悲しみの青い花5

相田咲。彼女のことを僕はほとんど知らない。顔は可愛い方だ。でも彼女と僕は話をしたことが無い。彼女はいつも周りの女生徒と話している。僕はと言えば周りの男子生徒とばかり話している。だから僕らには接点が無い。ふと僕はそこでなぜか、夢の中の青い花が気になった。なぜだろう?しかしそのことを忘れて、僕は授業に集中した。



 やがて放課後になり、僕は家に帰る。雨はいつのまにか止んでいた。雨上がりの道を一人、僕は帰った。こんな澄んだ空気を吸うのはいつぶりだろう。僕は少し楽しい気持ちで家へと帰って行った。空は青かった。そこには珍しい形の雲が浮かんでいた。
 そうして僕は家に帰り、読書をしたり、ちょっと勉強したりしてその日を過ごした。やがて夜になる。僕は再び、あの草原の夢を見た・・・・・



 

 気が付くと、僕はまたあのきれいな草原に居た。辺りには前と同じで誰もいない。『またあの妖精に会えないかな』そう僕が思っていると、突然目の前に誰かが現れた。
 それは例の妖精だった。
「こんにちは。誰があの青い花を植えたのか、わかりましたか?」
「いや、分からないよ」
「ヒントがあったでしょう?」
「ヒント?」
「ええ、ヒント」
「そんなものは無いよ」
「・・・・・早く気付いてあげて下さい。その人はあなたのことが好きなんです。でも声をかけれなくて・・・・・その人はあなたにとっても大事な人なんですよ」
「そうか。もしかしたら・・・・その人って僕のクラスの女生徒?」
「私には言えません。でも前に言ったでしょう?その人には時間が無いと」
「それはどういう意味なの?転校でもしてしまうの?」
「それも言えません、私には。私があなたにしてあげられることは少しだけです。このお花畑を作ったり、彼女のことを話したりあなたを愛したり・・・・・その程度しかできません」
「そっか」
「とにかく、早く彼女に声を掛けてあげて下さい。お願いします」
 そうしてそこで夢は終わった。僕は悲しい気持ちで、眼が覚めた。でもなぜ悲しいのかは分からなかった。いつのまにか僕は涙を流していた・・・
 そうしてその日も僕はいつも通り、学校に向かう。電車に乗り、いつも通りの道を歩き、学校に着く。そうしてクラスの何人かと話をする。その日、例の斜め前の席には人が居た。相田咲だ。僕は青い花を植えたのはおそらく彼女では無いかと疑っていた。でもいきなり『青い花を植えたのは君だよね』とは言えない。向こうだってそんなことを聞かれたら困るだろう。だから僕は朝、彼女に話し掛けなかった。
 やがて昼休みになった。僕は彼女に『話があるから屋上に来て』とだけ言って、先に屋上に向かった。

悲しみの青い花5

悲しみの青い花5

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-01

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