生きている

俺は世で言う”引きこもり”という種類の人間だ。
高校での俺をターゲットにした虐めがエスカレート。
両親に助けを求めようとしたが、悲しくも両親に俺の声は届かず、
労りの代わりに罵倒を浴びせられてしまった。
ボロボロになった俺は自分の部屋に自分だけの世界を作った。
自分を守る為に・・・


最近、どこからか視線を感じる。
と言うのも、四日前に地震が起きて以来、
何かに見られているような気がするのだ。
最初はあまり気にしていなかったのだが、
背中を舐められているかのような視線があまりにもうざったらしく、
俺は部屋を探索する事にした。

カーテンをこの二年間一度も開けた事がないので相変わらず
部屋は薄暗く、部屋の電球も切れていたのでパソコンの光を最大にして
部屋を照らした。
すると、パッと目に付いたのは大きなプラモデル。

「こんなの・・・あったけかな・・・」

丁度同じ目線の位置に置かれたプラモデルを持ち上げると、
あまりの重さに腕を攣り、プラモデルを床に落としてしまった。
騒々しい破壊音と共に恐る恐る下を見ると、思わず腰を抜かしてしまった。
それもそのはず。何故ならバラバラになったプラモデルの破片の中に
まだ回っているカメラが混じっていた。

背筋を突き抜ける悪寒。何かに見られている。監視されている。
そう考えだすと堪らなく恐ろしくて、鳥肌を立てた。

しかし、プラモデルを破壊しても未だに視線は自分に刺さり続ける。

「まだ、まだ何かあるのか?!」

弄るように部屋の私物を掻き分けて視線の源を探ると、
棚の隙間に買った事もない漫画が挟まっていた。
勢いよく開くと、そこには案の定、同じようなカメラが回っていた。
それでもまだまだ視線は刺さる。
気持ちが悪くなって部屋を飛び出すと、廊下を走り抜け、
一階に通じる階段へと突っ走った。
しかし、そこに階段は無く、真っ白な壁だけが立ちはだかっていた。

「なん・・・なんだよこれぇ!!」

泣き声とも似たような奇声を上げ、その場にへたり込んだ。
ふと、一つの考えが浮かんだ。

「窓・・・窓だ!窓があった!!」

自分の部屋にあった二年も開けていない大きな窓。
そこからならここを出られるはずだと期待を胸に走って行った。
部屋のドアを豪快に開け、そのままの勢いでカーテンを開けると、
外の光が舞い立つ埃を照らし出した。

「やった、これで・・・・」

カーテンを開けたのが運の尽き。
顔を上げると、そこには見た事もない程の大きな人間らしき物が
こちらをじっと見つめていた。



ー生かされている。

生きている

生きている

窓を開けてごらん。

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-15

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