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「あ、呼吸の律動が変わった」

一瞬間。
小さく早い運動が、大きく緩やかになる。
豊潤な愛を抱いて。

この胸は幾つの涙を受け止めたのでしょうか。
記憶をフィルムにして映写機で覗けたらいいのに。

部屋に風が通る。カーテンが靡く。
信号機と飲み屋の灯り。
電車の音が遠くから聞こえてくる。

筋肉質な腕は、主の意思を失ってだらりと垂れ下がる。

「おやすみなさい、よい夢を」

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-27

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