人間嫌悪

やんでる妹の話です、あまり万人受けしない話なので気分を害される場合があります

人間嫌悪


僕の双子の妹は、典型的な「出来た人間」である
外見良し性格良し頭も運動神経も人付き合いも、何から何まで完璧で、異性からは勿論のこと同姓からもかなり高評価

まさに、誰もが憧れるであろう人間

対する、一応アイツの双子の兄である僕は全てに置いて平均的、特に秀でたところは無い普通の中学3年生である
まぁ、僕たちは漫画や小説でよくある『対照的な双子』だった

親は妹ばかりに興味を持ち僕は基本放置状態
別にそのことについてとやかく思ったことは無い。構われても疎ましいだけだと分かっているからだ

だけど周りから妹と一々見比べられるのは凄く嫌いだ


双子なのに、どうして妹ばかり、兄はあんなにも出来損ないで


教師、クラスメイト、親戚、親、近所の人、僕を見かける度に皆そう囁いて馬鹿にする



うるさいうるさいあーうるさい

どうして僕じゃ駄目なんだ
妹と一緒じゃないと駄目なのか
双子だからって、一緒じゃないと、いけないのだろうか


分からない、分かんない・・・分かりたくもない

だから僕は考えることを放置した
頭の良くない僕の考えなんてどうせ無駄でしかないから

昔に比べて感情も薄れた

喋る回数も減ったんじゃないだろうか



アイツの顔だって、いつから見てないだろう






家に着く、そこそこでかい、普通の家
「ただいま」も言わなくなった。言ってもどうせ返ってこないし
揃えられた靴達に逆らうようにして乱暴に靴を脱ぐ
どうせ、誰も何も言わない

アイツが揃えてなければ親は注意をするんだろうな
アイツが揃えないことなんて無いんだろうけど


飲み物を取りに行く為にリビングへと続く扉を開く


驚いた

何と、アイツがソファーに座っていたからだ
別に座っていたことに驚いたんじゃないな、いたことに驚いたんだ
生徒会やらなんやらに入ってるアイツは僕よりも帰りが遅いから会うことなんて滅多に無かった


でもそれだけだ。僕の興味はすぐに無くなった
僕はキッチンに向かう、冷蔵庫の中のジュースと食べ切れなかったケーキを取り出す
昨日買いすぎてしまったんだ、甘いもの事態は好きだから全然いいんだけど

さてと今日は何をしようか
宿題をして、その前にケーキを食べようか、そういえば今日はあの漫画の続きの発売日じゃなかったかな
あ、ついでに予約してたゲームも取りに



「お兄ちゃん」


・・・そんな声が部屋に響いた
自分が発したものじゃないんだから、声の主なんてすぐに分かる
だけどアイツと極力関わりたくない僕は気づかなかったフリをして扉に向かう


「お兄ちゃん!」


アイツが僕の肩を掴んだ
ぞわりと鳥肌がたった、驚いた、僕はここまでこいつが気に食わないのか
というかいつコイツは僕の背後に移動したんだ、忍者か
とりあえず両手がふさがっている僕はコイツの腕を振り払えないので返事をすることにした
ジュースとケーキは一旦置いておこう・・・


「・・・なんだよ」

「どうしてこっち見てくれないの」


いらっ

今なんか頭の中でそんな音が聞こえた
肩に乗せられた手はどんどん力が強くなっている、食い込んで痛い
僕はしぶしぶソイツの方に体を反転させた

相変わらずの人懐っこい顔、クラスの男たちが可愛い可愛いと絶賛しているのを聞いた
昔の僕もコイツの顔が普通に好きだった
今では嫌悪感しか出てこない


「こうやって会話するのも久しぶりだね」

「そうだね」

にへっとソイツは笑った
正直さっさと解放されたい僕は適当に相槌を打つ


「前にお兄ちゃんと話したのが、えーっと約3年前になるんだね」

「そうなんだ」

よく覚えてるな
僕はお前と何話したかさえ覚えてないっていうのに
ふとソイツの顔を見ると、なぜか驚いたような顔をしていた

「お、覚えてないのお兄ちゃん」

「は?何を」

するとソイツはとんでもない発言をしてくれた


「3年前の7月8日!おばあちゃんのお葬式で!5分45秒おばあちゃんのことについて話したじゃない!」


・・・はぁ?
何でコイツ必死な顔でそんなことを一々区切って喋る
というか何で時間まで覚えてる、日はまだばあちゃんの命日だから理解できるけど、いやしたくないけど
時間、秒単位、覚えてるとか、え、こいつくらいの完璧超人だと時間まで把握できるんだろうか
すげぇな天才怖いよ超人

うぇっ、何か吐き気する

ソイツは僕の気持ちなんて全く読み取ってないのか必死な顔をころっと笑顔に変えた

「全くもーお兄ちゃんって忘れっぽいよね、ほんと」

けらけらっと笑うソイツ
世間はこの顔を可愛いと思うのか、僕には魔女の気味悪い微笑にしか見えない

「あ、そうだ!そんな忘れっぽいお兄ちゃんのために、私これ持ってきてあげたよ」

そういってソイツが取り出したのは



予約してたゲームと今日発売する漫画だった



これだけを見ると、兄の好きなゲームと漫画をわざわざ取りに行ってくれたやさしい妹、で終わるんだろう
でもそれは僕がそれをコイツに言っていれば、の話だ
脳がそのことを理解した瞬間、ぞわりと気持ちの悪い感覚に襲われた
吐きそうなんてもんじゃない、吐く、倒れそう、しんどい、やばい
そんな症状が一気に出てくる
ソイツはにへーっと何かを待っているかのように笑っている

僕はどもりながらも声を出した


「何で、お前僕がこれを予約し、したとか漫画読んでるとか、知ってるんだよ」

部屋には鍵が付いてる、学校出る前にいつも鍵を掛ける
誰かが入れる訳なんて無い

「何でーって言われても・・・私はおにいちゃんのことについて何でも知っているからだよ?」

にこにことしたソイツの目の奥は、ドロドロとしていた
危険だ、と脳に告げられた体は震えていた
いつからこいつこんな病みキャラ要員になってたんだよ!

「あ、あぁそう、ゲームありがとう、早速やってみるよ」

それを言い訳に僕はそこから逃げ出そうとした
冷や汗が半端ない、さっきまでの煩わしさや余裕なんてもうどこにもない
今はとにかくコイツから離れたかった

でもソイツは許してくれなかった
ぎりっと腕を掴んできた
こんな細腕のどこにこんな力があるんだよ

「お兄ちゃん、最近、ううん、ここ数年、私を見てくれないよね」

僕を覗き込むようにしてソイツはきいた
ドロドロした瞳は僕に更なる恐怖心を与えてくる

「そんなことない、よ」

「嘘だよ!」

ダンっっ!!とソイツは地団駄を1回踏んだ
何でコイツそんな食いついてくるんだよ
僕がコイツに興味持ってないことがそんな重要なんだろうか
性格いいんだろオマエ、いきなり女王様気質かよ

「お兄ちゃんは前からそうだった・・・」

「何が・・・」

ぎりっとこっちを睨み付けると口火を切ったようにコイツは喋り始めた

「ここ数年お兄ちゃんは本当に冷たくなった前はちゃんと名前で呼んでくれたのに今では呼びことさえしてくれない
私何かしちゃったかなぁしたなら謝るよ直すよだから教えてお兄ちゃん・・・あ、もしかしてあのクソ親父とその
愛人が何か言った?それならまじであの人たち殺す殺すぶち殺す処刑ものってかしねしねしねそれともあのブスい男教師?
あいついい年して生徒に色目つかうんだよまじで気持ち悪いよアイツも処罰死刑死刑ケタケタケタそれともあの雌犬たちかなぁ・・・
臭いしけばいし何で私の友人面してるんだろうほんと意味分かんない私にたかることしかない豚はまじでxxxxxしないと
・・・っていうかさお兄ちゃん、私何のためにここまで完璧になったか分かってる?お兄ちゃんに褒めてもらうためなんだよ!
昔はお兄ちゃんの方が何でもできて、私が平仮名読めたりするとお兄ちゃんは凄い褒めてくれた嬉しかった!だから頑張ったんだよ
勉強も運動も、付き合いたくない奴にも笑顔で媚諂って愛想振りまいて一生懸命頑張った!なのに私が誰かに褒められる度にお兄ちゃんは
私から離れていった!どうして?ねぇどうしてよ!私本当に頑張ったんだよ!お兄ちゃんのことで知らないものなんて何1つとしてない!
お兄ちゃんの友人から何から何まで全部全部全部全部!だけどなんでお兄ちゃんは私を見てくれないの知りたいと思ってくれないの
愛してくれないのねぇねぇねぇねぇねぇってば!!!!」


そう叫ぶと息を切らしてソイツは座り込んだ
それでも相変わらず腕は掴んだまま
コイツが叫んでる間に僕は幾分か落ち着いた、なるほどな、コイツは僕のことを愛していたのか
初めて知った、例えコイツが今までどれだけ僕に話しかけても近寄ってきても僕はそんなこと微塵も思わなかった
僕の好みの外見にしていたのも僕の好みを知っていたからなんだな

ソイツはぐっと腕を掴んで立ち上がったかと思うと、僕の方に体を預けてきた

そして肩に顔を乗せるとさっきの勢いを感じさせない程小さな声で呟いた

「お兄ちゃんお兄ちゃん、私おにいちゃんのこと好きだよ・・・近親相姦なんて言葉で片付けたくないくらいに
お兄ちゃんがいるから今の私がいるの、お兄ちゃんが私の世界の全て・・・」

くすくすと笑うソイツの目は逝っていた
そして僕を抱きしめた、まるで世界に2人しかいないかのように


んー・・・ごめんよ妹



僕はオマエが大嫌いだよ

人間嫌悪

自分がまだ若いときに書いた話です
なんというか、文書くのへったくそ!って感じです

人間嫌悪

双子の兄妹のお話、平凡な兄を愛する病んだ妹のお話

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-08-25

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted