傷を
割れた携帯電話の画面がだれかの指先を傷付ける。
傷がキズをつくることが当たり前のようにそこに流れる音楽。
無視して進むリズム。
早いと遅くしようとボタンを一つ押せば止まってしまう。
傷を無視した今が悪いと言わんばかりに何も聞こえなくなる。
無音の中で響く泣き声だけ割れた画面を振動させる。
笑われた音に似た震えにありったけの文句をと、無言で訴えかける。
そこに傷を治すなんて行為はなくて、ただ、ただ馴れ合いにも似た同情が山のように転がってる。
そうやって気づかないうちに治ったキズを意味ある音楽が流していく。
時の流れにまかせて、見た月が満ち欠けするように、
心まで満ち欠けさせて。
それは、傷ではなくてある種の生理現象だよと涙は笑って流れていく。
泣いてるいる私と笑っている涙のすき間に優しさがあった。
それは、同情よりも重みを含んでいた。
傷を