星みる鉄道
はるかなすばるをつかみとる
ぼくのみぎてはあおくひかる
甘いアベリアでくらくらり、
まなこだけが酩酊している
馬鹿みたいな入道雲だ
すこうし遠い、青空だ
思い出したいこと思い出すの、いつも
遅くなるのはなんでかな、なんでかな
十年前の笑顔に彩度はあるかな、まだ
歌うみたいな夢から声がなくなっても
いつだか修正しちゃった記憶のすみに
転がってるかな、楽しかった何かがさ
嘘みたいな夕暮れ時に
近くはなかった虹色だ
「ジョバンニ、さそりの心臓が燃えているよ」
雨降るまえの西の空には
鈍色の海が広がっている
五感のどれを持ち出せたのなら
いちばん楽しく飛び込めたかな
思い出しそうになる白檀の匂い
貰ったもののざんがいと一緒に
流そうか、からすうりみたいに
ここには居ない、なれなかった
「僕はきみにもザネリにも」
あぁ、そうだった
カムパネルラはどこだろう?
見えないのかい
見えるよ、見える
目を凝らして
瞬間を捉えられないのが宇宙線だ
カミオカンデの魔法にかかってみたかった
呟くのは卑怯だね
だってだって、
「僕だってそうだ」
何度灼かれたら分かるだろう
憧れていた超新星
けれどまだ、
飛べる粒子になれていない
あおいたんぼのわきみちに
いねのかおりがたちこめる
みなみのどせいをねめつけて
さきだつあかりをおいかけた
星みる鉄道