僕の心が育つまで

自由な世界で色々なものを見て感じたものを言葉に

旅に出ようと思います。

この世界は平等で皆自分の思うままに生きている。花を育てたり、料理をしたり釣りをしたりスポーツをしたりのんびり自分のしたいことをして生きている。その中で僕は毎日祖母の焼いた胡桃パイの味見をしたり、芝生を刈ったり昆虫の標本を作ったりして過ごしている。
昔から思っていることが一つある、それはこの日常を飛び出してまだ見たことのないものを見たいということ。

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ある日、僕は海辺で釣りをしていた。
手応えを感じて糸を巻いたがそれに重さはない。小さな魚が掛かったかと思い見てみるとそこには手のひら程度の大きさのワニのような生き物がいた。

「あの、痛いんですが……」ワニはそう言うとじっとこちらを見ていた。

僕はその冷静さに色々と調子を狂わされ「あっ、すぐ外しますからっ!」と慌てて針を取った。

僕は恐る恐る聞いてみた。
「ワニって喋るんですね。」

ワニは驚いた様子も見せずこう返した。
「まぁ、それなりにね。旅を始めてからこれで2度目だよ釣られるのは」

さも当たり前の事かのように1人と1匹はいつの間にか長い時間話しをしていた。

「君みたいに僕も旅に出ていろんなものを見たいもんだよ」

何気なく言った一言にワニは嬉しそうにこう言った。

「そりゃ丁度いいじゃないか!私はこんなに小さいんだ色々不便でね、旅の友を探していたところなんだ」

僕の心は踊っていた。
見たことのないものをみてどんなことを自分は思うのだろう、そんなことを想像しただけで今すぐにでも目の前にいる小さなワニと旅へ繰り出したかった。
しかし気がかりなのは祖母にどう相談するかだった。その夜遠まわしに旅に出たいと言うことを話すと祖母は行くべきだと言ってくれた。てっきり寂しがるかと思ったが自分の知らない世界での体験がどれほど特別か祖母は知っていたのだ。

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僕ははりきって「準備万端いつでも出発できるよ!」とワニに声をかけた。


「意外と早かったな。それでは夜明けとともに出発するとしようか。」
ワニは小さなマグカップに紅茶のようなものを入れてくつろぎながら返した。

「そう言えば君の名前はなんていうんだい?」
僕はこれから旅をする相手の名前をまだ知らなかった。

「私の名はイゴール、好きに呼んでくれ。そういえば君の名も聞いていなかったな」
イゴールは小さなタワシのようなもので歯を磨きながら横目で尋ねた。

「僕はちはやだよ。もう一つ聞いてもいいかい?イゴさんは何でそんな紳士っぽいの?」

「私は生まれ持っての紳士だからな。」

お互いぷっ、と吹き出し笑いあった。
朝になればいよいよ待ち望んだ冒険の始まりだ。そう思えば心が暴れて寝れなくなりそうだったがいつの間にか眠っていた。

僕の心が育つまで

僕の心が育つまで

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-26

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