傘なしで雨を受けた。冷たいと感じた一滴を最後に麻痺したように、それを受け入れる。

風が吹く方向へと方向性を変える雨に呆れた。
やっとの思いで流した涙さえ真っ直ぐさを知らない。

落ちて揺れるその一点に誰かの足跡がある。
連なる雨がそれらを消して生きて行く。

また、乾いたそこに降る恵のように愛されるそれに
感謝とは程遠い当たり前がある。

喉が渇いた花に喉はない。知っているこの概念を人間という枠から外せば何にもならない。

今降りしきる雨の意思は何にもならない。
流された雨と流れた雨の区別に迷う。

区別も差別もない雨は音だけ主張する。
独自のリズムで時を刻む。そのリズムに合う傘は持っていない。

ありのまま、あるがまま雨は雨として今この時をかけていく。

暗闇の中を照らす街灯に見向きもせずに。それを真っ直ぐと呼ぶこともせずに。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-08-07

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