悪口

色々な人の声が耳に張り付いて、凶器になる。
笑う声の向こうに見える影を踏んで影になる。
その一点だけ悪いと主張したところで、みんな同じ。

その声を聞いて頷いた自分の情けなさと惨めさに取り憑かれて、また頷く。

我先に災難から逃げようと、息を殺す。
そんなものを殺さず、心ごと殺してくれたら、何も聞けない、何も見えない、何も感じない。

そんなものであったら、あの言葉の真意を見なくても、聞かなくても、感じなくても良かったのに。

そうやって思っていると主張し、逃げようとしているのも、また、心だったりする。

確かめようのないこれを聞くことも、見ることも、感じることもないのに、不確かな心で確かな罪を犯す。

悪口

悪口

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-14

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