悲しみの青い花6
うん、まあ
屋上は寒かった。それも当然かもしれない。もう十二月なのだ。クリスマスももう近い。でも僕はこれからのことを思うとわくわくしてきた。彼女はなんと言うか、そればかりが気になった。
やがて彼女は来た。
「話って何?えっと名前は・・・」
「岩崎陽二だ。話って言っても別に特別なことじゃない。僕はちょっと君と話がしたかっただけだ。あと夢のことも」
「夢?」
「うん。僕の夢に君に似た人が出てくるんだ。その人は青い花を僕の夢の草原に植えた。君も夢を見るの?」
そう言うと彼女は少し黙った。やがてしばらくして話し始めた。
「うん。夢は見るよ。でも青い花は知らないなあ」
「そうか。君はこの二年近く、ずっと僕と同じクラスだよね?」
「うん」
「でも話をしたことは無い」
「うん」
「よかったら、僕と友達にならないか?僕はずっと君のことが気になっていたから」
「別にいいよ」
「そうか。嬉しいよ、じゃあここ寒いから教室に戻ろう」
「自分から屋上に誘ったのに・・・寒かったの?」
「うん。すごく」
そうして僕らは同時に笑った。その日、その後も僕は彼女と教室で話をした。それは一足早い、春の訪れだった。僕は幸福な気持ちで教室で彼女と話をした・・・・
やがて僕はその日も夢を見た。夢の中の世界は相変わらずきれいで僕を魅了する。でもその日には何かがその世界に足りないような気がした。そうして辺りを見回していて、ようやく僕にも分かった。そこには青い花が無いのだ。僕は辺りを歩いてよくその景色を観察した。無い。どこを歩いていても青い花が無い。そうやって青い花を探していると例の妖精がやって来た。
「こんにちは。陽二さん」
「ああ、ねえ青い花を知らない?前はいっぱいここにあったのに」
「ああ、それは植えた人が幸せになったので、消えたんです。咲ちゃんは今は幸福の花を植えています。あなたの世界でひっそりと」
「やっぱり相田咲が青い花を植えた人だったんだね」
「ええ、そうです。彼女に話し掛けてくれてホッとしました。もっと彼女と仲良くしてあげてください。彼女もう少ししたら居なくなるから・・・・」
「それがどういうことになるかは言えないんだよね」
「はい」
「分かった。とにかく彼女と仲良くするよ。僕は彼女のこと、嫌いじゃないし」
「好きなんでしょう?」
「ああ・・・・・そうかもしれないね」
「だったら早く告白してあげて下さい」
「急には無理だよ」
「・・・・・・・」
「うん。でもきっと来年には言えると思う」
「そうですか。でも彼女はとにかくあなたと一緒に居たいんです。優しくしてあげて下さい。良い子なんです」
そこで僕は目が覚めた。その日は土曜日だったせいもあり、僕はまだ夢を見たかったのでまた眠った。でも夢は見れなかった。僕はさびしい思いで一人、毛布にくるまっていた。
悲しみの青い花6