終夏

嗚呼、夏は終わりなんだったな

アツイアツイ。

社会人3年目。
3回目の夏。
年々、暑さが増しているのは気のせいだろうか。

結局今年も、実家に帰らなかった。
盆休みも家でダラダラするか、会社の同僚とすごすか、しなくてもいい仕事をするか…。
そんなことばかりしていたと記憶している。

3年目にしてようやく実家から電話がかかってきた。
ゲンキニシテルカ?
俺は淡々と無愛想に返事をするだけだったが。

俺の父も母も共働きで毎日忙しい。
だから普段から電話なんてしない。
そんな親から電話がかかってきたのだ。
俺は今思うと驚きをかくせない。

ヒサビサニ、ジッカカエルカ。

なんとなくそう思った。
そして俺はギフト屋に立ち寄った。

海苔に油に水羊羹。
何にしようか。

結局父の大好きな水羊羹に決めた。

ノシハドウサレマスカ?
店員が問いかけた。

オチュウゲンデオネガイシマス。

店員が不思議そうな顔をしている。

俺は恥ずかしくなった。
そうか、夏は終わりだったな。

エット、ザンショミマイデ…。

店を出るとムッと熱気が俺の肌にささった。

残暑はまだまだ続きそうだ。

終夏

終夏

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-21

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