悲しみの青い花3

やがて学校に行く時間になった。今は十二月だ。その上、その日は朝から雨が降っていた。僕は少しうんざりする気持ちで、朝ごはんに出されたトーストを齧っていた。母はまだ料理をしている。父は新聞を読んでいる。その中で僕だけが、朝ごはんのトーストを食べていた。やがて目玉焼きが出る。僕は醤油をかけてそれを食べた。
 家ではいつも会話が無い。特別になにか喧嘩をしているというわけでもないけれど、僕と母は仲があんまりよくなく、あまり会話が無い。父と母は会話をするがそれも夕食の時がほとんどだ。僕は朝ごはんを平らげると、部屋に戻ろうとした。すると、
「ごちそうさま、くらいは言いなさい。陽二」
そう母親から注意があった。僕は「ごちそうさま」と言うと自分の部屋に戻って行った。  
僕は一人っ子だ。そのことに今、取り立てて文句があるわけでは無い。小さいころはキャッチボールをする弟が欲しいとか、おままごとをする女の子が欲しいとか思っていた。でも今は特に不満は無い。けれど僕は母に不満があった。もう何年もまともに話していない。それは母が漫画やゲームを禁止にしたことが原因だった。でもそんなことは今、朝の学校に行く僕には関係がない。
 


 そうして僕は学校の支度をした、傘を持つと、家を出て学校へと一人向かっていった。
 家から学校までは一時間以上かかる。まず自宅から最寄の駅まで歩き、電車に乗る。そうして乗り換えをし、学校の最寄りの駅で降りる。そうして十分ほどの道を歩く。雨のせいでその日は学校に行くのは難儀だった。靴に雨が入ってくる。早くも僕の靴下はびしょ濡れだった。
 学校には八時ごろに着いた。いつもの2―Bの教室に入ると、何人かの知り合いと『おはよう』と挨拶を交わし、僕はいつもの自分の席に着いた。そうしてホームルームが始まる。ふと僕はいつも埋まっている、斜め前の席に誰も居ないのを見つけた。
 その席にいつも座っているのは、相田咲という女生徒だった。僕は特に彼女と親交があるという訳ではない。でもその日、その席が空いているのが僕には妙に気になった。
 やがて授業が始まる。それでもその席は空いたままだった。どうやら今日は休みのようだ。
 

悲しみの青い花3

悲しみの青い花3

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-25

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