切断
いざ入ってみると
セピアの空間に眩暈がし
唐突に眼球が転げ落ちた
それを追いかけ
非常階段の扉を開けた
そこにはステンレス製のキッチンが
待ち構えており
ギラつく果物ナイフが
晩餐を完成させるシナリオを書きかけていた
白い巨塔に期待していた私は
劉禅足下のエコノミスト
変則拍子で喉を鳴らし
ブラジル犬の帰りを待つ
「PPL」などというものは
薬剤師の作った勝手な図面の産物
既にガラス瓶に収まった眼球は
3度その身を震わせ 安定した
北緯23度線のレパード宣言
オランザピンの事前誤爆
バロック剣尖の先端管理
汁を塗り込むZ3Aギア
8針の激痛と2度の落下
壊れたシステムNo17
鉛の駱駝の半身メレーナ
寺院に向かうスペイン道路
銃弾をその身に浴びながらその存在は
己の存在を安全帯で証明する
幾重にも囲まれたコンクリートのキューブの中で
かつての独裁者は
ハイジとともに踊り出す
レバーを引き
冷蔵庫にしまっておいた馬を取り出すと
その片脚を丁寧に刻み オイルに浸した
そして「これで満足なのか?」
といわんばかりに 上目使いでこちらを睨み
鉄の焼ける匂いに酔いしれながら
メーターの調整を始めた
私の片目はその間にも
ガラス瓶の眼球を観察し
いずれは元に戻るであろう瞬間を待ち侘びた
パネルに頬を擦りつけ
ドリルを構える練炭技術者
蛇口から湧き出すオイルに
歓喜の声をあげ
この巨塔の所有者の
最終決裁に身を委ねている
11月のポット
中央に先ほどから現れた赤い箱
それが所有者の意思であるならば
疑う余地も無いと
巨塔はこれからもこの先も永遠に
オレンジ色の光を放ちながら
ここにこうして建っているのだろう
切断