約束~全~

約束~全~

約束~全~は、今まで更新してきた。約束シリーズを一つにまとめています。
~零~ ~逸~  まだまだ更新していない分がありますが
今後も更新していく予定です。

物語は、平凡な男の日常から始まり
それぞれの秘密の”約束”を果たすべく海に向かう。
青春ホラーの物語です。

~零~始まりと最後に繋がる終わりのお話

毎日食べる決まったメニューから始まる朝食。
おにぎり、弁当の作りあまりのウインナー、同じく作りあまりの焼きそば。



朝からは重たいメニューではあるが
母を困らせたくはないから、食べる。


食べ終わってすぐ二度寝する。


30分ほど経過し、
出かけなければいけない約束があるので
支度をして歩きで目的地に向かう。



その間、歩く風景も味気なく
整備された道と歩道。
歩道の傍らには草木が生い茂り、セミが鳴く。


これだけ整備された道にも関わらず
車は通らない。


自分の後ろから自転車で学生たちが
通り過ぎていく。この方向は海へ向かう方向だ。


その時自分を追い越していく時の
風は生ぬるく、汗臭く、まだ夏であることに
嫌気がさしてしまう。


下を向いていた自分の視線は
陽炎がかっかた彼らの後ろ姿に
導かれている。


”まぶしい…暑い…。”


汗を流す額を服の袖で
拭きあげる。


視界の先にはもう彼らの姿は見えない。



交差点を右に曲がり、大きな田んぼに細い道が一本。
その道をまっすぐ進むと林が見えてくる。


その道を歩く。


「しっかし遠いなぁ…それに暑い」



目的の場所にたどり着くまで徒歩で3時間はかかる。
本当なら自転車で行きたかったし、車で送って欲しかったけど
徒歩で向かうという約束だ。



約束というより
あいつから課せられた罰ゲーム。
だから歩く。

~逸~1話

俺たちはある約束で自転車で
海に向かう途中だった。
海は遠い。自転車でおよそ1時間半はかかるところ。


何もない町だが、無駄に整備された車道と歩道があって
車は一切通っていない。


歩道の傍らには木が立ち並ぶ。並木っていうのかな。
セミが鳴く。木が生ぬるい風にそよぐ。


前に男が歩いるが、自転車で追い越していく。


男の汗の匂いが、風に交じりちょっと嫌な気持ちになった。


自転車を乗り約束のために海に向かう最中に
俺たちは今日見た夢の話をしていた。


茶色い馬に乗った、わけのわからない怪物が
俺に向かってこう言った。

「2分。2分貴様にくれてやる。
お前の大切な果実と友人を助けたければ俺から逃げきってみよ」


怪物の大きさは2メートルを超えて手は、骨格がむき出しだった。
前身は黒いローブでおおわれているが、内側から緑のヘドロがあふれている。


怪物が触ったところはすべて朽ち果てて、
電柱も、信号機も壁も、すべてが崩れ去る。
なぜ馬は無事なのか不思議に感じた。

俺はところ構わず逃げた。



が、やはり馬は早い。だから剣を使って立ち向かった。
しかし、剣を振るう腕力がなかったから、剣を使い罠を張った。
一つでは足りなかったので、たくさんの罠を張った。


怪物は怒り狂い、果実をつぶそうとし、
俺の大切な果実はつぶされるわけにはいかなかったから
恐怖を奮い立たせ奪ったんだ。

果実は無事に取り戻せたが、友人は暗闇に消えいく。



そんな夢を見たんだ。


女「へぇ~…で、その友人が私ってわけ?」


男「ん…まぁ、夢だからね。なんとなく覚えてて、はっきり覚えてるのが珍しくてね。」


女「で、私を助けず、果実とやらを選んだんだ。あんた最低ね。そんなに大切だったんだね。」


男「誤解だ。きっと夢の俺はお前も助けようとしたさ。」


女「ふーん…どんな果実だったんだろうね。」


男「果実だったのかまではわからないが、触ったときに動いた感覚が夢なのにあったのを覚えている」


女「あんたさ、そんなに気になるなら調べてみたら?」


男「なにを?」

女「夢占いよ。」

男「何それ?」


女「これだから男子は。
  夢占いってのは、夢にあった状況で深層心理をみる占いよ。
  夢の内容で今の自分の状態が見えてくるの。」


すごく興味がわいた。
自分の深層心理の状態が少しでもわかるなら嬉しいし占いは楽しい。
だから調べてみたらいいものや悪いものがたくさん。
一覧を出しておこう。



・馬について…綺麗な馬は吉夢。追われる立場で立ち向かうのは壁を乗り越えた時にいいことが待っている証

・わけのわからない怪物…逃げる行為はしれんから目を背ける事。
            自分の夢は立ち向かいながら逃げていたから50点。

・剣を使い戦う…剣は正義の象徴。どんな困難も立ち向かえる自分への自信。
        ないしは無駄な殺生や暴力性が高まっている可能性も。

・果実(ヤシの実だった気が…)…金運や恋愛運の上昇。夢では動いたという事は何かの卵の可能性も。
                無事に守り切ったという事は
                本人にとってとても重要なもの。
                卵は授かり事や自分の成長の可能性の象徴。

・友人が消える…その人の身に病気の可能性あり。
        とらえられ、闇に消えるという事は、自分の元から去る可能性も。




男「ざっとこんな感じだ。」

女「へぇー、自分に自信あるの?暴力性も高まっているなら怖いから私去ろうかしら?(笑)」

男「そんな冗談やめろって、いいことも書いてるだろ?困難に立ち向かったり、金運に恋愛運!」

女「でもさ、恋愛運について私がいうのもあれだけど、あんた私の事好きなの?」

男「は?なんでそうなんだよ?」

女「私がとらえられて、消える。でも果実は卵の可能性も考えると妊娠。果実でも恋愛運。ほら、私に特別な意味合いが付きまとっている(笑)」

男「んな事所詮夢だよ、夢!」

女「ふーん、そうならそうでいいけどね、こんなこと言った自分が恥ずかしいじゃない(笑)」

男「知るか(笑)自分で言ったんだろ」


自転車で海へ行く最中。
自分の夢から、まさか自分の好きな人があぶりだされるとは
思いもしなかった。ごまかしようもない。


それがこいつに伝わっているから、今すごく変な空気になってしまった。
無言が続き、感覚は鋭く研ぎ澄まされる。


汗が頬を伝い顎先からシャツへ、しずくが落ちる。
ハンドルを握る手が強くなり、ブレーキへと伸ばす指の感覚が繊細になる。
さっきまで無風と思ってたのに、耳に風の音が入って、涼しく感じる。



女「喉…喉乾いたね」

男「お、おう。あそこに自販機があるからおごってやるよ」


自販機の傍らにはちょうど日陰になるベンチがあるので
一旦、そこで休憩することにした。



カシュッ…ゴク、ゴク、ゴク……
『・・・ぶっはっー!!』

二人とものどが渇いていたのでベンチに座ることをせず我先に
炭酸ジュースを飲む。
からからだった喉には、炭酸のはじける感覚と喉に伝わるインパクトの強烈さが
暑い夏だからこそ、格別においしく感じた。



「あぁ~・・・うめぇ~…」ドス
ベンチに勢いよく座りこむ。

「海、遠っ!!」
隣に勢いよく座り込む。


「確かに遠いなぁ~…まだまだ、続いてるぞ。」

「私気になってたんだけど、1時間以上かかるのに何で自転車なの?送ってもらえばよかったじゃん!
意味わからないんですけど、遠すぎない?」

「何言ってんだよ、そういう約束だっただろ、車も使わない。本来自転車も駄目だったのに、お前が無理っていうから自転車でしぶしぶ来たんだ。」

「そんな約束きいた事ないし、だいたい海に来るのも昨日知ったし」

「え?まじか?みんなで行くっていってたろ?それに海へ行くのだって別に海に入る予定ないからな?」

「…信じられない…海へ入らないの?じゃ、何するの?そもそも何の約束してたのよ。」

「・・・ほんとに言ってるんか?●●●●●●●だよ。忘れたのか?」


ん?今俺なんて言ったんだ。

寒気が走る。夢占いの話で夢中だった。

でもこいつの言うように、俺は、俺たちは何の約束をしていたんだ。
さっきまで当たり前のように、約束を覚えていたはず。
でも思い出せない。


みんな?…みんなって?みんなって誰なんだ?そもそも俺も海に入るつもりで水着を着てきている。
さっきまで暑かったのが不思議なくらいだ。急に寒気が走る。喉が渇く。思い出せ。約束をしたやつらを。

約束。約束、約束。約束、約束約束約束約束…。


「ねぇってば!」

「えっ?」

「あんたさっきから約束ばっかり言って、どうしたんよ。暑さにやられたの?」

「ん?あぁ、それで何の約束してたっけ?」

「約束?約束って何よ?私たち今から海へ向かう途中でしょ?」

「お前こそ何言ってんだ!いまさっきまで、話しただろ!」

「なにを?」


一瞬にして意識が飛んだ気がした。
さっきまでかわいく見えたのに
今、不思議そうにしているこいつの目が急に怖くなった。



俺は何の約束をしていたんだろう。



きっとこのままでは約束自体を忘れてしまう。



約束?





なんだっけ?なにか考えてたっけ?


「ごめんごめん、海へ行くか」

「早く行こ」


「そうだな。海に入って、みんなと遊ぼう。」



自転車にまたがり、また走り出す。
汗が頬を伝い、顎から首へ。
シャツを濡らし、そこに風が吹き込むと少し涼しい。

海まであと半分。
来た道の遠さが気になって、ふと振り向くと
後ろには、さっき追い越した男が自動販売機で
飲み物を買っているのが見えた。

~逸~2話 道中の異変

俺たちは約束のために海に向かっている途中。

町から少し離れて、今通っている道は田んぼに
挟まれた車道を自転車で並列して走っている。

相変わらず車は通らない。


夢占いの話のせいか(※第一話 参照)
いまだに口数は少ない。

でもなんだっけな。大切な何かを忘れてしまった気がする。


女「さっきから黙って何か考え事?なにか変だよ?」

男「あ、あぁ…何か忘れてしまってんだよ。大切な事。」

女「何なのよ。せっかく二人で海へ行くってのに。」

男「そうだな。」

女「ちゃんとしてよね。そんな険しい顔されてたら楽しくないから楽しませてね。」

男「お、おぅ!」


そうだ。今は楽しまなければ。
まだ50分はかかる。道は長い。
その間にきっと思い出すのだろう。


男「にしても、ここほんと田んぼと山だけだなぁ…海は遠いし日差しはカンカン。アッチーなぁ!!」

女「田んぼと山だけだし、海遠いし、私もアッチーよ!!」

男「ぶッ!ははははははッ!」


笑い声が一体に響く違和感がある。
ハンドルから手を放し、目を若干細めて笑って
さっきからある異様な空気感を消し去ってしまおうと思った。


その時、
女「何がそんなに面白いの?」


男「!!」

いきなり大きな目を見開いて、こっちを凝視する。
二人の自転車の並走した車間は広かったが一気に詰め寄られていて

一言。


一言発しただけで、”また”寒気がした。



また?俺はいつ寒気を覚えたんだ?
こんな汗がびっしょり出る道中で、寒気をまた?
いや、気にする事はそれじゃない。


男「お…おい。そんなに近寄るな、前をみろ。危ないだろ…。」

女「そうだね。」

男「お前。どうしたんだ?」

女「どうもしてないよ?」

男「いや。今日のお前は何かおかしい。いつものお前じゃない。」

女「サイテーね。私の事暑さで忘れちゃうくらいに頭どうにかしちゃったの?」

男「・・・。」


今のこいつは、いつもの感じだ。

でも何かがおかしいことに確信がもてる。
少なくともあんな目をする奴じゃない。

目が真っ黒に見えた。一瞬ではあるが人間の目ではない。


…考えても仕方がない。今は合わせよう。


男「悪い。冷静じゃなかった、ごめん。」

女「誤っても許さないよ。私すっごく嫌な気持ちになった。」

男「悪かったって。海についたらなんかおごるよ」

女「…じゃ海にいる間ずっとおごってくれたら許してあげよう。」

男「それはきついって(笑)」

女「じゃー許さない」

男「へーへ、わかりやしたよ。お嬢様。」

女「わかってるならいいのよ。今日はなんてったって●●●●●なんだからね。」


まただ。大事な部分が聞こえない。


男「いまなんて言ったんだ?」

女「え?聞こえなかったの?●●●●って言ったんだよ!」


きっと大きな声で発してくれているのにも関わらずまた聞こえない。
なんだ?やっぱり今日は何かがおかしい。

今日は何があるんだ?
何か記憶が一部切り取られたかのように
大切な部分が切り取られて聞こえる。


自転車は走り続けている。だが今の俺には
”目的地に向かって大丈夫なのか?”そんな危機感で満ち溢れている。

「俺たちは海にほんとに泳ぎに行くだけなのか?しかも自転車で二人きり、遠いところまで」

「・・・それの何かがおかしいの?変だね、今日の君。」


”…確かにふつうである”

普通だけど、違うんだ今日だけが異常なものに導かれている。
俺は一体何をやったんだ。


焦燥。
手に汗がにじむ。太陽の光が時間の感覚を鈍らせる。
独特の空気感に肺が押しつぶされて、息がしずらい。


男「いったん自転車を止めてくれ!」

女「なになに?!どうしたの?」


男「少し落ち着いて水を飲みたくてね…ちょっと待ってくれ」

女「さっき飲んだじゃんも~、早くしてよ」


男「まぁまぁ…俺たちしか今んところいないし、そんな焦るなよ」


”そうだ…俺たちだけ。これがおかしい。この夏の時期に俺たちしかいないのがおかしい
普通海に向かう車や人がいてもいいはずだ。ここまでに一人しか見ていない。

いや、一人みたんだ。そうだ。これだ。この人に接触してこの違和感を払拭したい。

さっき追い越し、そして振り返ってみたあの男に俺は用がある!

いまこの瞬間を普通の現実であることを証明する為に”

女「どうしたの?」


男「さっきいた男の人に少し訪ねてみたい事があるんだよ。少し戻っていい?」

女「何を聞きたいのよもぉ。変なの。じゃ、私さきに行ってるね?」

男「あぁ、問題ないよ。すぐに戻る。たいした用でもないから。気にしないで。」


さっきまで思い悩み、喉を詰まらせた空気感から解放されて

自分の思考の異常性を否定するべく、追い越した男を訪ねもと来た道を戻る。


その時の解放感は、入道雲が眼前に広がり、自転車でこぐスピードと追い風が気持ちよくシャツを通り抜けていく。



男「オッシャー!!気持ちいい!」


両手をハンドルから放して、照り付ける太陽から視界を守る。

こんな解放感はこれが最後だったのだろう。


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《歩く側》



私を追い越した少年、少女はmどことなく私の過去と重なって見えた。

過去を思い出したことろで、もう戻らない。

しかしやり直せるならきっと、私はもうへまわしない。


鈍感・阿保・馬鹿そんな言葉がお似合いの自分にはうんざりだから

今年はあの”約束”を果たす。


約束がもたらした、悲しみ、憎しみ、過ち、後悔。

すべて、私への挑戦状だったのだ。

夢から始まり、夢で終わる。



太陽が地面を焦がし、景色を濁す。

風邪は生ぬるいが木々のせせらぎが心地いい。


前の時とは違う。


「私も喉が渇いたよ…。」ガコン


缶コーラをプシュッと開けて一気に飲み干した。口の中が炭酸ではじけて少し痛いが

こののど越しがたまらない。


またあの少年を見たが、何かしら縁があるのか。
一人でどこへいくのだろう。

約束~全~

ご覧頂きありがとうございます。
この”約束~全~”は
これまで書いた約束シリーズの物語を一つにまとめたものです。

今後も更新していきます。

約束~全~

約束~全~は、今まで更新してきた。約束シリーズを一つにまとめています。 ~零~ ~逸~ まだまだ更新していない分がありますが 今後も更新していく予定です。 物語は、平凡な男の日常から始まり それぞれの秘密の”約束”を果たすべく海に向かう。 青春ホラーの物語です。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-26

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. ~零~始まりと最後に繋がる終わりのお話
  2. ~逸~1話
  3. ~逸~2話 道中の異変