ヴァンガードユニット小説 『エレクトロブッチャーのグルメ珍道中』
序章 俺の肉が・・・・・・
惑星クレイ・ドラゴンエンパイア。多数のドラゴンやワイバーン、ドラゴンマンに加え、ドラゴンたちと生活を共にするヒューマンなど、様々な種族を要する国家である。その国家が有する航空部隊・なるかみ。雷を操るサンダードラゴンたちが指揮を執るドラゴンエンパイア随一の攻撃力を誇る部隊である。国内では彼らの持つ力にあこがれ、信頼を抱く一方で、時折見せる気性の荒さに呆れ果て、困る者もいる。この物語はなるかみきっての大食漢であるエレクトロブッチャー・ドラゴンが起こした騒動を記録したものである。
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ここはドラゴンエンパイア領土内の山岳地帯。この周辺にはひとたび落ちれば周辺一帯の大地が焼き焦げる規模の雷が1時間に1度の周期で降り注ぐ。雷を操るサンダードラゴンでなければ、その雷に身を焼かれて死を迎えることは必至である。また、降り注ぐ雷の大きさによってはサンダードラゴンであっても下級兵士の力では耐えきれず、大きな傷を負ってしまう危険もある。ゆえに、この一帯の山岳地帯はほとんどの者が立ち入ることをせず、強大な力を持つ指揮官クラスのサンダードラゴンとその側近たるサンダードラゴンの修練場となっているのである。
そして今この山岳地帯にいるのは国内でも数少ない指揮官クラスのサンダードラゴンの1人、名をドラゴニック・ヴァンキッシャーという。彼は常に覇道を探求し、来たるべきに備えて時間を見繕ってはこの山岳地帯で己の力たる雷に磨きをかける。彼はこの山岳地帯のもっとも高い場所で巨大な雷が降り注ぐのをじっと待ち構えていた。
「・・・・・・来たか。」
ヴァンキッシャーはそうつぶやくと、その場に立ち上がり自身の手を大きく天に突き上げた。その瞬間、巨大な雷がヴァンキッシャーの元に落とされた。彼が立っていた大地は一瞬にして焼け、煙を上げていた。おそらく、この雷が下級サンダードラゴンに当たった場合は即死である。その規模の巨大な雷を彼はその身で受け止めたのである。
「・・・・・・お見事です、ヴァンキッシャー様。」
一連の流れを見ていた大柄のサンダードラゴンは、巨大な雷をその身で受け止めたヴァンキッシャーを称えた。
「・・・・・・この程度の雷なら、お前でも受け止められるだろう。エレクトロブッチャーよ。」
エレクトロブッチャーと呼ばれた大柄のドラゴンは軽く視線を逸らした。称えた以上、その言葉に賛同して良いかを迷ったのである。その様相を見たヴァンキッシャーは軽く笑みを見せた。
「さて、次に雷が降り注ぐのはしばらく先。今のうちに腹ごしらえをしておこう。エレクトロブッチャー、用意はできているか?」
「もちろんです。今日は部隊のドラゴンたちが用意したグレートネイチャーの肉バラエティセットが・・・・・・あれ?」
エレクトロブッチャーは付近をガサガサと探した。しかし、辺りに彼が用意したものはない。
「・・・・・・どうした?」
「肉が・・・・・・ない!?これはどういうことだ・・・・・・」
探す挙動が徐々に大きくなっていくエレクトロブッチャーを見て、ヴァンキッシャーは声をかけようとした。もういいぞ、と。
だが・・・・・・彼にはもうその言葉を受け止められるだけの理性はなかったのである。
「俺の肉・・・・・・どこ行きやがったああああああああああああ!!!!!!!!!!」
先ほどヴァンキッシャーに落ちた雷の音よりもはるかに巨大な叫びをエレクトロブッチャーはあげた。
「肉・・・・・・肉ゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
『肉』という単語を連呼しながら、エレクトロブッチャーは猛スピードで羽ばたき、山岳地帯を抜けて行った。
「・・・・・・やれやれだ。食料1つであれだけの熱を出す癖がなければ指揮官たる器とも言えるのだが。」
ヴァンキッシャーは呆れた声をこぼした。その後エレクトロブッチャーを追うことはせず、その場に腰を下ろした。
エレクトロブッチャーの食料探しの道中はここから始まったのである。
ヴァンガードユニット小説 『エレクトロブッチャーのグルメ珍道中』