宵の休符
家にいるのは私だけーー
今だけは私を否定する人も、憐れむ人もいない。
けれど、私を否定するものも、憐れむものもきちんと、ここにはあった。それはまるで、いつ出来たとも
知れない壁のシミのように私の記憶を汚している。
「今がこんなにも辛いのは、かつてはそうでなかったからなのだろう」
私は頭の中を隅々まで探ってみたけれど、それを否定したい気分になるばかりだった。
それでも自らの幸福を証明しなければならないという信念のような、もはや執念のようなものに私は時間を
費やしながら眠った。
甲高い笑い声に、目を覚ました私の身体は疲れきっていた。おそらく、明日の疲れが出たのだろう。
時計を見上げなくとも5時頃ということがわかり、布団の中に潜り込む。閉めっぱなしのカーテンの向こう
から聞こえる下校途中の学生の声が盛り上がっていく。
私は耳を塞ぐため再び眠りに就こうと試みたが、うまくはいかなかった。
大丈夫、もうすぐこの時間も終わるーー
けれど家族が帰って来れば、明日の話になれば、明日の朝になれば……またこの時間はやって来る。
そこには、休んでも休むことが出来ないという矛盾が横たわっていた。
宵の休符