トルソを眺めていた
ひとが好きで寂しかったひと
ひとが嫌いで寂しそうだったひと
捕らえたのではなく、打ち砕かれ
放ったのではなく、一瞬で消えた
偽装の優しさで
魂の殺し合いを用意していた哀切
「苦しめて楽しかった?」
最高
投げやり
コーク飲みてえ
ジンで割る
黒い自分が告げた
「もう少し苦しめとけばね」
Under My Thumb
君に蔑まれた人々が
君よりもきれいな幸せに見えた
誰のためでもなくなった愛の語彙はどこへいけばいいのか。あまりにも長く言葉を乞うた物たちだった。ある言葉は翻し、ある言葉は偽った。裏切りではなく依存し続けた言葉の破綻、真意がとどめ刺した。愛以前の言葉に戻りたい。人より未然の人々に回帰したい。いったい人々とはなんだったのか。なにもつけないあの湿りよりも、なにもない魂 ただほしかった。
夕暮れが寂しくない
人を求めない
それは寂しいことなのか?
寂しいも恋しいも消え散った 待ち侘びもせず
寂しいことなのか?
あの人はなんだったのかはもはや問いですらない。露骨に嘔吐した日の断絶、黙って聴いていた吐瀉された憎悪は長く綺麗だった沈黙の色を蒼白の隔絶に変えた。もう試さなかった、試練はただ路上の屍骸に化し、理解という言葉は憎悪によって永久にあの人の殺伐へ斃れた。数語で数ヶ月が融解した。怪物になった。
支離滅裂に
無惨
あの夜
トルソを眺めていた
僕の言葉は誰かを描いたのか。描かれた誰かはどれほど現実を帯びていただろう。誰かに似たトルソを描いていたのか。だがもう僕は言葉でとどめを刺さない。誰の物でもない僕の言葉で「あたし」が消えた場所を描きたくはない。以前の広い海へ浸透したい。海を思い出したい。だが思いだせない。
歪にセックスを乞うた犬どうしだった
消した
声
残りの
問い
主題なんてものが満ちた人生ってやつはどこで消えたのか。いつ見失ったのだろうか。愛に似た憐憫や交尾や睦言めいた架空のピロートークのさなか、どこで亡くしたのだろう。優しい人生だったね、セックスへの渇望なんてものが砂粒のような長い岸辺ではね。人々が優しくて独りが二人以上だった。
君が
愚劣に罵倒した底辺 魂の街
君は また生きる
煩わしい散文詩のように五月蝿いやつだったろうね、言葉ってやつは、あの人に。馬鹿って冒涜が低劣な愚弄に火を点けたけど、本当は優しいはずだった。でも人を変えた。もう夜を摺りきってしまったけどね。どうやって僕とあの人は厄介で命のない不毛の伝言ゲーム、その黒い袋小路に迷ったのか。
日々を逃げなかった
向けあった銃
撃ち抜いたのは みずからだった
もう言葉は追い討ちもしないし未練がましく自慰をしない、人を裁かない、あの日々を断罪しない。優しい歌は残った。もう十分に。次もきっと人だろうが固有の詩じゃない。いい人を見つけてなんて人を知らないうちにどこで憶えたのさ、いや、もういいね。最後に僕の言葉、真実はなかったから。
運命に付き合って
運命 やたらに貪った
尽きる 運命を
やがて誰かの言葉はまた誰かに固執し誰かをまた断罪する日も来るかもしれない。思い出すだろうか、あの夜の片鱗。でも何一つ誤解のないものはなかった。分かるなんてこと分かる前に人を人は蹂躙して何も残さない。人生ってそういう意味じゃ甘っちょろいまま人を生かし人を殺す、そんなものさ。
現実を纏わない現実が消した
沈黙 とても綺麗だった
もういいだろう?大丈夫さ、誰も気にしない、誰も咎めはしないさ、街が優しく狂ってる、ほんの少し切ないキチガイに。いつだって銃を向けられるかもしれない。でも銃はまた誰かへ向けるかもしれないね。でも大丈夫。もはや僕のように裁く人間もいない。
勝ち目のないLost Causeは終わったのだから。
トルソを眺めていた
数年前の恋愛について書いた
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