圧死とハッカ

藤里 圭

私は満たされていた
満たされていた
満たされていた

それはいつのことだったのだろう
積み上がった紙切れを
羨ましく思う

私は満たされていた
そんな時代があった
そんな時間があった

君を好きになったとき?
それは瞬間的な充実感で
瞬間的、つまり次の瞬間、
とてつもない虚無感だけが残る

虚無感も私の中に溢れれば
それは満たされているのと
変わらない?

ならば虚無感はもっと要る
満たされた先は闇だろう
満たされていても無いとは

これ、いかに?

積み重なるのはなんであろう
こんなに何も無いのに
何かが積み重なる

私の存在の上に?
あるいは私の存在自体が?

無いのか、あるのか、

胸が痛いのは、
あるからか、ないからか

からから
からから

私は髪を振り乱して
朝日を睨む

カーテンの向こうの朝日を

「お前に何がわかる」

見当外れな、それは
「おはよう、世界」

みたいな言葉だった

からからからから

私の中から音がする

音がするうちは満ちていない

圧死しそうな苦しみはあるのに
私の中身に重みはない

何かはある

いいものか悪いものか、

からから…
からから…

残り1個だけ残った
ドロップの缶みたいな

たぶん残ったのはハッカ味のドロップ

私はあまり好きじゃない

好きじゃないから残ったんだ

だから同じこと
私の中にはハッカ飴みたいな、
私にとっては良くないものが
いつまでも、いつまでも残っていて

中身は空に近いことだけを
教えてくれる

圧死しそうな思いで朝日を浴びる
地獄のような今日が来る

圧死とハッカ

圧死とハッカ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-05

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