りくぼ
ゆる〜くりくぼの内容を短編で書き散らす
くさいろとくれない
side なし
ガラッ
「しつれーしまーす」
保健室のドアを開けた真咲は、スタスタと迷うことなく一番奥のベッドに近づき、カーテンを勢いよく開ける。
「うわっ…何」
「何?じゃねーよ!呼び出したのお前だろ?!」
遡ること15分前。
真咲の携帯に '保健室。5分後。' と端的なメールが届いた。
差出人は、草歌部宙。
「5分後って言ったのに…」
「無理だろ?!どう考えても無理!」
下から睨みつけるように見上げてくる宙は、今にも真咲を殴り飛ばしそうだ。
「で?」
「ん?」
「いや、呼び出したんなら、何か用あるんだろ?なに?」
「いや…別に何も?」
「理由なく呼び出したのかよ?!」
「…理由なきゃダメなの?」
「当たり前だろ?!俺をお前のなんだと「理由、なきゃ、ダメ?」」
「っ…」
言葉に詰まったのは、宙が、勢いよく真咲の手を引いて、ベッドの上に座らせたからだ。
顔が近い。
真咲はその綺麗過ぎる顔を真っ赤に染めて、俯いた。いつもは強気な真咲だが、こうなるとめっぽう弱い。
「いや…だから、っあの…」
「…なに?」
前髪が伸びて、髪の隙間から宙の目がこちらを見ている。
「…ずるい奴だな」
「何が?」
「分かってんだろ?」
「言葉にしなきゃ分かんないなあ」
真咲が今して欲しいこと、分かっているはずなのに、言うまで絶対に答えをくれない。
たまには分かれよ、と宙の服の袖をきゅ、と握っても、宙は首を縦に振らない。
…嗚呼、コイツは。
「…しろよ」
「してくださいでしょ」
「…な、「はい、してください、せーの」」
「し、て、ください」
いつもいつも、言わされてばっかりな真咲が、どうしてこんなに素直なのか。
それは、
「よく出来ました」
そう言ってふわりと笑う宙の顔が、あまりにも優しいから。
そっと真咲が目を閉じたのと同時に、
一番奥のベッドの上、カーテンの中の影が、重なった。
おしまい
きいろとみずいろ
side なし
「そんじゃあ乾杯〜!!!!」
「うえーい!!!」
とある会社の飲み会。
元々居た席なんてわからなくなるぐらい、みんな揉みくちゃになって大騒ぎ。
「…なあ、光黄君、寄ってる?」
「え〜?酔ってなァいよ〜健ちゃん〜」
「いや、いやいや、酔ってるよな?顔真っ赤やで!目が!目が座ってんで?!」
大部屋の端っこで、光黄が健水にじわじわと近づく。
健水は焦ったように、光黄を押し返すが、全くなびかない。
「健ちゃん〜かっこいいねえ〜」
「な、にを言うてんのや!コラ!目!を!あ!け!ろ!」
「何だよお前ら〜またイチャイチャしてんのか?ほんっとラブラブだよなあ」
「何言ってんしゅか…そんらろ…あたりまえ…」
「光黄くん、呂律回ってないで…」
先輩達がわらわらと集まってきて、完全に弄りモードの顔だ。
こうなってしまうと、中々逃がしてもらえない。
困った…と、健水が眉を垂れさせる。
「健ちゃん〜かえろうよ〜おれかえってゲームするぅ…」
「その調子でゲームはできひんけど…帰ろか」
「帰んのか〜?!つまんねー!」
「うるさいうるさーい!こんな状態の光黄くんずっとここに置いとけるかァ!!!!」
光黄を背中に背負って、荷物も全部持って大部屋を出る。
「気ぃつけろよ〜」「おつかれ〜」「また来週な〜」
「失礼します」
ペコ、と頭を下げ、ドアを閉める。
…
「ねえねえ、健ちゃん〜、ふふ、ほっぺ、ふにふにだね」
「…飲みすぎやで光黄くん」
「へへ、楽しくなっちゃって〜」
大の男が、男を背負って、ゆっくり、ゆっくりと、家までの坂を登る。
「…なあ、光黄くん」
「なあにぃ?」
「……ずっと、一緒におってな?」
「…」
「光黄くん?」
「…ふふ、当たり前でしょ」
「…?」
ぎゅ、と肩を掴む手に力がこもる。
さっきとは打って変わって、ちゃんと舌も回っている。
「光黄くん、まさか…酔ってたのって…」
「嘘だよ!バーカ!!!」
「バカって…うわぁ!!!」
健水の背中から勢いよく飛び降りる光黄。
その衝撃で、健水は、尻餅をついた。
「危ないやろ?!?!てか、なん、こら?!先々いくなよ!」
「ふふ、ずっと一緒に、ね?」
「っ…やめろー!!」
「辞めろよ追い掛けてくんな…!ははは!」
深夜の静かな街の空に、ふたりの笑い声が響き渡った。そんな夜。
きいろとみずいろ Ⅱ
「それ、ほんまか?」
「嘘じゃないですよ、健水くん!!!光黄くん、事故にあったって…!!!」
「嘘やろ、おいおい今日は11月やで?エイプリルフールはまだ…」
「そんなこと言うてる場合ちゃいます、早う来てください。○△病院です。」
ツーッツーッ
スマホの中から聞こえる通話の切れた音が、やけに冷たく感じる。
だって、さっきまで、さっきまで、俺は光黄くんと電話してて。
『仕事終わったら、二人でご飯行こうよ』
って、光黄くん、嬉しそうに笑っててん。なのに、なんで?
震える足を動かして、俺は病院へと向かう。
走っている間中も、光黄くんの笑顔が頭から離れなくて、やっぱり俺は、来音のちょっとタチの悪いいたずらだと、思い込んでいた。
「健水くん…っ」
病院について、受け付けのお姉さんに案内されるがまま、手術室の前までやってきたら、来音が到着していて、椅子に座っていた。
相当泣いたのだろう、鼻が真っ赤で、真ん丸な目から、まだまだ涙があふれてきそうだ。
この顔を見てもまだ、俺はこれが現実だと信じられなかった。
ガタンッ
大きな音が響き、扉が開く。
先生が出てきて、
「手術は成功しました。意識が戻るかどうかは、まだ…」
と、お辞儀をして、去って行った。
「そんな…」
来音は肩を落とし、また、泣き始めた。
ガチャン…
手術室から、光黄くんが出てくる。
きれいな顔。頭に巻かれた包帯。小さな顔を半分以上覆う酸素マスク。
「光黄くん…?」
俺はふらふらと光黄くんに近寄り、そのまま病室までついて行った。
ベッドの横に座り、光黄くんの顔を見る。ピッ…ピッ、と、機械の音だけが部屋に響く。
来音は、外の空気を吸いたいと、外に出て行った。また泣くんだろうか。慰めてやらなあかんな…
「なあ光黄くん…?いつまで寝てんの?今日、一緒ごはん行くんやろ?さっき約束、したやん…はよ起きて、お酒飲んで、ゲームして…いつも、みた、い、に…」
ぽたぽたと流れ落ちる水分は、
嗚呼、俺泣いてんのか。胸がナイフで切り付けられたみたいに痛い。痛くて痛くて、心臓が止まりそうや。
あの笑顔に、もう会えんかもしれんなんて、思いたくない。
「光黄くん、…光黄くん!!!!!なあって!!!俺、まだまだ光黄くんと見たい景色があるんやって!!!武道館に立つんやろ?!?!なあ!!!一緒にあの大きな舞台で、歌うって、約束したやんか!!!」
声を張り上げても、光黄くんは目を開けない。きれいな顔をして、穏やかに、眠っている。
俺の元気な体、あげるから、お願いやから…
「目、覚ましてや…」
続く
きいろとみずいろ Ⅱ‐②
「お疲れ様でした~」
「お疲れ!」
「健水くん、今日も行くんですか?」
来音が心配そうに話しかけてくる。
そう、あの事故から、もう一週間が経った。光黄くんは、目を覚まさない。
俺は毎日、光黄くんのところへ行って、話しかけて、
朝が来たら、仕事に戻る。そんな力の抜けた日々を送っていた。
「行くに決まってるやん。光黄くんさみしがるやろ?」
ニコッと笑いかけると、来音の顔がくしゃっと歪んだ。
「そんなこと言っても…健水くん、寝てないんですよね?クマが出来てるし、顔色も悪いですよ。今日は帰って寝てください。」
俺が看ますから、と肩に手を置く。
「大丈夫やって。俺は平気。光黄くんが戦ってんのに、俺が寝られんやろ?」
ありがとな、と頭を撫で、俺は楽屋を出る。
病院までのバスの中での時間や、病室までの道のりは、すべて無機質だった。
なにも含んでいないような、色もない、においも、音も。
俺はあの日から、いろんなものが見えなくなってしまっていた。
「ご心配をおかけして、申し訳ございませんでした。」
俺は、この一週間、涙を流すファンのみんなに、たくさんたくさん謝った。
光黄くん、なにしてんねん。
こんなにたくさんの女の子が、光黄くんの帰りを待ってんのに。
「…いつまで寝とんねん。はよ目覚ましや。」
俺は今日も、光黄くんに語りかける。
「今日は、宙が変なことばっかりしてなあ、怜生のこと、ずっと追いかけまわしてん。」
それで、
「来音がうるさーい!!って、怒ってな、またみんなで楽屋走り回ってんの。アホやろ?」
乾いた笑しか出ないけれど、一生懸命笑顔を作る。
「俺もあれは面白かった…けど、けどなあ」
涙があふれる。どんなに楽しくても、うれしくても、
「光黄くんがおらんと、なんや、心から楽しいって、思われへんねん…」
光黄くんの手を握り締めて、俺は言葉を紡ぐ。
「光黄くん、俺、光黄くんのこと、ずーっと見てる。先輩やって思って、緊張してたあの頃から、肩を並べて歩いてる今まで、ずっと」
「どんどん格好良くて、おっきくなっていく光黄くんの背中を、尊敬する先輩の背中を、いつだって俺は支えたいって思ってて、でもそれは、」
それは。
「建前で、…光黄くんのことが、好きだから。近くで、一番近くで見てたいから。支えたいんや。」
「前に光黄くん、俺に聞いたよな?何でそんなに優しいんだよって…そんなん決まってる、惚れた相手やから。光黄くんだからやねんで?」
光黄くんの笑顔が見られるなら、俺はなんだってする。アホな漫才だってするし、一緒にステージに立って、ファンの皆を幸せにする。
ほんまになんだってするから、お願いやから、
「目、開けてくれや…俺のために、なあ、光黄くん……」
手を強く握りしめて、俺は光黄くんの横たわるベッドに突っ伏す。
「…」
その瞬間だった。
「ん、ちゃ…」
「こ、うきく…?」
手が、光黄くんの手が、俺の手を、そっと握り返した。
「健ちゃ…ん、」
うっすらと目を開けて、俺を見る。
「光黄くん!!!光黄くん!!!!!わかるか?!?!?俺、俺!!健水やで!!」
「…わかる、よ…健ちゃん、泣いてる…?」
俺の頬に手を伸ばして、ふ、と笑う光黄くん。俺の大好きな光黄くんの笑顔。
「うっさい、泣いてへんわ…!ちょ、このまま待っときや!」
俺は病室を飛び出して、先生を呼びに行く。
スマホを取り出して、メンバーにもLINEを送る。
”光黄くん、目、覚ました!!!”
よかった、よかった。
嗚呼もう、こんな時でも俺は、
「ほんっまに泣き虫やなあ」
あふれ出る涙をぬぐって、先生の所へ飛び込んで、泣きながら先生に目が覚めたと伝えて、そしたら、俺は、
意識が、プツンと途絶えてしもた。
…
……
「…あれ、ここ…」
目を覚ますと俺は、ベッドの上にいた。
「起きたの?」
横から、大好きな声が聞こえた。
「っ光黄くん?」
「おはよう、よく寝てたね。」
「俺、寝てたんか…」
「一週間ずっと寝てなかったんだって?ほんと、バカだねえ…」
くすくすと光黄くんが笑う。笑いごとちゃうわ…ほんま、その原因の光黄くんが笑うなんて、失礼な話やで…
「でも、ありがとうね。俺、嬉しかったよ。」
「…ほんまやで、こんなん、もう二度とゴメンや。」
嬉しい反面、照れ隠しで顔を背けてしまう。
「夢の中で、健ちゃんが俺の手を引っ張るから、なに?って言ったら、行かんといてくれって泣くから、戻ってきた。」
穏やかな声が聞こえて、俺は思わず光黄くんの顔を見る。
「…そうなん…や」
「うん、ねえ、健ちゃん、また一緒に、頑張ろうね。」
「…当たり前や。」
俺は久しぶりに心から笑えた気がして、また泣いた。
この先何があっても、光黄くんの隣におる。ほんで、この笑顔をずっと守り続ける。
泣いている俺を見て、困ったように笑う光黄くんの横に腰かけて、俺はそっとつぶやいた。
「なあ、光黄くん?」
「なあに?」
「俺な、光黄くんのことが…ずっと、好きやった。」
終わり
みずいろとおれんじ
SIDE 橙
「アンタなんて産むんじゃなかった!!!!」
「アンタがいるから私は…」
「近寄らないで!この…疫病神!!!」
「来音なんて…」
何度も何度も俺に浴びせられた罵声は、いつしか俺の心をボロ雑巾みたいにズタズタにした。
俺が産まれてから16年。
今日、16歳になった俺は、母親に捨てられた。
俺がいるから、カレシが出て行ってしまったらしい。
母さんは、俺を産んですぐに離婚、女手一つで俺を育ててくれた。
笑顔が素敵で、優しい、どこに行っても自慢の母さんだった。
でも、6年前、10歳の時、母さんは変わった。
新しいカレシが出来て、そいつにしか興味がなくなった。
働いた金は全部そいつに渡して、俺には食事もまともに与えてくれなかった。
借金を抱えて帰ってくる男に、母さんは「私がいないと何もできない」と言っていた。
一か月前、俺は熱を出してしまって、母さんとカレシが出かける予定がダメになった。
「やっぱ駄目だな、ガキがいると。」
寝込んでいる俺を見下ろして、あいつはそう言い放った。
「待って…イヤ!行かないで!」
俺の顔を見向きもせず、母さんは男を追いかけた。
それから一か月、母さんは、帰ってこなかった。
そして、今日、住んでいたアパートを引き払ったと、大家に言われた。
俺の帰る家は、なくなった。
今日は雨だ。寒い。限界まで学校に居座るつもりだったけど、さすがに20時を回ると警備員に追い出された。
傘、忘れた…
みるみる濡れていく制服。
「洗濯せんとなあ…、どこで…」
帰る家がないから、洗濯もできなかったんだった。
もう…どうにでもなれ…
諦めて、俺はその場に座り込んだ。待ち行く人たちが、俺のことを可哀想なものを見る目で見る。
このまま何も食べるものがなくて、死ぬんかな…
雨に打たれながら、俺は目を閉じた。
「おーいちびっ子?そこで何しとんの?」
「…は?」
「お、起きた。死んどんかと思ったわ」
目を開けるとそこには、背の高い、青色のかかった目をした男が立っていた。
凄く、きれいな男だった。
俺に降り注いでいたはずの雨は、男の持つ傘で、遮られていた。
「腹…減ってん…なんか食いたい…」
「お~お~…そしたらウチ来るか?今から飯作ろう思ってたから!」
「ええの…?」
「ええよ!来たらいい。あったまって、おいしいごはん食べようや」
男の笑顔に安心して、俺は意識がプツンと途切れた。
…
………
────────暖かい風が、顔に当たっている。
いいにおいがする。
俺、寝てたん…?
目をうっすら開けると、目の前にさっき会った男の顔があった。
「お、起きた?ごめんなあ、びしょ濡れやったから、お風呂入れてもーた。」
前に向けていた視線を、下におろすと、濡れていた制服ではなく、半袖短パンに着替えていた。
今は、髪を乾かしてくれてたらしい。
「あ…りがと。」
「ええよ!ほら乾いた、すっごい天パなんやなあ!」
「うっさい…」
俺の髪をクルクルと指で遊びながら、楽しそうにそいつは笑った。
「飯も出来てるから、食べようや~」
さっきから香るいいにおいは、ご飯のにおいだったらしい。
テーブルに連れて行かれて、椅子に座る。
目の前に置かれた、ハンバーグ、スープ、白米、サラダ。
まともな食事、何年ぶりやろか…
キラキラした食事に涙が出た。
止まらんかった。
「泣くほど美味そうか~!はよ食いや、冷めるで?」
「…ッ食う…いただき「あ、待ち」
目を見開いて、彼を見る。
「一緒にするやろ?はい、せーの」
「「いただきます」」
手を合わせそういうと、目の前に広がる優しい笑顔に、また涙が溢れた。
泣きながらご飯をほおばる俺の頭を、こいつはずっと撫でていた。
聞きたいことは山ほどあるはずやのに、なんも聞かんと、
おかわりもあるからな、いっぱいいっぱい食べて、大きくなるんやで。
って、ずっと、撫でていた。
…つづく…かも?
しろときいろ
side しろ
──────────突然やけど、俺は、ある男に片思いをしている。
「りょーまくん、明日遊ぼうよ~」
「嫌やって言うてるやろ…明日は部活やって言ってる」
「部活の後とかさあ…」
そう、この男…瀬斗光黄
すごくきれいな顔立ちとは裏腹に人懐っこいというか…なんというか
「あ、手振ってくれてる~」
女の子たちが手振ってるの見つけて、さわやかな笑顔で振りかえす。
「…ほんっま人たらし…」
ぼそっとつぶやき、顔を背ける。
顔がきれいで、気取らない性格の光黄くんは、めちゃくちゃモテる。
来るもの拒まずって感じで、近寄ってくる女の子たち皆に優しい。
でも、誰とも付き合わない。
「光黄くん、彼女作ればええんじゃないですか?」
なんて、思ってもないことを言う。
そうだね、とか言われたら立ち直れんくせにほんま、俺はアホや。
ぽんぽんと思ってもないことが口から出てくる天才かもしれない。
「光黄くんに彼女が出来ればなあ…俺にこうやってひっつくこともなくなるのに~~」
「俺、彼女いらないんだ~、好きな人いるから☆」
…この男は。本当に星が飛んでるような喋り方をするから、絶対に嘘をついている
「ふーん誰なんですかー」
「うわ!!!!興味なさそ~」
「ないです。」
「も~…好きなのはりょーまくんだよ」
…
……
「は?」
時間が止まったみたいやった。
全部の景色がスローモーションに見えて、俺は、光黄くんしか見えなくなった。
「…なーんてね!」
「嘘かい!めっちゃ考えてしまったやろ!」
「え~可愛い~」
「うるさい!もーあっち行けや~」
光黄くんの背中をぐいぐいと押す。
一瞬、本当だったら、なんて夢を見た。
光黄くんも俺を好きで、…手を繋いだり、抱きしめたり…キスをしたり…
そんなことが、叶うわけがないのに。
目頭がツン、と熱くなる。あかん。これは…
「りょーまくん、泣いてる?」
「泣いてませ~ん、はよあっち行ってください。」
「ねえってば。こっち見て。」
「うっさいはよ、行けって…?!」
視界が真っ暗になった。
光黄くんのにおいに包まれる。
「何してん…」
「ごめんね、ほんとは、うそっていうのがウソ」
抱きしめられていることで頭がいっぱいで、俺は光黄くんの言葉に頭が追い付かへんかった。
「嘘がウソって…なに?」
「だから…好きだってことだよ!!!!」
「誰を?」
「りょーまくんを!!!!!!!!」
「嘘や…」
「ほんとだよ…あんなに毎日休憩時間とかに会いに行って、好き好きアピールしてるのに、全然気づいてくれないし…」
だからちょっと意地悪したんだけど、まさか泣くとは思わなかった、と光黄くんが困ったように笑う。
「勘弁してやホンマ…」
俺は、涙がまたあふれた。
「今日はよく泣くねえ…」
クスクス笑いながら、俺を強く抱き締める。
「誰のせいやと思って…ホンマ最悪…でも、」
「…でも?」
耳元に口を寄せてつぶやいたのは、
「俺もめっちゃ好き。」
おわり
(やばい思った以上に語彙力とストーリー力がないリクエストしてくれた人ごめんなさいこれはちょっとあれ?ダメ?笑)
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