コトコト、カラカラ
睡眠中に起きるホラー作品が書きたかった。ほんと短いのでちょちょっと読んであげてくだせえ。
布団の中の綿毛から熱気を感じる。時折布団から身体を半分ほど出すものの違和感を感じてまた布団の中に戻る。もう1時間と30分は寝れずにいた。一度起きてデジタルクロックを見ると、2時3分になっていた。明日は朝が早いので今すぐにも眠りに落ちなければいけないのに。そう思うほどに心はざわついて寝れなくなった。
自分の頭から右上の辺りでコトン、という音がした。何かスプレー缶のようなものが倒れたような音だった。扇風機の風圧で押されたのだろう、そう思ってその時はそれほど気にしなかった。
コトン、また音がする。何かが転がっているのだろうかと気になって、そちらに手を伸ばした。手探りでしばらく音のした方を撫でた。しかし何かが手に触れることは無かった。面倒になってまた布団の中に身を寄せた。
その瞬間、左耳のすぐ傍でコトンと音がした。驚いて飛び上がり即座に電気をつけた。白い蛍光灯がチカチカと光る。眩しさを感じた途端、右耳にコトン、という音が響いた。慌てて右を向くと次は左耳からコト、という音がした。
左を向くと両耳から何かが転がる音がした。姿の見えないその音に気が狂いそうになり頭を抑えて左右に振った。コトコトコト、カラカラカラ、コトコトコト、カラカラカラ、音は止まない。どれほど耳を強く塞いでもその音は頭の中を反響した。
どのくらいの時間が経っただろうか、突然音が止んでふたたび部屋は静まり返った。安心してため息をつき明日の事を思い出して布団に戻ろうかと思ったその時だった、自分の左手に何か小さな物がポロリと落ちた。
それは、血だらけの耳小骨だった。
コトコト、カラカラ
はじめは普通の幽霊モノにしようかと思ったが、書いてるうちに何故かこういうものになった。こういう状況は実際ありえないと思うが、ありえないようなことが理不尽に起こってしまうことがホラー作品の魅力であり、これはこれでホラーとしては許されるのではないかと思う(面白いかどうかや怖いかどうかは置いといて)。それとわざと読者の想像力に任せている部分が多い。この小説は一人称視点なのか三人称視点なのか分からないようにしてある。あと登場人物が女か男かも分からないように書いた。読者が自分と照らしあわせて考えてくれればそれが正しい読み方だ。もしかするとこの手法は間違っているのかもしれないが、実験的にやってみた。ちなみに実際の筆者も最近暑すぎて中々寝れない。私が今一番怖いのは熱帯夜である。