かたこいのいたみ
しっかりと背中に回された
大きな腕
体温がある
鼓動がある
顔は見えないけれど
愛しているひとが
抱きしめてくれる
「ちがうの」
思わず呟いてしまった
抱きしめる力も
感じる温度も
強くなればなるほど
遠くなっていく
「ちがうの」
抱きしめてくれる人は
何も言わないで
何でもくれた
「ちがうの」
私は凍え死にそうだった
「幻想」
夢、妄想、願望
「ちがうの」
血が流れた
どこから流れたのかわからない
ついに私は
愛しているひとの腕の中で絶命した
痛みはなかった
かたこいのいたみ