瞬間、永遠
タイトルは「瞬間、パーマネント」って読んで欲しいです、じゃないとださい。
夏の夜って、いいですよねってことが言いたかったんです。
嘘です。
永遠というものは存在しません。
瞬間というものは時間全てです。
時間全てをつなぎ合わせれば、永遠は作れるかなぁ。
夏の夜は重たい。
僕らの体にずっしりとのしかかってくる闇は、僕らの体を地に沈め、そのままこの星さえも押しつぶしてしまいそうだ。
そうなったら世界は終わり。
いつまで続くかわからない、未来の見えない僕らの関係が、2人の判断がくだされる前にちぎられてしまうことになる。
それも悪くない気は、するのだけれど。
「…私は、折原とずっと一緒にいたい。今はそう思える、けど?」
誰もいない公園で、君の声が響く。
…全く、君は本当に僕の考えていることを当てるのがうまいな。
「今は、ね。あはは、冷たいなぁ。思ってても隠して、綺麗なまんまの関係にしとくもんだろう、そういうのは。…僕も、一緒にいたい。今はそう思える、かな?」
くすりと笑って、君はまた黙った。
夜が重たい。闇が重たい。
まどろむような暑さは、僕らを甘やかして、なんとなく気持ちいい感覚にしてしまう。
ついついさよならが言えない2人は、こうして公園に縛り付けられる。
生ぬるい風が顔を撫ぜる。
君の、惜しむようなキスを思い出した。
これから自分はどこに向かうのだろう。彼女の手を引いて、一体僕は人生のどこまでを歩むのだろう。
わからないことばかりで、なんとなく足を止めてしまう。
でもそのあいだはきっと、君は僕のものだ。
闇が重たい、未来が重たい。
いつまでも同じであり続けるものが、この世のどこかにあるのだろうか。
風に吹かれた植え込みが、ざわりと音を立てる。
その存外軽い音が、まるで自分だけは、この重たい世界から抹消されることなどないと主張しているようで、僕はなんとなく劣等感に支配される。
永遠がない。そう思っているのは僕だけではないはずだ。
「あのさ。」
口を開いたのは、あまり表情を変えない、僕の恋人。
その血色の悪い顔は、いつも寂しげで、楽しそうな時でも憂いでいる。
「一緒にいたい、ずっとこのまま。好きだから。」
「うん。」
「でも、少しずつあたしは変わるね。」
「うん。」
「もー少し、背は、伸びるかな。」
それはどうかな。僕は返事をしなかった。
きっと今の言葉は、彼女の真意ではないのだ。
「何十年もさ、一緒に、寝たり、食べたり、笑ったり、歩いたり、どこかに行ったり、喧嘩したり、でも仲直りはしたいね。」
乱雑に並べられた言葉に、虫の声が被さる。
それを気にしてか、僕が遮ることをせず待つことができる人間であることを知ってか、彼女はしばらく黙って、虫の気が収まるのを待っていた。
「…これ以上私の、ダメな部分を見られた時に、あたしは耐えられるかな。」
「ダメな部分?」
「そう。」
「…部屋が汚かったり…そうだな、」
僕が君の前髪を、隙ありと言わんばかりにめくって、
「にきびあったりするとこが、そういうの?」
というと、ぱっと僕の手を振り払って、君は苦笑いをした。
「…そうだよ、なんでおでこ、知ってるの。」
「ありゃ、怒られちゃいましたか。」
「別にいいけど、ダメな部分っていうのはそういうこと。」
手櫛で前髪を整えて、君は再び喋りだす。
「…ねぇ折原。」
「なーに。」
「あたしの肌が日焼けしちゃう前に、剥ぎ取ってしまいたい。皺が増えていく顔なんて、潰してしまいたい。」
向こう側のブランコが風に揺れるのを見つめながら、告白する、君、僕の恋人。
「荒れていく手ならなくたっていい。醜く太るのならば体も焼いてしまいたい。動かなくなる足は切ってしまいたい。」
「…どうして?」
「目の前の恋人に、勢いよく駆け寄れなくなる。」
「…」
何かを思いつめている君に、僕は一体どんな言葉を投げかければいいんだろう。
「いつか、この目が大事なものを、映さなくなる日が来るかもしれない。この耳が大好きな声を、受け取らなくなるかもしれない。そしたらあたし、」
どうしたら永遠が望めるだろう。
肩に寄り添ってきた君は、いつもより細くて頼りないような気がした。
「折原。あたしと結婚しようよ。」
あぁ、そうか。
俺の苗字を呼んで、君は顔をぐっと近づけてきた。
その顔は、凛とした一輪の花だ。
君の「今」求めるものが、わかったから。
僕はだいぶ晴れやかな気持ちになって、こんなにからりと、笑うのだ。
「いいよ。君から折原って呼ばれる未来を、なくしてしまおうか。」
それは、湿度の高い、生ぬるい夏の夜。
僕は、女性である君に、先にプロポーズをされてしまったことに、なんとなく悔しさを覚えて、自分から突然キスをした。
軽いリップ音は、まるで僕らだけは、この重たい世界から抹消されることなどないと主張しているようだ。
自分の生きる世界を支配する季節に、優越感。
「へへ、まだ折原、結婚できないね。」
「そうだね。でももうすぐだよ。」
「うん…。帰ろうか。」
「遅くなったね。」
「ね。」
お別れの時は、僕らは毎回キスをする。
僕は永遠が欲しい。
君は、どうだろうか。
君の、瞬間という時間を惜しむような、キス。
でもその瞬間こそが、きっと僕らには永遠だろう。
瞬間、永遠
眠い^p^
何言ってるかわからないのは当たり前で推敲などひとつもしていない全く素材のままの文章。
読んでくださる方がいるのならば、この作品は少し報われた感じで…。