蒼き尨猫
にゃあ、にゃーん。
にゃっ、にゃっ……
病ましげに、茜さし照る、
日の光。
にゃあ、にゃーん。
にゃっ、にゃっ……
畳の部屋の杉障子、ひらりひらりと
蒼白の温い毛並はぴたりとしずまり、
その甘やかな香りに、あいし、みだし、かそけし、
揺る紫陽花。
にゃあ、にゃーん。
にゃっ、にゃっ……
なごみ、あるいは
気ままに、
くつろぎ、しみじみ、
頬ゆるみ
白き髭たゆる気もちの仄かな休み。
にゃあ、にゃーん。
にゃっ、にゃっ……
何処からかゆらぎ漂う鳴き声が
無限に拡がる無数の輪を描き、
幽玄に浮くる無心の音を弾く。
時うつ響き、川面につらなり、
夢と、さやぐ波、その悩ましげな音刻み、
まだ絶えず。
にゃあ、にゃーん。
にゃっ、にゃっ……
半宵の黄ばんだ月暈、その幽光。
一面の乳白色の閉じた世界、
影絵の世界にのめりこむ。
ゴロゴロと丸くしずまる蒼き尨猫
瞳と、肉球、そのまろらかなやわらみ、
ふと消える。
蒼き尨猫