きらめき
僕
あのきらめきは嘘なんかじゃなかったはずだ。
踏みにじられた青春は苦いものになってしまったけれど、
後悔なんてしていないんだよ。
***
暑い日だった。アスファルトの照り返しがきつい昼過ぎ、
僕は彼の部活が終わるのを教室で待っていた。
きっと理解されない恋だった。
誰かに理解してもらおうとも特に思わなかった。
ただ君が好きだったんだ。
たとえば木々のざわめきに、あるいは鳥のさえずりに
身を震わせて、これから起こる事への期待と恐怖で
酷く緊張していた。
もうすぐ終わりを告げる学校生活。
受験で忙しくなる前に、彼に伝えておきたいことがあったのだ。
「話って何」
ぶっきらぼうに、疲れた様子の彼は僕を見ようともせず
そう告げた。でも来てくれただけ嬉しかった。
「君がすきなんだ」
一息に言って、ハッと血の気が引いた。
彼の嫌悪感に満ちた瞳が僕を射抜いた。
「きもちわるい」
何度も何度も反芻して僕のなかを切り裂く言葉のナイフ。
あれから何度も同じ季節を迎えたけれど、忘れたことなんて一度もなかった。
今も鮮明にリピートできる。それは僕の一生の罪悪だ
今でも好きだといったら君はきっとまた僕を傷つける言葉を簡単に吐くのだろう
でも、そんな君が大好きなんだ
君
はじめてだった。
告白されたのも呼び出されたのも、しかもそれが男だなんて
でも嫌な気がしなかった。けど酷く驚いた俺は狼狽して、とんでもなく
本音とかけ離れた答えを返してしまった。
「きもちわるい」
ごめんなさい、違うんだ。
彼のことはいい友達だと思っていたし、もしかしたら付き合ってもいいかもなんて
思えるくらいには好きだった。
次いだ言葉は取替えせずに、彼に突き刺さったのがわかった。
揺れた瞳で彼を捉えると、泣き笑いで少し俯いていた。
「ごめんね」
立ち去る寸前、彼の腕を引き寄せたい衝動に駆られたけれど
伸ばしたては虚しく宙をきった。
もしあの日に戻れるなら、きっと今度は抱きしめられるのに。
浅ましくも俺はまだ、彼を想い嘆いているのだ。
きらめき