花が咲くまで

柔らかい土に水が浸みていく
白い足が土を踏む

微笑する種子に透明な光が落ちる

空の上に舟が在る
白い腕が伸びている

私は土の中で眠っていた
頬に水が落ちてくる

私の瞼は震えている
キリギリスが鳴いている

私は私の上で跳ねる白い足の感触に
身を委ねていたかった

舟のことは知っていた
そこから伸びる白い腕も

私の血液が土と同化する
土は沈黙を守りながら
私の血液を受け入れる

微笑する種子は私の唇を滑る

空には月が出ている
月の後ろに新しい星が出ている

白い足は立ち尽くしている
白い腕が伸びてくる

土に触れるところまで

種子は歓喜する
私は沈黙する

キリギリスは低く鳴く

水が私の背中に達する頃
私は漸く口を開く

1世紀越しに花が咲く

花が咲くまで

花が咲くまで

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-23

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