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「ねえ、僕の宝物をもらってくれないかい?」
彼は、持っている小さなお菓子のカンカンを開く。そこには薄緑色の砂が入っていた。
「なあにこれ?こんな砂は見たことがないよ」
「これは僕が小さい頃にパパにもらったうぐいす砂」
「うぐいす砂?」
「ちちじま、にある、砂」
彼は自分の宝物を押し付けるようにお友だちに渡した。彼の瞳から大きな涙が零れ落た。

そのときの痛みを彼はずっと忘れないだろう。

パパは彼の家から旅立ち、うぐいす砂もお友だちに渡してしまった。
残ったものは、彼の小さな胸の中に。

パパは海を渡って綺麗な森を見たお話をよく寝る前に聞かせてくれたんだ。
生き生きした言葉なのに、少し寂しそうな顔だった。
今ではもう自分でそのお話を言い聞かせることしかできない。
ママはパパの荷物を全て捨てた。
僕はいつか自分の目でうぐいす砂が広がる浜辺を見たい。
そうしたら、またパパに会える気がするから。

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-22

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