閑話

微睡みの中で、幻が抱き締めてきた
「寂しい思いをさせたね」

いい匂いがする
幻の腕の中

優しすぎて泣きそうになる

欲しいものを、欲しい言葉を
幻は全てくれた

固有名詞で呼びたくなるけれど

現実の「彼」が薄らいでいく気がして

わたしは言葉を紡げなかった

それすら許してくれる
わたしが創った幻
わたしが愛した幻

「1人で生きていくんなら」

連れて行くこともできる

甘い誘いに頷くとも首を振るとも
できないまま

わたしは瞼を閉じた

閑話

閑話

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-06

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