永久愛物語2 -神の誕生祭1-

永久愛物語はシリーズ物でした。

「何だよ・・・コレ」
突然現れた人型のモノに圭人(けいと)は驚きを隠せなかった。
「ってててててて・・・。どこだぁ、ここは?あの阿呆から逃げてた筈なのによぉ・・・」
それは人型というだけでなく頭に獣のような耳が生え、背中に羽と思われるものが浮いていた。その人型のモノは唖然としている圭人に興味を示した。
「ん?何だお前」
「こっちの台詞でもあるんだが・・・」
「俺はだなぁ・・・」
人型のモノは両手を腰に当て笑顔で言った。
「妖精界の代表的種族の一つクレーミ族のトップ!虚偽と真実を操る、マリン様だぁ!!」
「お前女じゃないのか?」
「どんな一人称で呼ぼうと個人の勝手だろ?いや俺人間じゃねぇな。うーん、個妖精・・・言い辛いな。まいっか」
なぜかご機嫌のスカイという妖精の頭に誰かが手を乗せた。
「誰だよ、罪を犯したくせに偉そうにしてるのは」
「離せ馬鹿妖精」
圭人は目を見張った。スカイが馬鹿妖精、と呼んだモノは怒りをあらわにしていた。
「追っかけるこっちの身にもなれよ。よりによってこんなところへ連れ込みやがって」
「罪犯したは俺じゃねえぇっ」
「黙れ。どうせ嘘だろっ」
「嘘じゃねーーーーーーーーっ」
「待てよ、キーマ殿」
新たな声がして圭人はそっちの方に顔を向けた。
「ここは他人の家じゃ。挨拶くらいしたらどうだ?」
「あ・・・え・・・・?」
新たな声のモノは圭人に近寄った。
「ワシは妖怪のサリック。あいつは妖精のキーマだ。よろしくな」
「よ、ろし・・・ぶっ」
何かが上から圭人一直線に落ちてきた。散々な日である。
「あら。ごめんあそばせ」
「大丈夫、かも」
圭人からはただの女の子に見えた。体中に生えているツタのようなものを除けば。
「お、リィ殿。久しぶりじゃのう」
「サリックじゃん。何でここに居るの?」
「よく分からん・・・しかし珍しいこともあるのじゃな。お主とは会う機会を殆ど持たないのにの」

「理由を知りたいかい?」

「!」
狭い部屋にまた一つ増えた。
「大天使様!」
「大天使殿!」
キーマとサリックが跪き、マリンとローズは顔をしかめた。優雅な顔をして大天使は言った。
「確か君は圭人君だよね」
恐る恐る圭人は頷いた。
「妖精界にあり罪を犯したと言い伝えられるクレーミ族の末裔・マリン君とその罪を追うオータム族のキーマ君。オータム族と長年付き合ってきた地底族のサリック君。地底族と同じ地界に住み、その姿をなかなか現さないナワット族のリィ君。そして人間界に住む一人・圭人君。何故この五種族が集まったか。それは・・・」
マリンとサリックが口を挟んだ。
「おい待て、天使。俺は末裔なんかじゃねぇよ」
「ワシが伝説の地底族?妖怪と言い聞かされてきたんじゃが・・・」
「サリック君。妖怪とは人間界の何処かに散らばっている存在で別名・魔物、モンスターと呼ばれるのさ。地底には住んでいない」
さて、と大天使が続けた。
「本題に戻るけど、何故妖精族と人間合わせて五種族が集まったかというと、七百年に一度の祭りが行われるんだ」
「七百年に一度・・・『神の誕生祭』のこと?」
「ご名答だよリィ君。それが」
あまりの非現実なことが目の前で起こり、キャパオーバーで圭人は気を失った。



「おい!大天使!人間の目が覚めたぜ!!」
自室のベッドで横たわっている圭人の傍で騒いでいるのはマリンだ。
「マリン君、君は女の子なんだからもっと言葉遣いが何とかならないのかい?」
「ならん!べーだ!!」
大天使に向かってマリンが舌を出す。
「まぁ、圭人君が目覚めたから『神の誕生祭』について話そうか」
圭人と妖精たちは一斉に大天使の方に顔を向けた。
「『神の誕生祭』とは。七百年に一度行われる祭りだ。ここでの神は全てを司る最高クラスの神ではなく、人間界を司る神のことだ。つまり、新しい世界が一つ出来るんだ」
「人間界がまた一つ増えるって事だな。創造主が創った脆い世界じゃなく」
「そうだね。しかし、それを成すには条件があってね。天界にある『生死の洞窟の試練』を受けなければならないのさ」
圭人の頭は再びオーバーヒートしそうな勢いだ。
「『生死の洞窟の試練』は妖精界の中からランダムで選ばれた四種族の代表者と一人の人間が受けるもので、それぞれの種族が最大限に力を引き出せるかどうかが確かめられる。そしてその力は新しい神に捧げられる。まぁどれだけ存在感のある奴を生まれさせることが出来るかな、みたいなものだよ」
言い終えると、大天使は手を前に出した。青白い光が徐々に集まっていく。
「さ、行こうか。天界に『生死の洞窟の試練』を受けに」
文句の一つも言わせずに、大天使は圭人と妖精たちを天界へ飛ばした。

永久愛物語2 -神の誕生祭1-

この話は「神の誕生祭」プロローグです。
本編は次ですので。

永久愛物語2 -神の誕生祭1-

五つの魂は新しい世界に縛りつけられる。 五つの魂の転生先はこの世界だけになった。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-08-16

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