傘が唄う悲劇

傘が歌ってる雨の歌を。
生きていると訴えて繰り返すサビに飽きて、辞めてみる。
太陽が乾かした涙を残したかったのに。
生きている証なんて大したもの要らないけれど、
悲しんで苦しんだこの先を遺したいんだと言う。
それを消すあかりの居場所は明確なのに、どうして
悲しみと苦しみの居場所は明確じゃないのだろう。

指先で弾くピアノの楽譜通りに弾いて完璧と先生が言う。
人生も運命の通りに生きて正解だと旋律が主張する。
外した悲しみを外した苦しみを除外して綺麗さを求めることの罪を隠して。

無情な世界にしたのは、綺麗さだと全部が嘆けば変わると信じた先にまた無情がある。

傘が唄う悲劇

傘が唄う悲劇

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-23

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