おつとめバナナ

こちらはスーパー
野菜コーナー
ご奉仕品のカゴの中
熟れに熟れた
おつとめバナナ

チャーミングだった
シュガースポットも
いつしかまだらな
満身創痍の
おつかれバナナ

家に帰っても誰もいない
独り者が買うには
ちょっと多い気がする
五本も一緒の
見切られバナナ

そんなバナナが
自分と重なり
なんだかほっとけず
手を出す僕に
拾われバナナ

その夜、ヤバそうな
一本選んで皮むくと
多少打ち身はあるものの
まだまだ甘い
おいしいバナナ

翌朝、さらに熟した
一本選んで皮むくと
窓の光に照らされて
ありゃまぁ、びっくり
見とれたバナナ

黄色味がかった
ミルク色のマットな地
粉砂糖みたいな宝石が
散りばめられた
キラキラ バナナ

窓の淡い光に
かざしてみると
まるで北国で見た
ダイヤモンドダスト
あちらこちらで
まばゆいバナナ

誰も知らない
この世界の片隅で
こんな奇跡に遇うなんて
待っててくれて
ありがと、バナナ


2017/07/19 てつろう(初稿)

おつとめバナナ

おつとめバナナ

店から見切られたバナナが、世間から見放された僕に見せてくれた、取り留めもない奇跡のこと。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-07-19

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND