悲しみの青い花2

「ああ、こんにちは」
 挨拶をされ、僕もそう返す。それから二人の間にはしばしの沈黙があった。
「君は誰なの?」
 そう僕は言った。
「私はあなたの世界を構成する妖精の一人です。この草原、きれいでしょう?ここの花は私がほとんど植えたんですよ。きっとあなたが気に入ってくれると思って・・・」
「そうか。うん、これはきれいな花畑だよ。こんな世界が表にもあったらなあ・・・」
「探せばきっとありますよ」
「うん。でも毎日のようには、行けないからね・・・」
「そうですか・・・現実って不便ですね」
「うん」
「あそこに青い花があるのが見えますか?」
「ああ、あるね。それがどうかしたの?」僕がそう返すと、
「あの花は特別なんです。植えた人の悲しみが深ければ深いほど、あの花は美しく咲くんでです。私達はそれを『悲しみの青い花』と呼んでいます」
「そう。誰があの花を植えたんだろうね?」
「それは、あなたの近くに居る人なんです。ああなたは彼女を何度も見ています。あなたは彼女を何度も何度もみています。あなたは早く誰がその花を植えたか気付いて下さい。もう一緒に居られる時間があまりないんです・・・・彼女には」
「誰なの?その花を植えたのは?」
「それは言えません。言ったらいけないことになっているんです。だから自分で、自分だけの力で気づいてあげて下さい。誰がその花を植えたのか・・・」
 そこで急に僕は目が覚めた。まだ朝の六時だった。でも奇妙に鮮明だったその夢は、僕の心に強く残っていた。きれいな草原。植えられた青い花。それを植えた人。そのことが僕の頭の中で、ぐるぐるとしばらく回っていた・・・・



 

悲しみの青い花2

悲しみの青い花2

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-25

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