呆然
風が吹く
金色をした動物が
大きな岩の上で
風を起こしている
広すぎる空に
真っ白な月が
ぽっかり浮かび
わたしは
草原の真ん中で
心細く立っていた
わたしの近くをガサガサと
何かが通っていく
大きな岩を目指して
何かがわたしを横切っていく
「行かないの?」
たまに何かが話し掛けてくれる
「怖いなら帰りなよ」
たまに何かが心配してくれる
帰るところは無くなった
だってここには
空と
草原と
月しかない
何かが
大きな岩にたどり着く
何かが
歌を歌う
急に懐かしくなる
今度は涙が止まらなくなった
「夏が終わるよ」
「帰れるの?」
遅れてきた何かが
わたしの後ろで囁いた
呆然