夕暮れとも夜明け前ともつかぬ闇の中で
 友よ
 君と共に車窓から見た景色を
 毎日、幾度ともなく反復されたあの同じ景色を
 僕は何があろうともその全ての瞬間を
 もはやその日付は覚えていなくとも
 いつ果てるともなく繰り返された一回一回を
 甘い想いとともにこの記憶にとどめている
 智代
 その記憶がこの身もろとも滅びる時まで
 僕は、智代、君を友と呼び続ける
 そうさ呼び続けるとも


   深夜航路

 書物の上
 誰かの言葉
 歴史の中
 人と人のあいだ
 僕はそこに真実を見出さない
 真実はこの僕の中にあるから
 さあ、逡巡のもやいを解き、傷だらけの帆を揚げよ
 その重い心を船底に積み込み、内なる大海に漕ぎ出すのだ
 僕は僕の海を、君は君の海を
 共に航海しよう
 全ての航海は夜に行われる
 そして僕らの航海は
 同じ一つの大陸にたどり着くまで続くだろう


 他のも似たような感じ。もっとたくさんあるけど。
 わたしはね、もちろん、そんなこと口に出しては言わんかったけど、結局来生くんはこれを残すために、昔から夢やった弁護士をやめたんかと思うと悲しかったわ。この詩が良いのかどうかはわたしにはよく分からへんけど。
 わたしがだいたい二十ぐらいの詩を書き留めたところで、来生くんが言うた。
「覚えているのはこれぐらいだ。もうこれで充分だよ」
「ちゃんと書いておいたよ。ネットとか、誰かの目に触れたほうがええの?」
「いや、それはもういいよ。仲島さんが今聞いてくれただけで気が済んだような気がする。うん。仲島さんが聞いてくれたなら、もういいんだ」
 来生くんはそれきり黙ってしもた。もういつの間にか真っ暗やった。草むらの中で来生くんの猫の目がぎらぎら光ってるのが見えてきた。駅の方から歩いて来る人影があった。
「仲島さん、そろそろ行った方がいい」と来生くんの声が言うた。「猫は夜行性なんだ。もう少ししたら僕はただの猫の心に戻ってしまうだろう。そうすれば、仲島さんに襲いかからないとも限らない」
「別にちょっとぐらい引っ掻かれてもわたしはかまへんけど」
「仲島さんはよくても、僕は少しでも仲島さんを傷つけたりしたくない。お願いだから、行ってくれ」
「なあ、わたしのとこに来るっていうのはどう。マンションやけど、猫ぐらいやったらこっそり飼えると思うの。おとなしくしててくれたら――」
 そんなこと出来ひんのは分かってたよ。来生くんもそれには何も答えへんかった。そして言うた。
「仲島さんに会えてうれしかった。人間の言葉を最後に話せたのが仲島さんでよかった。おかしいだろう? こうして野良猫になっても、立派な社会人である君のことを友達だと思ってるんだ」
「友達やん。猫でも」
「さようなら、仲島さん」と猫は言った。
 うん。またね。
 そう言おうと思ったのに、嘘を言うみたいな気がして、どうしても言われへんかった。涙が出たよ。だって、来生くんは高校時代のわたしにとって世界に入る扉やってんもん。
「さようなら、来生くん」
 わたしは猫に背を向けて歩き始めた。商店街の出口ら辺まで来たとき、後ろから、ニャオーン、ニャオーウていう声と、男の人の叫び声が聞こえた。振り返ってみたら、中年のサラリーマンのおじさんが、カバンを放り出して駅の方へ逃げて行くところやった。道路のうえに猫のシルエットが見えてた。猫は蛍光管の切れかけた街灯を見上げて、にゃーにゃーと二、三回鳴いたかと思うと、ぱっと跳び上がって電柱の向こうに姿を消し、二度とその姿を見んかった。

5

 話し終えると、敦子は少しだけ残っていたジュースをストローで飲み干し、グラスを置いた。うっすらと口紅の残ったストローから、こぽこぽとかすかな音がした。
 僕は口を開いた。
「仲島、ほんまにその猫が来生やったんか? もしかしたら、来生はどこかに隠れとって――」
「ちがうよ。そんなこと不可能やもん」敦子は顔を上げて僕を見た。冗談を言っている眼でも、嘘を言っている眼でもなかった。「何のために、来生くんがそんなことせなあかんの?」
「そら、仲島と顔を合わすのが……」
 僕の顔をじっと見ていた敦子の眉と唇が、ほんの少し歪んだ。敦子の顔は、十八の女の子だったときとは明らかにちがっていた。ただ奇麗になっただけじゃない。若いなりにすでにいくつかのものを失ってきた、二十代半ばの女の子の悲しみみたいなものもあった。それで僕にも分かった。来生は本当に猫になったのだ。敦子がそう言うんだからそうなのだ。それがどんな意味であるにせよ――生物学的な意味であるにせよ、何か他の意味であるにせよ――どっちでも同じことだ。
「そのときは、来生くんに腹が立ったりもした。でもね、あとになって、来生くんが猫になっちゃったのは、わたしのせいやったような気がしてきたの」
「そんな珍現象が、なんで仲島のせいやねん」
「わたし、来生くんから一方的に何かを奪ってたような気がするねん。支えてもらうだけで、その代わりに何も返してあげへんかった。来生くんを踏み台にしてたような気がする」
「それは、僕にはわからへんけど」
「勝手な言い分かも知れへんけど怒らんといてな。高校のとき、林田くんもすごくわたしの力になってくれてた。さっきもそう言うたやろ? でもわたし、もらった力と同じ程じゃないにしても、いくらかは林田くんに返してあげれてたと思うねん。わたしら二人、お互いにエネルギーを交換したり、貸したり返したり、取り合いしたり、助け合って一緒に増やしたりしてた。違うかな?」
「そうかもしれん。いつどこで仲島の力になれたんかは分からんけど、僕はお前のおかげで三年間楽しかった」
「そしたら、わたしら二人はやっぱり一緒の仲間やったんやんな?」
「そんなもんやろか」
「でもわたし、来生くんの仲間にはなってあげれへんかったんやと思う。来生くんはわたしとは全然別な人やと思ってた。わたしよりずっと強いんやと思ってた。ほんまはそうやなかったのに」
 敦子は目を伏せ、肩と胸を上下させて深いため息をついた。言いたいことは僕にも分かる。高校時代の僕だって、敦子のことを楽しい友達としか思ってなかった。できればもっと近づきたいような、素晴らしい胸と脚を持った女の子としか思っていなかった。家族のことで悩んでたなんて知りもしなかった。でも、敦子は猫になんかなっていない。自ら望んだのでなければ、人が猫になったりするわけが無いのだ。にゃーにゃー鳴いていたい奴にはにゃーにゃー鳴かせておけばいい。敦子が自分を責めたりする必要がどこにある?
「なんでお前が責任感じんといかんねん」と言って、僕はいつまでもうつむいている敦子から目を逸らした。
 もう窓の外にはネオンが灯っていた。錨山の山腹にイルミネーションが浮かび上がっていた。通りを挟んだ神戸駅の高架の上を電車はひっきりなしに行き来し、改札に向かう人と降りてきた人の流れが横断歩道で渦を巻いていた。時計を見ると七時を回っていた。
「そろそろ晩飯時やな」と僕は言った。
 敦子は顔を上げた。
「今日はありがとう。また会えるやんな?」
「気長に待てば、たぶん会えるやろ。まあ、相手は野良やから、分からんけどな」
「ちがうよ。林田くんとやん。また会おうな?」
「ああ、メールしてくれたらいい。土日は大体空いてるよ」
「わたしも、土日は大抵空いてる。メールするわ。まだしゃべりたいことあるねん」敦子はシステム手帳を収めてバッグを閉じた。「今日みたいに楽しかったん、久しぶり。高校時代以来かも。林田くん、全然変わってへんねんもん、嬉しかったわ」
「お前も、見かけは変わったけどしゃべったら昔のままやな。安心したわ」
 僕は伝票を手に立ちあがって上から敦子の顔をのぞき込んだ。敦子も顔を上げて微笑んだ。よく見ると、少し泣いたのだろうか、目元のメイクが微妙に崩れているような気がした。
 本当に美しくなったものだと、あらためて思った。高校時代なら、こんなに奇麗なお姉さんとはろくに口も利けなかっただろう。敦子の顔からは眼鏡と一緒に思春期の暑苦しさがすっかり消えていた。どちらかというと平面的な顔なのは変わりないが、頬や目の周りの肉が落ちて、はれぼったい感じは無くなっていた。僕はため息をついて、思わず口に出して言った。
「お前、ほんまに見違えるように奇麗になったな」
「あほ。何ちゅうこと言うねん」
 敦子が頬を染めるのを僕は初めて見た。それこそ胸まで赤くなっていた。ワンピースの襟元にのぞいた谷間を盗み見ながら、僕は直感的に、来生は高校時代にこの奥の眺めを見たことが無かったに違いないぞと思った。それは確信に近かった。そうでなければ猫になどなるはずがないと、理屈も何もあったものではないけど、そう感じたのだ。
 おい野良猫、どうせおまえは知らんかってんやろ。お前と一緒に歩いてた眼鏡の女子が、制服の下に水色のチェックのブラジャーをしとったことを。家族の問題で悩んどうことは知ってても、知らんかってんやろ、滅多に見れんレアなホクロが右の鎖骨の下にあることさえ。世界の扉っちゅうのは、こういうところにあるんや。呪文ひとつでそれは開くねんぞ。
 努めてさりげなく僕は言う。
「暑いな」
「ほんまや。暑うなるわ。もう」
 うまい具合に敦子はワンピースの襟をつかんでぱたぱたさせた。一瞬だが、濃紺の下着がしっかりと見えた。
「なあ、仲島」僕はこみ上げる笑みを押し殺して咳払いをした。「どうやろ。せっかく会えたんやし、今から晩飯でも食いに行かへんか」

人猫記

何でこんなものを書いたのだったか覚えていませんが、今でも中島敦は好きな作家です。関西弁で書くことはまたやってみたいと思っています。

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人猫記

『夙川の来生孝之は博学俊英、高校の三年間を通じて精鋭S組に名を連ね、京都大学法学部で法学士の学位を得るや、二十世紀の末年、若くして司法試験に合格。法曹界の新たなる俊才として大阪に於いて弁護士の職に就くも、いくばくもなく弁護士事務所を退職、その後は実家の自室に起臥し、何をするでもなくぶらぶらしている様子であったという。そしてある夜半、急に顔色を変えて部屋を飛び出すと、何か妙なことを叫びつつそのまま下に駆け下り、夜の山手幹線へ駆け出して、二度と戻ってこなかった。神戸、阪神間諸都市から大阪、京都、遠く西方は姫路まで捜索の手を伸ばしても、なんの手がかりもなく、その行方は杳として知れなかった。』 誰もが知っているあの名作を元ネタにした短編です。

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