ある幽霊の独白

 僕は幽霊です。つい3日くらい前に自ら命を立った最低な男の幽霊です。「佐藤輝明(さとうてるあき)」というのが僕の「俗名」と呼ばれるものでした。そして、いま、ある人の御宅に向かっています。着くまでちょっと僕の話を聞いていただけますか?

 自分はこの世に生きていても仕方ないのでは、と僕は小さいころから思っていました。自分が生きているのは、自分のためにも、他人のためにも為らないと思っていました。
 もちろん、誰のせいでもありません。僕にこの世で生きる資格がなかっただけです。
 命を絶つことを無念だとは思いませんでした。もう、解放されたかったんで。肉体と魂が離れたときは、ホッとしました。
 本当の両親が殺されて、僕は親戚をたらいまわしにされ、学校にもろくに行かせてもらえす、食べ物をロクに与えてもらえず、殴られ、罵られ、いじめられ、僕は人間として扱ってもらったことは一度もありませんでした。
 たまらず家を出て、鉄工所で働きながら、厳しくも優しい社長に夜間中学に行かせてもらって、高等学校卒業程度認定試験(昔の大検)取得を目指していたのですが、3回失敗して、社長が病気でなくなり、鉄工所がつぶれてしまい、この不況で働き口はなくなり、疲れ果ててしまいました。お金も尽きてしまいました。助けてっていっても、役所でも、通行人も、ボクの周りにいる人は助けてくれませんでした。所詮、ボクの価値なんてこんなもんだったってことです。
 社長が幽霊になったばかりの僕にわざわざ会いにきてくれて、「俺が病気で死なんだらこんなことにならんかったのに、すまん」と一言謝られました。「四十九日後にまた極楽で酒でも飲もう」と言ってくれました。
 僕の葬式が一応執り行われたんですけど、たった一人しか参列者はいなかったです。
 その人は女の人で、夜間中学の同級生でした。名前を江藤睦美(えとうむつみ)といいます。学校のマドンナ的存在でした。彼女はイジメで不登校になり、働きながら大学を目指していました。彼女も両親をなくして一人で実家に暮らしているといっていました。彼女は僕にとても良くしてくれました。彼女の家に遊びに言ったこともあります。僕は彼女にあこがれていました。
 彼女は今大学に行っているそうです。本当に良かったと思っています。遺書に彼女宛に「幸せになってほしい」書いておいたくらいに、僕は彼女の幸せを今でも願っています。

 葬式のとき、彼女は僕の棺に向かってとっても変なことを言ったんです。泣きじゃくりながら、こう言ったんです。
「輝明君、ごめんなさい、ごめんなさい、私たち家族のせいで・・・。あなたが死んだのは私たち家族のせいなの、ごめんなさい、ごめんなさい・・・。私、幸せになんかなれない。」
 彼女が何でそんなことをいったのか、それが知りたくて、彼女の家に向かっているのです。

 そうでなければ、もう僕は極楽に向かっているところです。ちょっと気になるだけです。

 さあ、着きました。なかなか年季のある家ですね。築30年以上は経ってますね。それでは中に入りますか。まずは玄関から入って、居間に向かいましょう。もう、幽霊になってしまったので、扉をすり抜け、足音も立てずに、飛んでいけます。便利ですね。
小さな仏壇には彼女のご両親の遺影があります。彼女はご両親をとても愛しています。彼女自身もご両親にたっぷり愛情を受けて育ったそうです。15年前のある日、ご両親は事故で亡くなられたそうです。
 彼女が帰ってきたようです。雨が降っていたようですね。幽霊になった後、天気を気にしなくなりましたからね。
 彼女のぬれた髪の毛、うなじを見ると・・・。や、やめておきましょう。

 夕食、風呂と来て今は、もう寝る時間です。彼女の様子に不審な点は見当たりません。ちなみに風呂を覗いてなんかいませんからね。
この家にはさびしさもありますが、温かみも残っています。彼女が両親の愛されて育って、両親が亡くなったあとも、両親の愛情が残っているかのようです。僕もこんな家に生まれ育ちたかった。でも、後悔しても仕方ありませんね。
ん?彼女が僕の写真を仏壇に飾っているじゃないですか?ちゃんと額にはめて飾っているじゃないですか?
「ごめんなさい、ごめんなさい、許してください」
 彼女は僕に許しを請うています。彼女は僕に良くしてくれたはずなのに。
「キーちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい」
 キーちゃん?僕のことかなあ?僕のことなのでしょうね。
 実を言うと、僕には15年前、両親が死んでからの記憶しか残っていません。22歳で僕は死にましたから、7歳までのことが全く思い出せません。どうしても思い出せません。時々夢でそれらしきものを見るんですが、いい夢は一つも見たことがないんです。風景が赤いのが共通しています。何なんでしょう。
 彼女が寝ました。僕も寝る事にします。

 眼が覚めました。例の夢を見ました。とても悪い目覚めです。といっても、生きているときはずっといい目覚めなんてわからなかったですけどね。自殺して、魂になって初めての目覚めは最高の目覚めだったわけで。
 彼女が起きて、寝室から出てきました。なんか、一睡も出来てないような顔ですね。
 居間に入るなり、小さな仏壇のご両親の位牌に向かって何かつぶやいています。とても小さな声で聞き取りにくいです。
「お父さん、お母さん、もうすぐだね。あと、六日・・・。あれから15年・・・・・。でも、・・・キーちゃんになんて・・・・。キーちゃん・・・・・死んじゃったのよ」
 彼女は泣きながら、嗚咽がとまらなくなっています。
 どういうことなんでしょうか?ご両親が15年前になくなったことと、僕が命を絶ったことと何の関係があるんでしょう。全くわかりません。

 十分くらい経ったのに、睦美さんはまだ泣き続けてます。なきながら出かける支度をしています。朝ごはんも食べずに支度をしています。

 彼女が向かった先は、僕が命を絶ったビルの屋上です。死ぬときぐらいできるだけ楽に死にたかったので、屋上に上がって大量の睡眠薬をのんでふらふらになってビルから飛び降りました。そのとき、僕は鳥になったんです。最高の気分でした。

「ごめんなさい、ごめんなさい、・・・・・」
 彼女は念仏を唱えるように僕に謝り続けています。もう、二十分くらい言い続けています。雨に打たれてもやめる気配もありません。ピクリと動く気配すらありません。倒れちゃいますよ。
 どうして、こんなに謝り続けなくてはいけないんでしょう?僕と彼女との間に何があるというのでしょう?
 もう一つ、気になっていることがあるんです。それは朝彼女が仏壇の前でつぶやいた「あと六日」という言葉です。普通、わざわざ「命日まであと六日」って言いませんよね。
 彼女がやっと現場から離れていきます。家へ帰っていきます。

 閻魔様からお達しが来ました。「六日以内にわしの所に来ないとお前は成仏すらできんぞ」って。
僕に残された時間は彼女の両親の命日までということになりました。別にこの世には未練がないので今すぐ昇っていっていいんだけど、彼女には幸せになってほしいし、彼女が何でこんなに苦しんでいるのかがわからないと昇ってゆくことなんてできません。
 そうはいっても、何から調べればいいんでしょうか?とにかく彼女の家をしらみつぶしに調べてみるしかないでしょうね。明日から、探しましょう。

 手がかりを探し始めてから六日たちました。彼女の両親の命日で、極楽へ行くためには今日何とかしなくてはいけません。
 彼女の部屋以外は探しました。何も見つからなかった。もう、彼女の部屋を探すしかない。今まで憚られてきたけど、もう、探すしかない。

 そういえば、また例の夢を見ました。でも、今までとは違うんです。温かみを感じたんです。男女が二人倒れているのがはっきり見えたんです。いったい、何なのでしょう。

 彼女が部屋から出てきました。喪服です。顔色がとても悪いです。眠れなかったのでしょうか?それでは入れ替わりに調べましょう。

 彼女の部屋に入りました。まず押入れから調べてみましょう。
 ごそごそごそ。ん?布団をのけたらその下は土がかぶっているぞ。穴だ、穴が開いている。かすかに、血のにおいがする。箱だ、大きめの木の箱。
 ぱかっ。おびただしい血のついた服二着と、ペンダントと、写真だ。
 服は男物と女物で血以外にとても嫌な臭いが混ざっている。欲望とか暴力的なものを感じる。
 ペンダントはハート型ですね。裏には、何か刻んであるぞ。ん、「さとうてるあきからえとうむつみさんへ」。さとうてるあきって僕と同じでえとうむつみって彼女と同じでけど、たまたまだよね。
 写真を見てみよう、工場の前に家族が二組並んで移っています。工場の名前は「江藤製作所」ですね。この小さな女の子が睦美さんか。かわいいな。
 ん?もう一方の家族の小さな男の子、僕によく似てる。ん!?この首のアザは僕のと一緒じゃないか!?ということは、この男の子は僕?
裏には、名前が書いてある。まちがいない、この男の子はボクだ。ということは、このペンダントは僕が睦実さんにあげた物?僕と睦美さんは夜間中学以前から接点があったということか?あ、頭が痛い・・・・・。何か、思い出せそうなんだけど、何かが邪魔してる。

 もう一つ調べてない場所がありました。仏壇です。位牌をちゃんと調べていなかった。
 ぱかっ。中に紙が入っている。
「十五年後の今日、墓で又三人で会おう。愛する睦美の両親より。平成×年八月×日」
 え?睦美さんの両親が生きてるってこと?
彼女はもう、出かけてるな。ということは、彼女は両親に会いにいったって事?
 どうしよう、彼女のにおいを辿っていくしかない。犬みたいだけど、仕方がない。

 はあ、
 はあ、
 はあ、
 彼女のかすかなにおいを犬のようにかいでいったら、今海のほうへ向かう電車に乗れました。ん?これは僕の本当の両親の墓へ向かうときに乗った電車じゃないか?一回だけ親戚にお寺の場所を教えてもらって、鉄工所の社長と言った時に乗ったのと同じ電車じゃないか!車窓もあの時と同じだ。
 忘れるわけがない、親切なご住職が「本当は、ご両親は殺されたんです」って教えてくれたんだから。ずっと事故で死んだときかされていたから。聞かされたとき不思議と犯人に対する憎しみが込み上げてくることはなかった。罪を償ってくれればそれでいいと思った。
彼女が電車を降ります。あの寺に行ったときと同じ駅です。寺への道を辿っていきます。間違いない、彼女はボクの本当の両親の墓にある寺に向かっている!ご住職が教えてもらってすぐ僕は警察にすぐに行ったら両親は本当に殺されていて鋭意捜査中って言っていた。そして時効は今年の八月・・・。今日だ、今日だよ。時効は。どういうことなんだ。どうして彼女は今日この日にボクの両親の墓へ向かってるんだ。どうして彼女は自分の両親にそこで会うんだ?
 まあ、寺につけばすべてわかるだろう・・・。

 寺に着きました。写真にあった彼女の両親です。ボクの両親の墓の前です。写真より年輪が刻まれた顔をしています。いや、この顔は相当苦労を重ねているって感じですね。

「久しぶりね、むっちゃん」
「お母さん」
 彼女は母親と抱き合っています。父親が方にそっと手を添えています。
「父さんと、母さんはこれから自首しようと思う。きちっと罪を償おうと思う。もう、疲れたし、キーちゃんが死んでしまったことを聞いて、罪の大きさを知った。お前にもとても苦労をかけた。許してくれとはいわん」
 彼女は泣き崩れてしまいました。
「ねぇ、何で二人を殺したの?キーちゃんはあのあと、どれだけ苦しんだかわかる?」
「では、あのまま殺してなかったらキーちゃんは幸せになったか?母さんの恨みはどうなる。もう、殺すしかなかったんだよ」
「・・・・」
「凶器は持ってきたか?」
 彼女はおもむろにバッグに手を入れて、布に包まれた凶器らしきものを取り出しました。
布を取って、凶器の包丁が二つ出てきました。二つの包丁、鈍い光・・。う、う、う、あああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。

 僕はすべてを思い出しました。
 僕は睦美さん=むっちゃんと幼馴染です。家族ぐるみで付き合いがありました。僕は輝明からみんなに「キーちゃん」と呼ばれていました。僕はむっちゃんの両親をおじさん、おばさんと呼んでいました。
ボクの父親は一代で財を成した企業家でボクの家は裕福でした。近所ではうらやましがられるほどの家庭だったようです。

 表向きはね。

 僕の「両親」は鬼畜でした。僕にありとあらゆる虐待を加えました。体の傷は親戚に加えられたものより多いです。何度も死にそうになりました。今なら間違いなく逮捕されているレベルです。
 男の鬼の方はは高利貸しをしてたくさんの人を苦しめていました。
「この二人には殺すには足りない恨みがある。この2つの包丁でめったざしにしても足りない恨みがある。あの男は工場が傾いた私に金を貸してやるといって、母さんを家政婦として持っていった。タダ同然で働かされたばかりじゃなく、あの女にひどく殴られ、ののしられた。そればかりじゃない、あの女は債権をやみ金に売り飛ばそうとしていた。挙句の果てに、あの男は母さんを性奴隷にした。母さんは毎日あの男に体をささげさせられた」
 おばさんが、泣き崩れて立てなくなっています。おじさんのいうとおりなのです。アレは地獄でした。なんてひどいことをするんだと子供ながらに思いました。奴らの被害者はボクで十分なのに。
「それに、それに、母さんがキーちゃんの裸を見たとき、虐待のあとがあった。ひどい傷だった。」 
それをとがめようとしたら、奴らからとんでもないことを聞いてしまったんだ」
「とんでもないこと?」
「キーちゃんはもともと孤児で奴ら自身がおもちゃにするために養子にしたと。キーちゃんの虐待をとがめたら奴らはニヤついた顔でそういったんだ。もう、殺さなければ、私たちもキーちゃんも奴らに・・・・・」
 おじさんの言うとおりです。おじさんは知らないだろうけど、僕は家で奴らにおもちゃと呼ばれ、もらわれた理由も何べんも聞かされていました。奴らはついに僕を名前で呼ぶことは無かった。奴らが死んでくれることが僕の唯一つの願い事だった。
「そんな・・・、ひどい。でも、キーちゃんには謝って欲しい。私たちのせいでキーちゃんはもっと苦しむことになったんだから」
「そのつもりだよ。キーちゃんには申し訳ないことをした。」
おばさんもうなずいています。

 謝らなくていいのに。そんなに苦しまなくてもいいのに。おじさんとおばさんは僕を救ってくれました。僕の裸を見たとき、「もうちょっと我慢すれば、きっと幸せになれる」とおばさんは言ってくれました。もう、そのときには奴らを殺す決心をしていたようです。
 おじさんとおばさんにとって計算外だったのは僕が殺人現場に居合わせたことです。その時あの二つの包丁が今のように鈍く光っていました。僕は凄惨な現場に気絶してしまいました。
でも、僕は殺されませんでした。

「キーちゃんが証言してつかまってもいいと思った。でも、幸か不幸か彼は記憶をなくしたことを新聞で知った。私たちはお前を殺人犯の娘にしたくなくて逃げた。でも、それはいいわけだ。結局自分達がかわいかったんだ」

「そんなことは無いわ。二人が捕まったら彼女はどれだけ肩身の狭い思いをしたでしょう。二人が死んだことにして逃げ続けた十五年間はわたしにとってとても尊いものだった。私はとっても幸せだった。実を言うと二人に会うまでは憎らしかった。でも、二人の姿を見て憎しみなんて吹っ飛んでしまったわ」

「輝明君の遺骨です」
 ご住職が僕の遺骨を持ってきました。僕は自分の遺骨に行方に全く興味が無く、遺書でも何も言わなかった。どうすればいいのか分からなかったのでご住職のところに着たんでしょう。
「キーちゃん、すまなかった、すまなかった」
 おじさんもおばさんもむっちゃんもすすり泣いて僕に謝ってくれています。むしろ僕が謝らなくてはいけません。僕がお礼を言わなくちゃいけない。奴らを殺してくれたばかりか、忌まわしい記憶を封印してくれた。あのあとの人生はとても苦しかったけど、それは二人のせいじゃない、僕の運命だ。死んでしまったのは僕が弱い人間だったからだ。自然の摂理だったんだ。

 でも、幽霊の僕ではそれを伝えるすべが無い。もどかしい。

「さあ、行こう。警察に」
 このままでは二人が自首してしまう。僕は二人に自首させたくない。もう、罪は償った。いや、二人に罪なんて無い。全部奴らが悪いんだ!

 三人がタクシーに乗ります。警察に向かうようです。僕もついていきましょう。
三人は無言です。三人とも互いの思いが分かっているようです。でも、このまま二人が自首すれば、親子三人は長い間会えなくなります。三人はその覚悟は出来ているようです。僕は胸が張り裂けそうです。
ん?対向車のトラックがカーブをはみ出してきた!
「きゃーーーーっ!!!!」

 あれから一日が経ちました。運転手とむっちゃんしか助かりませんでした。おじさんとおばさんはむっちゃんをかばって命を落としたのです。
 むっちゃんはまだ目を覚ましていません。おじさんとおばさんが死んだことを知りません。

 今幽霊となったおじさんとおばさんが僕の隣にいます。
「キーちゃん、本当に成仏しなくていいのかい?私たちは成仏してもいいのかい?」
「それは、さっき行ったとおりだよ、おじさん。おじさんとおばさんは僕の恩人だから。極楽へ行って いいんだよ。奴らは地獄だろうから会うことも無いだろうし。何も憂いは無いはずだよ」
「キーちゃん、ほんとにいいの?後悔しない?」
「おばさん、僕がむっちゃんを守ることで初めてこの世を自分を生きられるような気がするんだ。僕は生きるために死んだんだよ。すべて僕の運命だったんだ。こうなる運命だったんだ。成仏できなくなるなんて痛くもかゆくも無い。むっちゃんを見守ることが出来るんだ、後悔するわけがないよ。おじさんとおばさんの思いはしっかり伝えるつもりだよ。どうやら、生きている人に出てゆけそうだし」
「ありがとう。じゃ、私たちは閻魔様に会いに行くよ。地獄に行くことも覚悟してる」
「おじさん、おばさんこれをもって行って。陳情書だよ。僕は奴らを殺してくれて感謝しているってことを書いたから。二人が極楽に行ける事を祈っているよ。僕が子供のとき味方になってくれたのはおじさんとおばさんとむっちゃんだけだったよ。ありがとう」
「何から何まで、ありがとう、ありがとう・・・・」
二人に笑顔が戻りました。本当によかった。
「それではさようなら。キーちゃんに幸あれ!」
おじさんとおばさんが指を立てて僕に最大限の笑顔を向けて天に昇っていきます。僕が小さいころ、よくこれをして僕を励ましてくれました。おじさん、おばさん、本当にありがとう。

 さて、むっちゃんに僕の思い、おじさんの思い、おばさんの思いを伝えなくてはいけません。伝えなければ、彼女は生きていけなくなるでしょう。僕の「初仕事」です。

 僕は今、生まれて初めて幸せを感じています。むっちゃん、ありがとう。(完)

註1:2012年8月28日加筆修正。
註2:2012年8月29日加筆修正。

ある幽霊の独白

ある幽霊の独白

不幸な人生に自ら幕を下ろし幽霊になった一人の男。この世に未練は無かったはずだった。しかし、一人の女性の存在が彼の「幽霊人生」を一気に変えてしまう。

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  • 青年向け
更新日
登録日
2012-08-26

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