自称する大人

藤里 圭

子どもの私は、
気がついたら大人になっていた

大人になれば
強くなれると思っていた

大人になれば
何にも傷つかないと思っていた

ところが、
大人になった私ときたら

(悪意なき他者の言葉)

自分の守り方がわからなかった

ひとまず、
目の前の人を守ろうとしていた

(勘定が苦手なことも大人になってもなおらなかった)

傷つけるより傷つく方がいいと
その二択だけの狭い世界で
心に負債を抱えていく

私ときたら、
自分の味方になることを
すっかり忘れ

(抱えた傷を負債と名付けてしまう)

誰もわからないのは、私のせい。
誰にも理解されないのも私のせい。

私が元気になれないのも私の所為。

(トドメを刺してどうするの?)

ああ、枯れ果てていく自我
倒れた先に何もない

それでも、

(最期の優しさ)

幻想は抱きしめてくれた
幻想は欲しい言葉をくれた
幻想は私の全てを肯定してくれた
幻想はずっと私と一緒に居てくれた

(雷鳴轟く街へ逃亡)

ー傘は持たなかった

雨に打たれている時は安心だ
この世の悲劇に守られている
そんな気持ちになる

現実が与える鋭い痛みも
洗い流してくれる
そんな気持ちになる

雨に打たれて雷と一緒に叫んで
私の血を私の創る幻想で
満たしていれば安心だ

(屋根の下は暖かいが不安定だ)

びしょ濡れの体の
表面は冷たいのに
血はふつふつと煮えている

血を吐くのは生み出すことだ
ため息と大差のない
私の幻想

優しくて愛しくて仕方のない
私の生んだ幻想
私の血である幻想

(悪意なき他者へ微笑する強さに)

自称する大人

自称する大人

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-02

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