約束~逸~ 一話
今回は、約束~零~の続編。
零の男が言っていた約束の内容は明かされず目的も果たされずに途中で終わった。
いわばプロローグ。
そして~逸~では、零で男が見た学生のストーリー。
だから時間軸も、世界観も同じエリアにいる。零の男とは何の関係性もありません。
零と逸。この二つの物語には、一つだけ共通点があり、それが”約束”の内容。
この話では~逸~ではようやく、約束の内容が明らかになります。
話をいくつか分けて更新していきます。よろしくお願い致します。
●1話~夢占い~
俺たちはある約束で自転車で
海に向かう途中だった。
海は遠い。自転車でおよそ1時間半はかかるところ。
何もない町だが、無駄に整備された車道と歩道があって
車は一切通っていない。
歩道の傍らには木が立ち並ぶ。並木っていうのかな。
セミが鳴く。木が生ぬるい風にそよぐ。
前に男が歩いるが、自転車で追い越していく。
男の汗の匂いが、風に交じりちょっと嫌な気持ちになった。
自転車を乗り約束のために海に向かう最中に
俺たちは今日見た夢の話をしていた。
茶色い馬に乗った、わけのわからない怪物が
俺に向かってこう言った。
「2分。2分貴様にくれてやる。
お前の大切な果実と友人を助けたければ俺から逃げきってみよ」
怪物の大きさは2メートルを超えて手は、骨格がむき出しだった。
前身は黒いローブでおおわれているが、内側から緑のヘドロがあふれている。
怪物が触ったところはすべて朽ち果てて、
電柱も、信号機も壁も、すべてが崩れ去る。
なぜ馬は無事なのか不思議に感じた。
俺はところ構わず逃げた。
が、やはり馬は早い。だから剣を使って立ち向かった。
しかし、剣を振るう腕力がなかったから、剣を使い罠を張った。
一つでは足りなかったので、たくさんの罠を張った。
怪物は怒り狂い、果実をつぶそうとし、
俺の大切な果実はつぶされるわけにはいかなかったから
恐怖を奮い立たせ奪ったんだ。
果実は無事に取り戻せたが、友人は暗闇に消えいく。
そんな夢を見たんだ。
女「へぇ~…で、その友人が私ってわけ?」
男「ん…まぁ、夢だからね。なんとなく覚えてて、はっきり覚えてるのが珍しくてね。」
女「で、私を助けず、果実とやらを選んだんだ。あんた最低ね。そんなに大切だったんだね。」
男「誤解だ。きっと夢の俺はお前も助けようとしたさ。」
女「ふーん…どんな果実だったんだろうね。」
男「果実だったのかまではわからないが、触ったときに動いた感覚が夢なのにあったのを覚えている」
女「あんたさ、そんなに気になるなら調べてみたら?」
男「なにを?」
女「夢占いよ。」
男「何それ?」
女「これだから男子は。
夢占いってのは、夢にあった状況で深層心理をみる占いよ。
夢の内容で今の自分の状態が見えてくるの。」
すごく興味がわいた。
自分の深層心理の状態が少しでもわかるなら嬉しいし占いは楽しい。
だから調べてみたらいいものや悪いものがたくさん。
一覧を出しておこう。
・馬について…綺麗な馬は吉夢。追われる立場で立ち向かうのは壁を乗り越えた時にいいことが待っている証
・わけのわからない怪物…逃げる行為はしれんから目を背ける事。
自分の夢は立ち向かいながら逃げていたから50点。
・剣を使い戦う…剣は正義の象徴。どんな困難も立ち向かえる自分への自信。
ないしは無駄な殺生や暴力性が高まっている可能性も。
・果実(ヤシの実だった気が…)…金運や恋愛運の上昇。夢では動いたという事は何かの卵の可能性も。
無事に守り切ったという事は
本人にとってとても重要なもの。
卵は授かり事や自分の成長の可能性の象徴。
・友人が消える…その人の身に病気の可能性あり。
とらえられ、闇に消えるという事は、自分の元から去る可能性も。
男「ざっとこんな感じだ。」
女「へぇー、自分に自信あるの?暴力性も高まっているなら怖いから私去ろうかしら?(笑)」
男「そんな冗談やめろって、いいことも書いてるだろ?困難に立ち向かったり、金運に恋愛運!」
女「でもさ、恋愛運について私がいうのもあれだけど、あんた私の事好きなの?」
男「は?なんでそうなんだよ?」
女「私がとらえられて、消える。でも果実は卵の可能性も考えると妊娠。果実でも恋愛運。ほら、私に特別な意味合いが付きまとっている(笑)」
男「んな事所詮夢だよ、夢!」
女「ふーん、そうならそうでいいけどね、こんなこと言った自分が恥ずかしいじゃない(笑)」
男「知るか(笑)自分で言ったんだろ」
自転車で海へ行く最中。
自分の夢から、まさか自分の好きな人があぶりだされるとは
思いもしなかった。ごまかしようもない。
それがこいつに伝わっているから、今すごく変な空気になってしまった。
無言が続き、感覚は鋭く研ぎ澄まされる。
汗が頬を伝い顎先からシャツへ、しずくが落ちる。
ハンドルを握る手が強くなり、ブレーキへと伸ばす指の感覚が繊細になる。
さっきまで無風と思ってたのに、耳に風の音が入って、涼しく感じる。
女「喉…喉乾いたね」
男「お、おう。あそこに自販機があるからおごってやるよ」
自販機の傍らにはちょうど日陰になるベンチがあるので
一旦、そこで休憩することにした。
カシュッ…ゴク、ゴク、ゴク……
『・・・ぶっはっー!!』
二人とものどが渇いていたのでベンチに座ることをせず我先に
炭酸ジュースを飲む。
からからだった喉には、炭酸のはじける感覚と喉に伝わるインパクトの強烈さが
暑い夏だからこそ、格別においしく感じた。
「あぁ~・・・うめぇ~…」ドス
ベンチに勢いよく座りこむ。
「海、遠っ!!」
隣に勢いよく座り込む。
「確かに遠いなぁ~…まだまだ、続いてるぞ。」
「私気になってたんだけど、1時間以上かかるのに何で自転車なの?送ってもらえばよかったじゃん!
意味わからないんですけど、遠すぎない?」
「何言ってんだよ、そういう約束だっただろ、車も使わない。本来自転車も駄目だったのに、お前が無理っていうから自転車でしぶしぶ来たんだ。」
「そんな約束きいた事ないし、だいたい海に来るのも昨日知ったし」
「え?まじか?みんなで行くっていってたろ?それに海へ行くのだって別に海に入る予定ないからな?」
「…信じられない…海へ入らないの?じゃ、何するの?そもそも何の約束してたのよ。」
「・・・ほんとに言ってるんか?●●●●●●●だよ。忘れたのか?」
ん?今俺なんて言ったんだ。
寒気が走る。夢占いの話で夢中だった。
でもこいつの言うように、俺は、俺たちは何の約束をしていたんだ。
さっきまで当たり前のように、約束を覚えていたはず。
でも思い出せない。
みんな?…みんなって?みんなって誰なんだ?そもそも俺も海に入るつもりで水着を着てきている。
さっきまで暑かったのが不思議なくらいだ。急に寒気が走る。喉が渇く。思い出せ。約束をしたやつらを。
約束。約束、約束。約束、約束約束約束約束…。
「ねぇってば!」
「えっ?」
「あんたさっきから約束ばっかり言って、どうしたんよ。暑さにやられたの?」
「ん?あぁ、それで何の約束してたっけ?」
「約束?約束って何よ?私たち今から海へ向かう途中でしょ?」
「お前こそ何言ってんだ!いまさっきまで、話しただろ!」
「なにを?」
一瞬にして意識が飛んだ気がした。
さっきまでかわいく見えたのに
今、不思議そうにしているこいつの目が急に怖くなった。
俺は何の約束をしていたんだろう。
きっとこのままでは約束自体を忘れてしまう。
約束?
なんだっけ?なにか考えてたっけ?
「ごめんごめん、海へ行くか」
「早く行こ」
「そうだな。海に入って、みんなと遊ぼう。」
自転車にまたがり、また走り出す。
汗が頬を伝い、顎から首へ。
シャツを濡らし、そこに風が吹き込むと少し涼しい。
海まであと半分。
来た道の遠さが気になって、ふと振り向くと
後ろには、さっき追い越した男が自動販売機で
飲み物を買っているのが見えた。
約束~逸~ 一話
星空文庫使うの初めてだからチャプター機能を知ったのは
作品を作っている最中です。
それまではどうやって、作品更新しよっか迷っていました(笑)
今回の物語で約束についての触れられます。
もったいぶらずにそれぞれの視点を前もって説明しておきます。
~零~歩行者の物語➤これは男の結末を描いています(※プロローグがエピになっちゃいました。
~逸~歩行者を追い越した側の物語➤これは約束について語られます。
??➤約束を待つ側➤(※秘密です)
??➤??➤(※エピローグがプロローグになっちゃいました。
大体4編で構成している予定です。
構図は大方決まっていて、キャラもしっかり作った。
でも、これ順番大丈夫かなぁ…まぁ作っちゃえ。
きっとスター●ォーズもこんな感じで作ったんだろうなぁって思います。
今後も楽しんで頂けると幸いです。