花が咲くまで
柔らかい土に水が浸みていく
白い足が土を踏む
微笑する種子に透明な光が落ちる
空の上に舟が在る
白い腕が伸びている
私は土の中で眠っていた
頬に水が落ちてくる
私の瞼は震えている
キリギリスが鳴いている
私は私の上で跳ねる白い足の感触に
身を委ねていたかった
舟のことは知っていた
そこから伸びる白い腕も
私の血液が土と同化する
土は沈黙を守りながら
私の血液を受け入れる
微笑する種子は私の唇を滑る
空には月が出ている
月の後ろに新しい星が出ている
白い足は立ち尽くしている
白い腕が伸びてくる
土に触れるところまで
種子は歓喜する
私は沈黙する
キリギリスは低く鳴く
水が私の背中に達する頃
私は漸く口を開く
1世紀越しに花が咲く
花が咲くまで